沖縄「移住」ブーム 「楽園」の落とし穴

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   沖縄「移住」がブームだ。「のんびりと」「気ままに」暮らして、豊かな自然と風土に「癒されたい」と、「楽園」を求めて毎年、多くの人が永住を望んで沖縄に移住している。だが、実際には2〜3年もすると大部分の人は去ってしまっているようだ。何が移住者を「失楽園」にさせるのだろうか。

移住者は年間2万にも上る

   沖縄県統計課によると、2006年度の県外からの転入者と転出者はほぼ同数で約3万人だった。移住者の正確な数字は定義自体が難しいこともあって不明だが、一部マスコミが報じる「沖縄移住者は年間約2万人」という数字は、県関係者によると「さまざまな要因から類推すれば、あながちでたらめではない」。住民の転入出が激しくなったのは00年頃からで、「移住」ブームはその頃から始まっていると見られる。

「沖縄に癒しを求めて、観光で訪れるのはいいのですが、住むとなると違います。移住にはそれなりの覚悟が必要です」

   そうJ-CASTニュースに話してくれた厚生労働省沖縄労働局の職員は、沖縄に移住して働いて生活しようとするなら、知っておくべき基本的なこととして、次のような実情を挙げた。

   沖縄では通勤手当やさまざまな手当てが無い就職先も珍しくない。そもそも一部専門職を除けば就職すること自体が難しい。その上、総務省の統計(最新データは02年度)でも明らかなように、沖縄県の1人当たりの県民所得は全国最低で、東京都と比べて約半分しかない。
   そして

「それでもやっていけますか?」

と問いかける。
   さらに同県地域・離島課職員は、

「移住希望者の中にはマスコミなどの影響を受けて沖縄を美化しすぎる人が多い」

といい、

「沖縄のことを良く知らずに移住してきた方の中には、低収入や就職難、人間関係などを理由に、理想と違っていたからと数年で去っていってしまう方もいます」

と、J-CASTニュースに話した。

移住者は「すぐ帰る」というイメージが定着

   沖縄に移住してきても、地域に馴染もうとしない人が少なくないのも実情だ。沖縄で「気まま」に暮らしたいと思って来たので、地元民が大切にする地域行事を「わずらわしい」として避ける傾向もあるという。中には、盆の時期に地元民が踊る「エイサー」の練習に対して、騒音だから練習をやめてほしいと訴える人さえいるとのことだ。
   沖縄県地域・離島課職員はJ-CASTニュースに、

「せっかく沖縄に移住してくれたのなら、文化や風習の違い、考え方の違いに触れてほしい」

と話す。違いを楽しむことこそ、本当の癒しになるはずだ。
   「教えて!goo」などの掲示板にも、沖縄「移住」に関して多くの質問スレッドが立てられている。
   仕事はあるのか、生活できるのか、地元の人とうまくやっていけるのかなど。
   それに対し、
   沖縄の就職率は悪いが、一応仕事はあるとした上で、「私が移住の際に一番苦労した事は『内地の人間はすぐ帰る』と思われている事」

「住んで2年位したら急に気持ちが通じるようになる。理由は目を輝かせて移住した人が2年もしないうちに黙って帰ってしまうから。(親身になっても裏切られるのでつらいなどの)前例があるので(地元の人は)2〜5年はまともに(移住者と)付き合わない」

   移住者は「すぐ帰る」というイメージがもはや地元民に定着してしまい、それが移住者を居づらくさせるという悪循環になっているというのだ。
   「沖縄は楽園」という安易な思い込みが、どこの世界、いつの世にもある現実にぶつかって、幻滅し、失楽園となっているようだ。