ワシントン条約で絶滅危惧種に指定されているアカウミガメやタイマイなどのウミガメは、プラスチックゴミを飲み込み腸の中にため込んでしまい、食べ物を消化することができなくなって死んでしまいます。そんなウミガメがプラスチックゴミを飲み込んでしまうのは「匂いにつられてしまうから」ということを示す実験結果が発表されました。

Odors from marine plastic debris elicit foraging behavior in sea turtles: Current Biology

https://www.cell.com/current-biology/fulltext/S0960-9822(20)30115-9

Plastic could be deadly for sea turtles because it smells like food - CNET

https://www.cnet.com/news/plastic-could-be-deadly-for-sea-turtles-because-it-smells-like-food/

海を漂うプラスチックゴミは海洋生物の生態系に大きな悪影響を及ぼしており、特に生息数が少なく絶滅危惧種に指定されているウミガメは廃棄された網に絡まったり、プラスチックゴミを飲み込んだりして死んでしまうケースが相次いで報告されています。

2018年には、大西洋・地中海・太平洋に生息する7種類のウミガメで、海岸に打ち上げられたり漁に使われる網にかかったりして死んだ102頭を解剖したところ、カメの体内から衣類やタバコの吸い殻、ロープの切れ端など、プラスチックゴミが800以上も見つかったと報じられました。

しかし、なぜウミガメがプラスチックゴミを飲み込んでしまうのかについてはこれまでよくわかっておらず、「ビニール袋がクラゲのように見えてしまうからではないか」などと説明されてきました。

そこで、ノースカロライナ大学チャペルヒル校のケネス・J・ローマン生物学教授の率いる研究チームはウミガメの嗅覚に注目。アカウミガメを飼育する水槽内の空気中に「脱イオン水」「きれいなプラスチック」「アカウミガメの餌」「微生物や藻類、プランクトンなどで汚染されたプラスチックゴミ」の匂いを放出し、アカウミガメの反応を観察しました。



その結果、生物汚染されたプラスチックゴミの匂いを、アカウミガメが水面から鼻を突き出して嗅ぎ出した様子が確認できました。またこのアカウミガメの反応は、餌の匂いを水槽に流した時と同じものだったとのこと。

プラスチックゴミに付着する微生物や藻類などは、アカウミガメにとって本来食料になります。これまでウミガメは「プラスチックゴミの見た目」で食べ物と誤解してしまうと考えられていましたが、実際は「プラスチックゴミの匂い」もウミガメに大きな影響を及ぼしていたというわけです。研究チームは、アカウミガメがプラスチックゴミに付着する微生物や藻類の匂いに対して正確に反応したことに驚いたとコメントしました。

ウミガメの調査と保護を行うCaretta Research Projectの研究員で、論文の共著者でもあるジョセフ・ファラー氏は「ウミガメにとって海洋プラスチックの問題は、『ビニール袋がクラゲやワラのように見えるから』という単純なものではありません。これらは重要でやっかいなパズルのピースであり、すべてのプラスチックゴミはウミガメに危険をもたらしています」と述べました。