給与明細の額面22万円の社員の手取りは約18万3000円

給与明細の額面22万円の給与といえば、だいたい20歳から24歳までの会社員の月給になります(厚生労働省・令和5年賃金構造基本統計調査より)。

ただ、月収22万円をもらえたという実感があるのは、入社して最初の4月のお給料だけというのが実情でしょう。5月分給与から健康保険料、厚生年金保険料が差し引かれるからです。なお、入社後最初の給与で引かれるところもあります。

では、独身で誰も扶養していない社員の給与明細の額面22万円から差し引かれる金額を確認してみましょう。まず、健康保険料(介護保険料なし、40歳未満、協会けんぽ東京支部・令和6年度保険料額表より)は1万978円、厚生年金保険料は2万130円、雇用保険料は1320円、所得税(国税庁・令和6年給与所得の源泉徴収税額表より)は4340円です。したがって、手取りは18万3232円です。

額面給与は27万円でも、結局手取りは約22万円

25歳から29歳の年齢階級になると、雇用形態や業種、性別にもよりますが、月収も約24万円から約27万円(厚生労働省・令和5年賃金構造基本統計調査より)に上がります。例えば28歳で月収27万円にアップしたとして、月収から差し引かれる金額を確認してみましょう。独身で扶養家族はいないものと仮定します。

健康保険料(介護保険料なし、40歳未満、協会けんぽ東京支部・令和6年度保険料額表より)は1万2974円、厚生年金保険料は2万3790円、雇用保険料が1620円、所得税(国税庁・令和5年給与所得の源泉徴収税額表より)は5890円、住民税約1万1000円(前年所得があるため新入社員と異なる)です。手取りは21万4726円と、22万円に近づきます。

※会社員の勤務先は「一般の事業」と仮定しています

会社員の場合は、労使折半で会社が半分負担している

「こんなにお給料から引かれているなんて会社員は損だ。やめてフリーになるか」などと考えた方、ちょっと待ってください。健康保険料や厚生年金保険料は、労使折半という形で会社員だけでなく、雇っている会社も50%ずつ負担しているのです。また雇用保険料に関しては会社員の負担以上に会社が負担する額は大きくなり、労働災害保険料(労災保険料)は全額会社負担となります。

たとえば、月収27万円(手取り22万円)の社員を雇うために、健康保険料約1万3000円、厚生年金保険料は約2万3800円、雇用保険料は約2600円、他に労災保険料は810円(実際には年度初め1年分一括払い)の、合計約4万円を月収27万円の他に会社が負担しています。

会社は、社員の給与から所得税や住民税も差し引き、預かっています。給与から預かっている税金は国や自治体(社員が住んでいるところへ各々)に、健康保険料・厚生年金保険料と会社負担分は健保組合や年金機構等に支払わなくてはなりません。

また、労災保険料(給与から引かれず全額会社負担)・雇用保険料(社員・会社負担分)も労働基準局(国)に支払う必要があり、その事務処理を行う社員(または外部委託)も必要になるのです。

もし今、会社員である人が、フリーランスになることを考えているなら、会社が負担しているお金を、自分が負担する必要があることも念頭に置いておきましょう。

文:拝野 洋子(ファイナンシャルプランナー、社会保険労務士)

銀行員、税理士事務所勤務などを経て自営業に。晩婚で結婚・出産・育児した経験から、日々安心して暮らすためのお金の知識の重要性を実感し、メディア等で情報発信を行うほか、年金相談にも随時応じている。
(文:拝野 洋子(ファイナンシャルプランナー、社会保険労務士))