ハゲ・デブ・臭い・下半身……男の悩みはいつも悲しい。中でもハゲは深刻だ。すべての男がハゲるなら構わないが、まったくハゲない男も多く、一体、その違いは何だ? 

 その違いを探して、過去、いろいろな説が立てられてきた。脱毛・薄毛が起きる本当ののメカニズムを踏まえ、ちまたのハゲに関する噂を検証する(加齢による男性の脱毛以外は本稿では触れない)。

1.頭皮が汚れるとハゲる

 頭皮が汚れると髪が抜けると言われてきた。毛穴に脂肪が詰まると、それが酸化し、活性酸素が毛根の細胞にダメージを与えて髪の成長を阻害するという説だ。洗髪やマッサージで毛穴に詰まった脂肪を取り除くことが、髪に良いとする。

 カツラメーカーや育毛・発毛サロンで、そんな話を聞いてお金を払ったという人もいるだろう。髪が生えたという使用前・使用後のユーザーの写真を見た人も多いと思う。

 毛穴に脂肪が詰まって酸化するのは事実だ。しかしだからといって、それで髪の細胞が死ぬかというとそう話は単純ではない。

 脂肪が髪の毛に影響しないことは、何十年も前から医学論文があり、まず間違いない。なぜ脂肪が詰まっても髪が抜けないかというと、頭皮には皮膚常在菌という菌が棲みつき、脂を食べてしまうからだ。また酸化した脂肪によって傷つくより細胞の代謝サイクルが早いため、悪影響が出ないとも。頭皮を清潔にしないと髪が抜けるという話はガセだ。

 ではなぜ頭皮マッサージで髪が生えた人がいるのか? フィナステリドやミノキシジルといった本物の毛生え薬の臨床データを見ると、比較のために偽薬を飲ませた人のうち、10%近い人に髪が生えている。

 これはストレス性の脱毛集団だ。脱毛がストレスになり、そのために髪が抜け、さらに心配してもっと抜けるという、ネガティブサイクルに心がはまり込んでしまっている。そうした人に頭皮マッサージは効く。生えると信じたことでストレスが緩和され、髪が生える。髪は思い込みで抜けたり生えたりするのだ。

2.頭皮を叩くと髪が生える

 ブラシでハゲた頭を叩くと、髪が生える……物理的な刺激が毛根の細胞を活性化させ、再び髪を生えさせるという説。血が出るほどブラシでハゲ頭を叩く父親というのは、昔のマンガの定番だったが、9割以上の人には生えない。むしろ頭皮が痛むため、残った毛根まで抜ける可能性がある。

 しかし例外はある。美容皮膚科医に聞いたら、レーザー脱毛をした女子高生のすねから、ものすごく元気な毛が生えてきたそうだ。毛根を焼き切るはずのレーザーが逆に刺激し、すね毛をパワーアップさせたらしい。

 だからブラシで頭皮を叩いて髪が生える可能性はゼロではないが、宝くじが当たった前提で新車を買うような、そういうバカな真似は慎んだ方がいいと思う。

3.エッチをしすぎるとハゲる

 エッチな気持ちの原因は男性ホルモン、その大半を占めるテストステロンのせいだ。男女問わず、これは同じ。閉経した熟女がエッチに目覚めるのは、女性ホルモンが極度に低下し、男性ホルモンが優位に立つからだ。

 テストステロンは5α-還元酵素によってジヒドロテストステロン=DHTに変化、このDHTが脱毛の原因物質。フィナステリド:毛生え薬プロペシアの主成分は、5α-還元酵素を阻害し、DHTを作らせない。だから髪が抜けなくなる。

 エッチが大好き→テストステロンが多い→脱毛しやすい、ここまでは正しい。ところが脱毛はもうひとつ、原因がある。DHTの受容体が毛根の細胞に多いかどうかでも決まる。テストステロンが多い体質でも、受容体が少なければ、髪が抜けないのだ。ものすごくエッチなのに髪がフサフサの人は、遺伝的にDHTの受容体が少ない。

