橋下徹大阪市長は17日、職員に対する「入れ墨調査」を「違法」とした大阪地裁判決を不服として大阪高裁に控訴する意向を表明した。同主旨の裁判の敗訴は2回目であり、「最高裁まで戦う」としている。

 そもそもこの「調査」は、2012年に「入れ墨をした児童施設の職員が子どもに入れ墨を見せて威嚇した」という報道を受けて実施したものだが、後にこの報道は事実でないことが明らかになっている。

 しかし、橋下市長らは「職員の入れ墨に関する苦情が多い」ことを理由に、調査を強行した。たしかに公務員が目立つところに入れ墨をしていたら、気持ちの良いものではなく、「業務に関連すれば(強制調査も)認められる」とする識者も少なくない。

 市長を訴えた職員らは、自身は入れ墨をしていないが、「個人情報であり、してはならない調査」「たいていは若い時に深く考えずに入れたものであり、『過去への制裁』でしかない」として、問題視していた。

文化か、暴力団の象徴か

 入れ墨に関しては、国内外のアーティストやアスリートのファッション的なタトゥーに人気が集まる一方で、「暴力団をイメージさせる」という意見も根強い。祭礼やサウナ、一部の海岸など入れ墨を見せることを禁止しているところも増えている。

「入れ墨は文化であり、芸術です。日本の彫師の技術は世界でもトップクラス。なぜそれを見せてはいけないのでしょうか」

 彫師らは口をそろえる。一部の彫師のグループは公益財団法人エイズ予防財団に協力するなど、衛生面でも細心の注意を払う。

「ただし、私たちは法律的にはグレーな存在。『お上に逆らうと検挙される』という恐怖もありますね。先日は、現役の暴力団員の彫師が医師法違反で逮捕されました。医師免許を持っていないのに入れ墨を入れたということですが、医師免許を持っている彫師なんか、一人もいません。今後、全国の彫師を逮捕することはまずないと思いますが、不安はあります」

 また、ある彫師は別件の刑事事件で起訴されていたが、判決の際に裁判官や検察官から「これからは彫師としてがんばるように」と諭されたという。

「10年以上前の話ですが、この時点で医師法違反だったはず(苦笑)。司法も対応が一貫してないんですよね。とはいえ、今後は暴力団排除の関連で彫師には厳しい時になるかもしれません」と戸惑いを隠さない。

 しかし、世界的に見ても入れ墨をここまで規制している国は珍しいだろう。2013年秋には、顔に入れ墨のあるニュージーランドの先住民・マオリの女性が北海道の温泉施設で入浴を断られていたことが問題になった。

 都内の彫師は、「こんなことは言語道断。2020年の東京オリンピックには、海外からたくさんの選手と観光客が来るのに『入れ墨お断り』では国際的に恥ずかしい。これを機会に『入れ墨にやさしい社会』の実現をめざしてほしいと思います」と話しているが、果たしてこの論争の行方やいかに?

(取材・文/DMMニュース編集部)