とても意外なことだが、これまで韓国にはAmazonがなかった。

 韓国の代表的なポータルサイトである「NAVER」のネット通販のページを開くと、「Gマーケット」「ロッテiモール」「GSショップ」「ロッテ・ドットコム」「CJモール」「新世界モール」など大手スーパー、百貨店直営の通販業者の名前が名を連ねる。

 日本のAmazonが得意とする書籍通信販売は、「NAVERブック」や「教保文庫」などポータルサイトが運営するインターネット書店か大手書店の通販部が行っている。

 登場した当初はインターネット書店のイメージが強かったAmazonだが、現在はCD、プラモデルなどの趣味用品、ファッション用品、スポーツ用品、食品など、世の中で売られているもの全てをインターネットで販売する勢いである。

 日本でも、Amazonの人気の秘密は一般の書店でなかなか売っていない稀少本が買えるなど珍しいものや手に入りにくい品物が簡単に買えて、それがすぐに宅配便で配達される点だ。アメリカではAmazonによるドローン(小型無人飛行機)での商品配送システム「アマゾン・プライム・エア」の配達実験が進んで話題にもなっている。

経験者限定で300人規模の社員募集

 韓国紙『東亜日報』によると、Amazonが3月中の韓国上陸を目指し、韓国支社を設立、通販業界経験者を対象に社員を集めているというのである。

 入社試験は、日本ではちょっと見られないスタイル。旧正月連休の間に行われた一次面接試験は「画像面接」と称し、スカイプのようなインターネットテレビ電話で実施していた。2月25日から3日間の最終面接はソウル市内のホテルで実施。公表はされていないが、採用人数は250人から300人とみられている。



韓国での「画像面接」の様子(写真提供/山田俊英)

 韓国への“Amazon上陸”に対するネット市民の反応もまたユニークである。

「これで韓国のボッタクリも解消されるか!?」
「国内流通事情を変えてほしい。中間業者を潰してほしい」
「ドローンを飛ばしてアパートの屋上から本を受け取れるようになるのか!?」
「韓国でドローンを飛ばしたら、誰かが竹やりで落として盗むだろう」

 ちょっと茶化した声もあるが、おおむね好意的だ。

 消費者としては国際的な通販業者の進出によって、個人輸入代行のように海外の製品を安く買えるチャンスが増えてくる。また、「ボッタクリ」という発言も見られるように、韓国小売業界の現状に不信を抱いている消費者がいることも確かなようだ。

 メリットが期待できるのは消費者側だけではない。韓国国内のメーカーサイドにとっては、Amazonと取引することで海外進出の足掛かりとして活用できるという肯定的な側面もある。

Amazonに警戒する国内の既存業者

 一方、韓国内の既存インターネット通販業界は神経をとがらせている。

 今回、Amazonの入社試験を受けた人たちの中には現役の通販業界の人たちが相当数含まれているだけに、専門家の人材流出だと既存業者側は危機感を持った目で見ている。また、国内の業者とAmazonが顧客の奪い合いになることも避けられない。

 中国の「アリババ」などとともにグローバルインターネット通販企業の韓国市場への進出が予想以上に急ピッチであることから、業界関係者らは、韓国市場が丸ごと取られてしまうのではないかと危惧を抱く。かたや、そうした業界の危機感とは反対に「韓国製品だって多数出品されるのだから、よいではないか」という声もある。

 ともあれ、3月中にAmazon韓国支社が出来て通販業務を開始することで韓国国内のインターネット通販市場に激震が走ることは避けられない様子である。

(取材・文/山田俊英)

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