「きょうだい」という間柄にある男女が恋愛し、結婚することは世界の人類学上において常に最大のタブーとされてきた。しかしドイツでは今後、その規制が緩やかになる可能性がある。倫理委員会が「愛は自由なもの。それを法で罰することはおかしい」と判断したためだ。

兄妹、姉弟が性的および婚姻の関係となることについて、世界の多くの国が厳しい罰をもうけている。ところがこのほどドイツで、家族法、社会倫理、優生保護法ほかに詳しい25名の委員で構成される倫理委員会が近親相姦や近親婚に関する審議会を開催。“双方の同意があった場合のきょうだい間の性的行為や結婚について、これまで適用されていた2年以下の懲役または罰金という刑罰はおかしい”との見解に至ったことが伝えられている。

この審議会が開かれたきっかけは、ザクセン州のライプツィヒで兄と妹が結婚して4人の子どもをもうけたことが2012年に発覚し、兄が刑務所に入れられ、社会的に大きな波紋を投げかけたこと。2人は幼い頃に生き別れており、成人してから出会って惹かれあったが、ドイツの連邦憲法裁判所は兄であるPatrick Stuebingに有罪判決を下し、不服を申し立てた欧州人権裁判所(本部フランス)もその判決を支持したのだ。

近親相姦や近親婚に関する一定の法律がまちまちというヨーロッパ諸国。このたびの件について、「ドイツでは法を恐れることなくきょうだいが愛を交わせるようになる」と伝えるメディアも多いが、諮問委員会はそこは慎重だ。「性や愛情は個人の自由であるべきもの。その権利を侵害している上に刑罰をくわえるのは倫理的におかしい」という表現にとどめており、間違っても近親相姦や近親婚を推進するための議論ではなかったことと、生まれる子供に先天性の異常が発現する可能性を忘れてはならないことを強調している。彼らには法的な決定権はないが、政府の諮問委員会であるだけに大きな影響力を持つことは間違いない。
(TechinsightJapan編集部 Joy横手)