サッカーワールドカップ(W杯)ブラジル大会で日本がコートジボワールに1―2で敗れた後に日本人サポーターがスタジアム内のゴミ拾いをした、この様子が写真付きで伝えられると、世界中から「礼儀正しい」「日本を尊敬する」などと褒め称えられたと報道されたが、実はこの行為「迷惑行為であり」やってはいけない事だった、そう指摘する記事が出た。

ゴミを拾う職業がありその人から仕事を奪うことになった、というのだが、ネットでは「自分が汚した場所を掃除して何が悪い!?」などと批判が起こりちょっとした「炎上」騒ぎになっている。

親切心からでも他人の領域に手を出してはならない

話題になっているのは通信業界のニュースサイト「WirelessWire News」の2014年6月17日付けにイギリス在住の情報通信コンサルティング、谷本真由美さんが寄稿した記事で、日本人サポーターの取った行為は日本人として大変誇らしく思えるエピソードであり、自分もイタリアで暮らしていたときにはゴミを持ち帰ったり、セルフサービスの店では食器などを所定の場所に戻していた、という。しかし、ボリビア人とイタリア人の同僚に「他人の仕事を奪ってはいけない」と怒られたのだという。

ゴミ拾いや食器を下げる担当者がいるからで、マナーを守っていたつもりの自分は、他人の仕事を奪う「マナー違反者」だった、と書いた。親切心からの行為でも、他人の領域に手を出す人は非難される。同じようにサッカースタジアムにはゴミ拾い担当がいる。ファンがゴミを拾ってしまったら、彼らの仕事はなくなってしまう。他の国の人々がなぜゴミを拾わないのかにも理由がある、とした。

この主張にネットでは「日本の文化や習慣を貶める記事を書くな!」「スタジアムの一角を掃除しただけじゃないか」などと批判が起きちょっとした「炎上」騒ぎになっている。記事の下にあるコメント欄には、

「マナーと仕事の話を無理矢理結びつけて信憑性がないと感じる」
「ごみを捨てる人が『雇用を作る人』と称賛されるわけでもない」
「試合後のゴミ拾いが褒められても批判されていないのはなぜでしょう?」

などといった意見がある一方で、世界には日本では考えられないことが仕事になっている場合もあるだろうし「世界の価値観を柔軟に受け入れることが大切だと思う」と賛同する意見もある。

観客がおのおのゴミ箱に捨ててもらうのがベターです

ちなみに、サッカーの試合の後にゴミ拾いをするという行為は日本に根付いているようで、横浜F・マリノスが本拠地にしている日産スタジアムに話を聞いてみると、試合後は必ずサポーターの有志の手によって行われているという。これによって業者の清掃の回数や清掃費用に変化があるのかといえば、殆どないそうだ。

では、記事にあるように日本のサポーターがゴミ拾いをしたことによって仕事を奪われたブラジルの人はいるのだろうか。ブラジル最大の発行部数を誇る日刊紙、フォーリャ・デ・サンパウロの電子版を見てみると、「日本の試合後のゴミ収集、ソーシャルネットワーク上で共感を得る」という見出しになっていて、素晴らしい人たちだ、とか、ブラジルもこうした教育を行うべきだ、などといった「ツイッター」のコメントを載せている。「迷惑行為」などというのは見当たらない。

日本とブラジルの経済活動の促進を目的とし01年に設立された在日ブラジル商業会議所(CCBJ)に話を聞いてみたところ、ブラジルのスタジアムにはゴミを拾う専門の業者が入っているのだという。観客が観客席に置いて行ったゴミを片づけるのが仕事で、ゴミがなければ仕事にならない。ただし、

「日本のサポーターの行為は称賛に値します。スタジアムのゴミについては、サポーターの手を煩わせることなしに、観客がおのおの所定のゴミ箱に捨ててもらうのがベターです」

とCCBJは話している。