ユダヤ教やキリスト教、イスラム教で“神の使い”とされる天使。そのイメージを問われれば、宗教画やさまざまな創作物の印象から、翼を持つ姿を思い浮かべる人が多いのではないだろうか。“神の使い”として地上に舞い降り、また神のもとへと帰るためにも、翼は必要不可欠なモノとして描かれているが、英国の生物学者の研究によると実はこの翼、空を飛ぶには全く役に立たないのだという。

英紙デイリー・テレグラフによると、この研究者はロンドン大学ユニバーシティ・カレッジで生物学を教えているロジャー・ウォットン教授。ウォットン教授は先日、学内誌「Opticon magazine」でこの持論を展開し、これまでに描かれた天使を客観的に分析した結果、「空を飛ぶことはできない」と結論付けた。その中で、「代表的な芸術作品を軽く調べただけでも、飛び立つことはおろか、力を使っても飛べないことを示している」とバッサリと切り捨てている。

また、天使が空を飛ぶためには「翼が必要ないほどの激しい風」が必要で、それがなければ浮かぶことすらできないという。人間と同サイズの身体を持った天使では、背中についた翼の大きさ程度では身体を浮かせるには至らず、例え子どもの天使でも「翼を羽ばたかせるための筋肉が足りない」としている。

同様にウォットン教授は「BELIEVING THE IMPOSSIBLE(不可能を信じること)」というテーマの発表の中で、ドラゴンや妖精などにも言及。これらも「空を飛ぶことはできない」としている。その上で、空想上の生物・動物などが翼を持つ意味について「空を飛ぶ夢が楽しいように、翼は“良い精神の象徴”と考えられた」との見方を示した。

「天使は宗教を信じる人にとって重要なアイコン」と、ウォットン教授は天使が大切な存在であることを、決して否定しているわけではない。天使が人間以上の存在として、天国との行き来に翼が必要とされている点は十分に理解している。それでも「これらを見ることは、私たちが信じているモノ、形あるモノとは何なのかということを教えてくれる」と、今回の研究にも意義があると考えているようだ。

しかし、今回の発表を伝えた米紙USAトゥデーの記事に寄せられたコメントを見ると、世間の共感は得られていないようだ。「天使は肉体ではなく、“魂の体”を持っているはず」「この教授は、子どもたちに教えないで欲しい」など、やはり否定的な意見が多い。

また、デイリー・テレグラフ紙に寄せられたコメントでは、「スーパーマン、サンタクロース、妖精も存在していないのだから、空想の世界では何でもできるのでは」「天使が飛べないことは誰でもわかっているけれど、いちいち教授が言うことではない」と、こちらも手厳しい。天使を信じる人にとっても、現実的な人にとっても、今回の発表は「野暮な研究はしてくれるな」ということなのかもしれない。