いまや、ネイルはトータルビューティの一部として広く認知されています。美しい指先を演出するネイリストは、女性の就きたい仕事の上位に位置するほどの人気職種です。日本ネイリスト協会発行の「ネイル白書2014-15」によると、ネイル市場は2008年のリーマンショック、11年の東日本大震災などの影響を受けながらも緩やかな増加が続いており、市場規模は13年で2158億円、14年も2165億円と推計されています。

 このように拡大し続けるネイル市場ですが、愛知県名古屋市にネイルサロンを展開している有限会社Ars-nova Aspiring Rの代表、川合美絵氏は、昨今のネイル業界は「見た目やテクニカルな面ばかりが強調されており、正しい爪の知識が啓蒙されていません」と警鐘を鳴らしています。

 ネイリストとして20年のキャリアを持つ川合氏が、医学博士の東禹彦監修のもとで“爪のための医学書”と自信をみせる『爪のプロフェッショナルが教える 美しい爪 健康な爪 基礎知識』(東禹彦監修/合同フォレスト)を今年2月、上梓しました。

 今回、その川合氏に

・爪と健康の関係
・美しい爪をつくる秘訣

などについて話を聞きました。

●ネイリストは華やかな仕事ではない

--本書を発刊しようと思った経緯について教えてください。

川合美絵氏(以下、川合) 私がネイリストになった20年前、ネイリストは一般的ではなく、社会的な認知度も高いとはいえませんでした。最近、ネイリストはテレビドラマの影響もあり、女性が憧れる職業のひとつに数えられています。しかし、ネイリストは見た目こそ華やかな職業ですが、やっていることはとても地味な作業です。小さな爪にお客様の要望を踏まえながら、マニキュアやジェルを塗って整えていく仕事です。手先が器用で、同じ作業を続けられるメンタルの強さや根気が必要とされます。人気職業のせいか、甘い考えでネイリストになる人が多いのですが、薄給で仕事もハードワークなので、覚悟が甘い人にはお勧めできません。

 本来、ネイリストは爪を熟知していることが望ましいのですが、ネイルのデザインや華やかさを追求し、正しい知識を身につけている人は少ないように感じます。本書を通じて多くの人に医学的な観点からも爪を知っていただきたいと思い、出版に至りました。

--知っておくべき爪の知識はありますか?

川合 爪には、さまざまな要因が複合的に絡んで症状が表れます。例えば、縦や横に線が入ったり、白い斑点が表れたり、厚くなったり、反るなど、さまざまな症例があり、その症例から病気がわかる場合もあります。爪は体の末端ですから、血流やリンパが滞ると最初に症状が表れやすい場所なのです。指先は特に毛細血管の多い部分です。血液の流れが滞れば、栄養や老廃物も流れなくなり、爪に変化が表れやすくなります。爪は体の窓となって、皮膚下で起きている現象を見せてくれます。

 また指先には自律神経のツボがあり、長時間爪を押さえることで副交感神経が刺激されて免疫力が上がるといわれています。新潟大学の安保徹教授は、爪周囲を圧迫することでがんやうつ病、更年期など、さまざまな病気が改善した事例を発表しています。

●健康で美しい爪をつくるには

--健康的な爪をつくるために、留意すべきポイントがあれば教えてください。

川合 健康な爪をつくるには「食事、呼吸、睡眠」の質が大切です。食事に関しては、3食を取ること以上に、食事の質を上げることが大切です。たんぱく質、ビタミン、ミネラル、脂質をバランスよく取り入れなくてはいけません。その上で、加工されていないミネラルウォーターなどを多く取り、体内の毒素を排出するようにすることが重要です。

 呼吸に関しては、深く穏やかに呼吸をすれば代謝も上がりやすくなり、リンパや血流もよくなります。爪はリンパや血流の折り返し地点になるので、滞りなく流れなくてはいけません。深呼吸をすることで、リラックス効果も高めることができます。

 また質の高い睡眠は疲れた脳を休ませることができるため、非常に効果的なストレス解消法です。睡眠中は成長ホルモンが分泌されますから、古くなった肌や爪などの組織の修復・再生を促します。

--爪をきれいにする方法を教えてください。

川合 大きく2つのアプローチがあります。ひとつは前述したように生活を健康的に改めることです。心身共に健康でいれば、きれいになります。もうひとつは、サロンケアです。プロのケアは頼りになると思います。サロンによってメニューは異なりますが、内容を確認したうえで施術をしてもらうことが大切です。そして施術後は、爪磨き、ベースコートというマニキュアを塗ると効果的です。これによって、色素沈着を防いだり、爪に栄養を与えられます。またジェルコートを塗ると、爪が丈夫になります。

 意外に思われるかもしれませんが、最近は男性のネイルに対する意識が高まっています。例えば、男性タレントはネイルケアにこだわる人が多いです。甘皮周囲の乾燥やパサつきは不衛生に見えますし、老けたイメージがつきますからネイルケアが必須です。また「レストランのシェフの爪が汚かったら、その店には二度と行かない」という厳しい客の声もよく耳にします。今後、各方面で男性のネイルケアが必需となってくるでしょう。

--ありがとうございました。
(構成=尾藤克之/ジャーナリスト・経営コンサルタント)

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