私の年末年始の恒例行事は、テレビ神奈川でベイスターズファンの仲間と一緒に「年越えベイスターズナイト」という番組で新年のカウントダウンをすることだった。紅白歌合戦の裏番組になるので、見ている人はそんなに多くないが、例えばやくみつるさんなど、熱心なベイスターズファンは、必ずみていてくれる番組だった。

 ところが、今年はその番組に参加することができなかった。番組から降ろされたわけではない。番組自体が消滅してしまったのだ。

 予兆はあった。一昨年から昨年にかけての番組に、球団は誰も人を出してくれなかった。もちろんスポンサードもなしだ。球団発足直後の混乱期だったという理由も考えられるので、テレビ神奈川は自主制作で放送した。TBSがオーナーだったときには、選手や監督、そして球団社長までが番組に出てくれた。テレビ局であるTBSでさえ、テレビ神奈川を支援してくれていたのだ。ところが、DeNAには、そんな気持ちはまったくないらしい。

 具体的な制作費のことは知らないが、番組を支援するのにかかるコストは、たいした金額ではないと思う。それなのになぜ地元テレビ局を大切にしないのだろうか。タイガース、ファイターズ、ホークスなど、人気球団はみな地元のファンを大切にしている。ファイターズの場合は、地元すべての民放テレビ局にファイターズ応援番組を持っているという。

 実はDeNAのテレビ神奈川冷遇は、ベイスターズナイトだけではない。ベイスターズの主催試合を中継するベイスターズナイターも、昨年はたった27試合しか放送されなかった。テレビ神奈川による野球中継は、かつて巨人戦以外の主催試合全試合をカバーしていた。それができなくなったのは、テレビ神奈川の経営体力が落ちてきたからだ。つまり、球団から27試合分の中継権を買うのが精一杯だったのだ。

 しかし、球団から見たら、テレビ神奈川に中継権を売れなかったからといって、他の地上波に売れるわけではない。だったら、いまの金額で巨人戦を除く全試合を中継させても損はないだろう。

 私がベイスターズファンになったのは、子供のころ、父が毎日新聞の記者で、読売の試合を見せてもらえなかったからだ。巨人の試合がみられないと、東京のテレビでみられるプロ野球は、唯一テレビ神奈川のホエールズ中継だけだった。

 同じ事があるとは言わないが、テレビで中継することで、ハマスタの観客が減るということは、絶対にないと思う。

 球団は、なんとかテレビ神奈川と、きちんと向かい合って欲しい。

森永卓郎「ハマスタから遠吠え」バックナンバー

森永卓郎(もりながたくろう)
昭和32年生まれ 東京大学経済学部経済学科卒業
日本専売公社、経済企画庁総合計画局、(株)UFJ総合研究所などを経て、現在、獨協大学経済学部教授。専門は労働経済学。主な著書に『年収300万円時代を生き抜く経済学』光文社2003年、『しあわせの集め方 B級コレクションのススメ』扶桑社2008年など多数。
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