四輪車の輸出が急増している

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   日本の自動車メーカーが2006年に国内で生産した自動車のうち、乗用車(四輪)の輸出台数は前年比21.4%増と大幅に増えて過去最高を更新し、初めて500万台を超えた。また国内生産された四輪車のうち、輸出に振り向けられた割合が19年ぶりに50%を超え、日本の自動車業界の輸出シフトが鮮明になった。国内販売が伸び悩む中メーカー各社は輸出によって高水準の国内生産を維持できたが、輸出比率が50%を上回るのは1980〜90年代に苦しんだ貿易摩擦を再燃させかねない「危険水準」ともいえ、メーカーにとっては素直に喜べない数字になった。

輸出比率は52.0%と過去最高に迫る

   日本自動車工業会が07年1月末に発表した06年の国内メーカーの生産・輸出実績によると、乗用車の輸出台数は529万5,497台で、これまでの最高だった1986年の457万2,791台を大きく上回った。米国を中心に海外市場で燃費性能に優れた日本車の需要が伸びたことが要因で、現地生産分では賄えず、トヨタ自動車など各社は輸出を増やして対応した。

   トラック、バスを含めた輸出総数は計596万6,672台(同18.1%増)で、約610万台だった1988年以来の高水準だった。地域別にみると、米国向けが226万1,552台(同36.0%増)。欧州向けは10.8%増、アジア向けは9.2%減だった。

   一方、生産実績をみると、普通乗用車が491万5,367台(同17.3%増)と過去最高を記録。乗用車、トラック、バスの生産合計は1148万 4233台(同6.3%増)と5年連続の増加となり、約1,249万台だった1992年以来の高水準。輸出比率は52.0%(05年は46.8%)に達し、 51.5%だった1987年を上回った。

   輸出比率は、1980〜87年まで8年連続で50%を超え、85年の54.8%が過去最高。主な輸出先は米国で、"集中豪雨的"と表現された輸出攻勢に米自動車業界は激しく反発。深刻な貿易紛争を招いた経緯がある。このため日本の自動車メーカーはその後、米国などで完成車工場の建設を進め、 1988〜2005年は輸出比率が40%台に落ち着いていた。

日本メーカーへの風当たりが強まる恐れ

   06年は再び50%台に上昇したが、特に米国向け輸出台数は1991年以来、15年ぶりに200万台を超え、輸出全体の約38%を占めた。米国向け輸出の過去最高は86年の343万4,162台で、数字自体は当時より低い。しかし現在、大型車に依存するゼネラル・モーターズ(GM)などビッグスリー は深刻な販売不振に直面している。日本車の存在感が高まることで、ビックスリーの弱体化がより鮮明になっており、日本メーカーへの風当たりが強まる恐れがある。

   トヨタは「短期的に比率が上下しているのは確かだが、現地生産の台数は高いレベルを保っている」(広報部)と、平静を装う。それでも、今後も米国で新工場設置や既存工場の能力拡大を進め、摩擦回避を図る構えだ。