従来の紙巻タバコに比べると「より健康的」という理由で、加熱タバコや電子タバコの「新型タバコ」の人気が急上昇しているが、日本呼吸器学会は2017年10月31日、「ともに健康に悪影響をもたらすため、使用は推奨できない」とする「見解」を公式ホームページ上に発表した。

「新型タバコ」については、米国心臓病学会でも2016年6月に「若者の血管に悪影響を与える」という警告を発表している。

「受動喫煙なし」「健康リスク少ない」の科学的根拠ない

日本呼吸器学会が発表した「非燃焼式・加熱式タバコや電子タバコの新型タバコに対する見解」によると、加熱タバコは、葉タバコを加熱することでニコチンを含むエアロゾル(蒸気)を発生させてパイプで吸引するもの。一方、電子タバコはニコチンを含むリキッド(液体)、あるいは含まないリキッドを加熱しエアロゾルを発生させ、パイプで吸引するものだ。日本では、ニコチンを含むリキッドは、医薬品医療機器法(旧薬事法)の対象になるため販売できないが、海外から簡単に通販で入手できる。

これらの新型タバコは、「煙が出ない、あるいは煙が見えにくいので禁煙エリアでも吸える」「受動喫煙の危険がない」「従来の紙巻たばこより健康リスクが少ないので、どうしてもやめられない人の代替品になる」などと誤認され、急速な広がりをみせている。そのため同学会は、新型タバコの国民の健康に対する影響を憂慮し、学会としての見解を示すことにした。学会が新型タバコは危険であるとしたポイントは次のとおりだ。

(1)新型タバコの使用と病気や死亡リスクとの関連性についての様々な説があるが、科学的証拠は現時点では明らかでなく、「紙巻タバコより健康被害が少ない」という説は推測にすぎない。

(2)加熱タバコのエアロゾルには、紙巻タバコと同程度のニコチンや、ホルムアルデヒドなどの有害物質が1〜3倍含まれているという報告がある。また、葉タバコを気化させることによって、土壌中に含まれる放射性元素ポロニウムが吸引される危険性がある。

レーザー光線で見ると、周囲に有害な蒸気を吐き出している

(3)電子タバコ(ニコチン入り)のエアロゾルには、「ニコチン量は紙巻きタバコと同程度だが、ほかの揮発性有害物質が20〜60%と少ないため、より健康的である」という擁護論がある。しかし、有害物質の20〜60%程度の減少が健康被害の低減につながるという科学的根拠は全くない。それらの有害物質が通常の大気中に含まれている量と比較すると、14〜111倍も高いのだ。

(4)「新型タバコは受動喫煙危害が少ない」とする説があるが、特殊なレーザー光線で呼気を照射すると、大量のエアロゾルを吐き出していることが確認されている。特に電子タバコの使用者の呼気には、ニッケルやクロムなどの重金属濃度が紙巻タバコの煙より多く含まれている。また、世界保健機構(WHO)も「電子タバコのエアロゾルにさらされると健康に悪影響をもたらす可能性がある」と警告している。

以上のことから、同学会は、加熱タバコや電子タバコの使用は推奨できない、また、従来の紙巻タバコと同様にすべての飲食店、公共の場所、公共交通機関での使用を禁止すべきだと訴えている。