全世界で1億5000万台を売り上げたプレイステーション(PS)2や、7000万台を売り上げたPS3など、ゲーム業界を牽引してきたプレステ系ゲーム機。だが、昨年、一昨年と2年連続でPS系のPS3、PSP、PS Vita用ソフトからはミリオンヒットが一本も誕生していないという。

一方で、ライバルともいえる任天堂陣営からは昨年、3本の100万本セールスが誕生。『ポケットモンスターブラック2・ホワイト2』『とびだせ どうぶつの森』『Newスーパーマリオブラザーズ2』と任天堂作品がミリオンセラーを独占する形となった。果たして、PSはこのまま衰退の一途をたどるのだろうか。

ファミコン時代から携わったゲーム攻略本やゲーム関連書籍は100冊を超えるという、ゲームライターの野安ゆきお氏は「PSの発売元であるSCE(ソニー・コンピュータエンタテインメント)は“あのシリーズ”を任天堂に奪われたのが大きい」と断じる。

「『モンスターハンター』です。PSPで発売された『モンスターハンターポータブル 2nd G』と『モンスターハンターポータブル 3rd』は、どちらも国内だけで400万本を突破した超ヒット作でしたが、そのシリーズがWii、Wii U、ニンテンドー3DSといった任天堂陣営へプラットフォームを変更したことは、相当な痛手でしょう。また洋ゲー好きなどのコアなゲームユーザーはXbox360(マイクロソフト)を、子供やライトユーザーはWiiやWii Uをそれぞれ支持する傾向があるため、PSのファン離れは深刻です」(野安氏)

そして、忘れてはならないのがスマホ&携帯ゲームの台頭だ。

「スマホやガラケーでゲームをする習慣ができた人が増え、ゲーム専用機はもう不要だと論ずる人もいるほどシェアが奪われています。それらの要因が重なり、残酷なことですがPS系のハードに魅力を感じなくなってしまったゲームユーザーが増えた。なかでもライトユーザーには特に響かなくなっているでしょうね」(野安氏)

しかし、明るいニュースもある。2月20日にソニーが米ニューヨークで開催を予定している「PlayStation2013」で、ついに次世代プレイステーション(PS4)が発表されると見られているのだ。それでもPS系の復権は難しいのだろうか? 某大手メーカー社員は言う。

「正直、PS4の発売はビジネスとして赤字になる可能性が大です。SCE社内でも、PS事業は撤退したほうが得策だと考える人もいると思いますよ」

撤退とは、穏やかではない。

「冷たい言い方ですが、大手のゲームメーカーは今や家庭用の据え置き機に力を入れていません。家庭用の据え置き機のゲームを作って儲けるビジネスモデルより、今、世界と戦えるのはスマホなどのソーシャルゲームで稼ぐビジネスモデル。ですからPS4への期待値も高くないんです」(前出・野安氏)

仮にPS4がPS3を凌駕(りょうが)するハイスペックを有したとすると、そのスペックを引き出すゲームを作るには莫大な開発費がかかる。しかし、それに見合った収益を上げるのがなかなか難しいという。

「PS3のソフトを出すために必要な予算は、ソーシャルゲームの開発に比べるとケタが3つほど違う。PS4に参入するには、ソフト開発に必要な機材を買いそろえたりする必要がありますし、中小メーカーは参入したくてもできないかもしれない」(野安氏)

はね上がった開発費を回収できる見込みが立たないPS4より、低予算で作ることもできるスマホ用のゲームなどにメーカーの目が向くのも当然かもしれない。

「PS Vitaが発売されてもう1年以上ですが、いまだにPSPでだけ発売される新作が多いんです。これは、きれいな映像とゲームの面白さはさほど関係ないという証明でもあります」(野安氏)

果たしてPS4の発売は、起死回生の一手となるのだろうか。

(取材・文/昌谷大介 照井琢磨 武松佑季 [A4studio] )