 頭を使いすぎるとハゲるというのも同じ理由だ。知性を生み出す大脳皮質の成長には、テストステロンが深く関わっている。テストステロンが多い→頭がいい、なのだ(あくまでバランスの問題ではあるが)。頭を使うとハゲるのではなく、ハゲる人には頭のいい人が多い、が正解。

 ちなみに白髪の人はハゲないというものが、あれはハゲちゃった人は白髪も残っていないだけの話だ。テストステロンと同じく、原因と結果が逆なのだ。

4.帽子をかぶるとハゲる

 帽子をかぶると蒸れるために皮脂が余分に出て雑菌が増え、毛根が抜けやすくなるという説。辛いモノを食べるとハゲるというのも、汗が出るからという理由だろう。

 髪が抜ける原因は、大雑把に言って90%が遺伝(DHTの受容体の量は遺伝子で決まっている。しかも母系遺伝。お母さん側のおじいちゃんがハゲていたら、息子はハゲる可能性が高い)、10%がストレスだ。栄養や環境が原因で髪が抜ける人はかなり少ない。しかし例外がある。

 フケの原因は白癬菌(水虫などの原因菌)の一種が頭皮で増え、皮脂を食べて排出したもの。この菌は誰にでもあるが、極端に増えるとフケが増えるだけではなく、頭皮がかゆくなり、非常に悪化すると脱毛にもつながる。皮膚病による脱毛で、皮膚科に問い合わせてもハゲるまで放置しておく人はいないそうだが、可能性はある。帽子をかぶるとハゲるというのは、ここから出た噂だろう。

5.タバコを吸うとハゲる

 髪の成長には血行が良くないといけないが、タバコは血管を収縮させ、血流を阻害する。だからハゲるという説。

 これには逆の考え方もあり、血流がいい=DHTを大量に毛根に運ぶ=脱毛が早く進むという説もある。こちらは戦前に日本で研究され、頭皮につながる動脈を結束したところ、脱毛が収まった。しかしやがて髪が細くなり、薄毛になり始めたので実験は中止に。

 育毛には血行がいい方が良いが、脱毛は進んでしまう。血行が悪ければ脱毛は遅くなるが、薄毛になる。どちらがベストなのかは、その人がDHT受容体をどの程度持っているかで決まる。ただ常識的に考えれば、血行の良い方が健康であり、髪にも良いに決まっている。

6.たまごかけご飯を食べるとハゲる

 最近ネットでよく流れている、たまごかけご飯を食べるとハゲるという噂。生卵の白身に含まれるアビジンが、皮膚や神経に必要なビオチンと結合、腸が吸収できなくなってビオチン欠乏を引き起こすという。髪も皮膚の一種であり、だから生卵は食べるな、卵かけごはんはハゲる、というわけ。

 1972年に出された論文が最初で、生卵白飼料を与えたラットに脱毛を伴った湿疹性の皮膚炎が観察された(厚生労働省『日本人の食事摂取基準(栄養所要量)の策定に関する基礎的研究』より)。さらに「慢性的に生卵白を摂取した成人や青少年では毛髪の退色を伴う脱毛」が見られたという。

 大変だ、たまごかけご飯はハゲの敵だ! ビオチン欠乏は脱毛以外にも神経障害や皮膚炎も引き起こす。問題は卵いくつ分の卵白でこの障害が起きるか? である。

 ビオチンは肉など多くの食べ物にも含まれており、腸内でも細菌が合成するため、まず不足は起こらない。卵白障害が起きるのは、生卵だけを大量に食べるような極度の偏食だけだ。目安は生卵を1日10個以上長期間食べ続けた場合とされる。

 栄養学的には間違ってなくても、常識から大きく外れた話であり、まず99%の人には関係ない。たまごかけご飯は安心して食べてください。

(取材・文/川口友万)

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