14日のウルグアイ戦に臨む23人の日本代表メンバーが発表された。コンフェデレーションズカップのメンバーからは前田遼一、ハーフナー・マイク、栗原勇蔵、酒井宏樹、乾貴士、細貝萌、中村憲剛が外れ、東アジアカップのメンバーからは豊田陽平柿谷曜一朗、工藤壮人、青山敏弘、山口螢、駒野友一、森重真人が選ばれている。

 東アジアカップで見せたように、1トップの柿谷が直接ディフェンスラインの裏を突くカウンターアタックは、ザックジャパンの新たなオプションとして考えられるだろう。そのパートナーとして、青山もメンバー入りを果たした。同じパッサーでも、よりボール保持を重視するタイプの遠藤保仁に比べると、青山は直接ゴールに直結するパスを常に狙っている。

 世界の強豪と戦う上では、ボールを保持できる場面ばかりではなく、守備をさせられながらも、一発のカウンターで仕留める怖さを備えたチームであることが望ましい。それが実現できるかどうか、ウルグアイ戦ではチャレンジするのではないだろうか。

 しかし、今回メンバーを外れた前田が、これまでに1トップとして果たしてきた役割も大きい。前線のプレッシング、香川真司がサイドを離れたときのカバーリングなど、前線のバランサーとして働いてきた。それが柿谷、あるいは高さとスピードを兼ね備えた豊田を1トップに入れることで、どのような変化が生まれるか。大きな注目点と言えるだろう。

 また、興味深いのはFC東京のセンターバックを務める森重が選出されたことだ。東アジアカップでは中国戦、韓国戦でストロングポイントである球際の強さ、カバーリングの鋭さを随所に発揮した。このプレーがルイス・スアレス、エディンソン・カバーニといったワールドクラスの点取り屋に通じるかどうか、ザックが見極めたいポイントの一つではないだろうか。

 それがうまくいった場合、ザックジャパンには新たなオプションが見えてくる。それはセンターバックの今野泰幸を中盤に置く選択肢だ。思い返せば2010年南アフリカ・ワールドカップの岡田ジャパンは、遠藤保仁と長谷部誠のダブルボランチを諦め、バイタルエリア(センターバックとボランチの間のスペース)にアンカーとして阿部勇樹を置くことで本番に臨んだ。

 コンフェデレーションズカップのブラジル戦やイタリア戦でも、ネイマールやパウリーニョにゴールを許した場面など、バイタルエリアを守り切れない場面が目立っていた。アジアでは何とかなっても、世界に出ると、このスペースが日本の泣き所になる。その対策としてアンカーを置き、中央の守備力を高めるシステムはぜひともオプションに入れておきたいところ。

 また、今野、吉田麻也、森重の3人を同時にピッチに立たせることにはもう一つの意味もある。それは3−4−3システムへの移行を、メンバー交代を使用せずに実現することだ。ザッケローニ監督は記者会見で、「相手に的を絞らせない、意外性のあるチームを作っていきたい」と述べた。

 コンフェデのメキシコ戦では、吉田を投入して3−4−3に変更することで、攻撃の横幅を作ろうとし、実際にサイドからチャンスも作った。ところが10分程度のうちにメキシコはアンドレス・グアルダードに代えてカルロス・サルシドを投入し、3−4−3の幅に対応。すぐにバランスを整えられてしまった。その後は長友佑都の負傷もあって、ザックジャパンは再び4バックに戻したが、このような戦術の駆け引きを、できれば最小限のメンバー交代で行えたほうが実戦向きになる。今野、吉田、森重を併用すれば、3人でそのまま3バックを組むこともでき、チームに柔軟性が生まれてくる。

 さらに同じメキシコ戦では、スタメンの右サイドバックに内田篤人ではなく、より高さのある酒井宏樹を投入し、メキシコのセットプレーを含めた空中戦に対応できるようにメンバーを組んだ。ところが酒井宏はビルドアップに問題を抱え、機能したとは言いがたい。そこでセンターバックで森重の起用が計算できれば、今野を右サイドバックに置き、空中戦とビルドアップの両方を解決するチームを組むことも可能になる。

 ユーティリティープレーヤーの今野の特徴を生かすことで、ザックジャパンの戦い方に幅が出る。それを実現させる上で、森重はザックジャパンを一段上へ押し上げるための鍵を握るかもしれない。

文●清水英斗(サッカーライター)
プレーヤー目線で試合を切り取るサッカーライター。著書は『あなたのサッカー「観戦力」がグンと高まる本』など。