NASAがアルファ・ケンタウリへ探査機を送り込む計画を検討しはじめたと、米科学誌New Scientistが報じました。目的は非常に地球に似ているとされる惑星プロキシマbに生物が存在するかを調べるため。ただ、目標とする時期はいまからは52年も先の2069年、アポロ11号による人類初の月面着陸から100周年の年です。

現時点では、まだ人類は4.4光年も離れた場所へ人工物を送り込む技術を持ち合わせていません。アルファ・ケンタウリへたどり着くには光速の10%ほどの速度で飛んでいったとしても44年もの歳月がかかります。

つまり、光速の10%で飛行可能な探査機を2069年に打ち上げたとしても、加速減速期間を考慮すればはやくても2113年頃にならなければプロキシマbの接近探査はできないということになります。そして、探査データを地球で受信するのにさらに4.4年がかかります。

ということは、探査機がプロキシマbに至る宇宙の大海原を渡り終えるより先に、いまここにいる我々の大部分が三途の川を渡ってしまうということです。

世代を超える話であるにも関わらず、NASAがプロキシマbの探査を計画するということには注目せざるを得ません。現状では恒星間探査が望遠鏡を使ったものに限られているものの、非常に長期間を要してでも探査機を送り込んだほうが、より高精度な探査結果が得られます。たとえ結果を手にするのが自分たちでないにしても、人類全体でみればそこから得られるものは計り知れません。

一方で、NASAの計画よりはやくアルファ・ケンタウリからの信号が受け取れる可能性も、ないわけではありません。理論物理学者スティーブン・ホーキング博士らは、レーザー光の照射によって光速の20%にまで加速する光推進式超小型探査機群をアルファ・ケンタウリへ送り込む「Breakthrough Starshot」計画を2016年に発表済みです。

Starshot計画が構想どおりに実現するならば、打ち上げから20数年で探査機はアルファ・ケンタウリに到着します。これなら自分たちが生きているうちに結果がわかる可能性は高そうです。ただし、その実現にかかる費用は20年で50億〜100億ドル(約5600億〜1.1兆円)とも言われます。

もし、Starshot計画が結果を得られなければ、NASAの計画がバックアップとして機能するでしょう。たとえいずれの計画も失敗に終わったとしても、恒星間探査技術の蓄積は、後世の役に立つものとなるはずです。