2013年3月8日、WBC2次ラウンド・日本−台湾戦において、日本代表は負ければ予選敗退という瀬戸際に追い込まれた。

だが、1点リードされた9回、フォアボールで出塁した鳥谷敬は絶体絶命の状況となったツーアウトから盗塁を決めると井端弘和のタイムリーで同点に追い付き日本は逆転勝利を挙げた。

14日、「ゴン中山&ザキヤマのキリトルTV」(テレビ朝日)では「読唇術で解読!! 日本野球の高度な分析力」と題し、球史に残る名場面と言っても過言ではない鳥谷の盗塁にスポットを当て、その裏側を伝えた。

当時、同点打を放った井端に比べれば「盗塁失敗=即試合終了」というリスクを背負った鳥谷の走塁には「ギャンブル」といった批判もあった。

しかし、鳥谷が一塁に行った後に交わした緒方耕一コーチとの会話を同番組が読唇術で再現すると、驚くべきことに決して「ギャンブル」ではなくデータに基いた戦略であったことが判明した。

読唇術とは専門家が唇の動きから会話を推測する技術を指す。この場面で、「どんな感じですか?行けそう?」と尋ねる鳥谷に対し、緒方コーチは「いやー(クイックが)割と遅い。まあ普通だったら走れる」と断言していることが分かった。

当時の様子について緒方氏は「ランナーが出てきた時は必ずその投手のクイックのタイムを教えます」と切り出すと、「鳥谷くんが“何秒くらいですか?”って聞いてきたと思うので、その投手は平均すると(クイックが)1.5秒くらい。普通のピッチャーは1.25秒くらい。日本はレベル高いですからほとんどそういう水準をクリアするピッチャーが多い」と説明した。

僅か0.25秒の差だが、塁間を約3.2秒で走る鳥谷にとっては、これだけでも2m以上違ってくる。「普通に見たらいいタイミングなのでギャンブルっぽく思われたかもしれないですけど」と言葉を続けた緒方氏は「僕の中では今後同じケースで走っても100回走っても100回セーフになる」と言い切った。