結構手間がかかったが、MLB30球団の現在の監督の現役時代の成績、そして監督成績を一覧にした。MLBの場合、選手成績も監督成績もメジャーとマイナーがある。それにNPBでの実績がある監督もいるから、これも色分けして盛り込んだ。フランチャイズとは、今のチームで選手としてプレーした実績があることを意味する。監督実績はオールスター前まで。

NPBとは比較にならない「業界」としての広さ、深さを感じる。自分が育ったチームの監督をしているのはわずかに3人。チームカラーだのフランチャイズだのにこだわる球団は少ないということだ。

多くの監督は、現役時代、十分な実績を残していない。“マイナーの主”みたいな成績の人も多い。彼らは、引退するとマイナーのコーチや監督からスタートして選手と同じようにMLBを目指すのだ。マイナー時代の勝率はそれほど高くない。これは、戦力的に未整備の弱いチームの指揮官になって2、3年で立て直すという課題が与えられるからだ。初年度4割5分、2年目5割、3年目5割5分くらいに勝率を引き上げていく。手腕を認められると、今度はMLBのコーチとして修業を積む。さらにAAAで1,2年監督業の仕上げをして、それからMLBに上がるというのが基本的な形だ。だから短くても7〜8年はかかる。

なかには、シカゴ・カブス=CHCのマイク・クエードのように17年もマイナー監督をして、さらにMLBのコーチも数年経験し、20年以上かけて上がってくる人もいる。まさに叩き上げだ。

一方で、少数派だがスター選手がそのまま監督になるケースもある。日本のパターンに近い。80年前後、スティーブ・ガービーなどとロサンゼルス・ドジャース=LADの中軸を打ち、その守備位置である左翼は「Baker‘s Home」と呼ばれたスター選手、ダスティ・ベーカーはマイナーで少しコーチを経験したのちにMLBに引き上げられ、黒人2人目の監督となった。現在シンシナティ・レッズ=CINの監督。古典的な戦法だがよく選手を掌握し、監督としても成功している。ニューヨーク・ヤンキース=NYYのスターだったドン・マッティングリーも今年、マイナーの監督を経ずにLADの監督となった。今のところ成功していない。カンザスシティ・ロイヤルズ=KCのエースだったバド・ブラックもマイナー監督を経験せずにサンディエゴ・パドレス=SDの監督になった。シカゴ・ホワイトソックス=CWSのオジー・ギーエンやNYYのジョー・ジラルディもこれに近い。日本的な監督起用をする球団も一部あるということだ。変わり種はデトロイト・タイガース=DETのアナウンサーから監督になったカーク・ギブソン。彼もマイナーの監督を経験していない。

どういう理由かわからないが、アリーグの監督の方が出世が早く、ナリーグの方が叩き上げが多いようだ。ミネソタ・ツインズ=MINのガーデンハイアや、ボルチモア・オリオールズのショーウォルターは、指導者としての資質を早くから着目され、短期間でMLBの采配を取った。ボストン・レッドソックス=BOSのフランコナーもこのグループだ。

日本では、現場で年を食うと管理職になる。管理職は現場よりも偉いとされるが、特別のスキルはなく、経験と「人間性」で組織を引っ張る。

しかし、アメリカでは管理職も、現場同様「プロ」の技術、スキルを求められる。最初から「偉い」わけではない。だから、現場でいくら仕事ができても管理職になるとは限らない。

日米の文化の差をはっきりと感じる。