四川省南充市順慶区を流れる西渓河で2日朝、大量の魚が浮かび上がった。最初に見つけたのは川岸を散歩していた市民で、ただちに家に引き返し、網や容器を持って川に向った。話が伝わると、大量の市民が殺到した。浮かんでいたのはフナやレンギョで、集まった市民は大いに興奮し、「食べられるぞ!」などの声が上がった。四川新聞網などが報じた。

 最初に見つけたという市民によると、「水面に白っぽいものが漂っていたと」いう。ほどなく、魚と分かった。急いで家に引き返し、網とポリバケツを持ち、急いで川に戻って魚を採りはじめた。魚の多くは、酒に酔ったようにふらふらと動いていたという。

 集まった人は、友人などに携帯電話で連絡した。「西渓河に魚がいっぱい浮かんでいる。栖楽橋のあたりだ。まだいっぱい浮いている」、「容れ物と網を持ってこい。長い取っ手のついた網がいいぞ」といった声が飛び交った。

 人々は「果てしなく興奮した」という。次々に魚を集めた。靴を脱ぎズボンをまくって川に入る人も多かった。ところが、せっかく集めた魚を捨ててしまう場合もある。訪れた記者が尋ねると「これはだめだ、死んでいる」と説明。「どうして死んだかは知らないねえ」と魚の死因は気にならない様子で、「生きているのは大丈夫。食べられる」と持って来た容器に移した。

 川にゴムボートを乗り入れた人もいる。前の人は水面に身を乗り出した。全神経を集中して水面を見る。後ろの人に「あっちにいるぞ!」などと指示する。後ろの人はオールを手に、言われた方向に向け懸命に漕ぐ。

 順慶区漁政管理站(漁業行政管理ステーション)の李天輝站長によると、西渓河で2日朝に大量の魚が浮かび上がった現象は、いくつかの事態が複合した原因があったという。

 まず、上流に畜産飼育場があり、大量の排泄物を川に排出している。そのために、川の水が極度に富栄養化した。さらに、最近の気温上昇で水温が急上昇した。そのため、水中の酸素が欠乏して魚が呼吸困難になったと考えられるという。

 漁政管理站も作業員を緊急派遣して死んだ魚を回収して埋めるなどの作業を実施した。300キログラムほどを処理したという。市民らが集めた魚を食べることについては「西渓河は水質改善の重点対象になっている。水中に存在する細菌などの微生物の数は、基準を極端に超えている」と説明。
「自分自身の健康を保つために、食べないでいただきたい」と、漁政管理站としても呼びかけているという。

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◆解説◆
 南充市は内陸部の四川省東部の都市。西渓河は北西から同市に流れ込み、嘉陵江に注ぐ。嘉陵江は重慶市内で長江本流に流れ込む。大陸国家である中国では河川上流で汚染が発生すると、下流の極めて広い水域が影響を受けかねない状況がある。(編集担当:如月隼人)(写真は四川新聞網の上記記事掲載頁のキャプチャー。市民が集めた魚)