捨てられる農産物を減らそうと、規格外品を売り込む動きが活発化してきた。北海道の生活協同組合コープさっぽろは、「ぶこつ野菜」と銘打ち割安で販売。JA全農が運営する通販サイト「JAタウン」も、「訳あり」として規格外品を取り扱う。食品ロス削減推進法が5月に成立し、家庭や事業者それぞれの段階でロス削減への取り組みが求められる中、農産物の廃棄を減らす現場を追った。(望月悠希)

 札幌市のコープさっぽろにしの店の入り口近くに並ぶニンジン。傷が付いたり変形したりと、一風変わった見た目だ。「ぶこつ野菜」と名付け、「見かけ三流、味一流! 中身で勝負!」とPRする。

 「ぶこつ野菜」は、同生協が道内108店舗で展開する。規格外のニンジンやタマネギ、ジャガイモなど各店舗が10以上の品目を用意している。生協の職員が農家を訪ねた際、形が悪く規格外品として捨てられる野菜を見たのが取り組みのきっかけだ。「味は同じなのに、もったいない」と、生産者支援の一環で2010年に販売を始めた。

 捨てたり加工用に回したりする野菜を、農家やJAなどから仕入れる。産地からは「捨ててしまうものを買い取ってもらい、ありがたい」という声が上がる。

 1袋の量を多くしてまとめて販売する戦略だ。ニンジンであれば通常1袋(800グラム=3、4本)で198円ほどだが、「ぶこつ野菜」では1、2キロを200〜300円で売る。多人数の家庭や業務用をターゲットにし、少量で売る通常野菜の需要を奪わないよう工夫する。

 にしの店では常時10品目以上用意し、年間で20〜30品目を売り出す。同店の「ぶこつ野菜」の18年度売り上げは1000万円以上。ラーメン店など飲食店に人気で、前年度比2割増えるなど評価も上々だという。

 同生協全体の売上高は年々拡大し18年度は3億5000万円に上る。約5年前から道外からも規格外野菜を集め、通年で販売できるようにした。19年度は5億5000万円を目標に掲げる。

 廃棄される野菜の削減に向けて、同生協は「どこかが受け止めなければならない。地域に密着して取り組みを強化したい」と話す。今後も「ぶこつ野菜」を取引する農家を増やす方針だ。

 規格外野菜の売り込みは通販でも進む。「JAタウン」では、全国のJAや全農県本部からの規格外野菜を「業務用」「訳あり」などとして取り扱う。全農は「引き続き取り扱いたい」(フードマーケット事業部)とし、飲食店など事業者向けの販売を強化する方針だ。

 規格外で出回らない農産物は、商品として流通する前に捨てられるので食品ロスの量とされる643万トン(16年度推計)には含まれない。ただ、農水省は「食べられるものをしっかりと販売できるようにする、重要な取り組み」とみる。法律の理念に合致するとしている。

「食べ残しゼロ」1300店超す 京都市が認定


 食品ロスなどのごみ減量に取り組む京都市内の飲食店と宿泊施設、小売店舗が認定される「食べ残しゼロ推進店舗」が2018年度末に1300店舗を超え、1312店舗に拡大した。京都市が4日までに発表した。市によれば、同様の取り組みをしている政令市の中で最大規模の店舗数という。

 同市は14年12月から、飲食店と宿泊施設を対象に食べ残しや手つかずといった食品ロスの削減に取り組む店舗を「食べ残しゼロ推進店舗」として認定を開始した。18年9月からは、小売店を認定対象に加えた。認定店舗数の内訳は、飲食店・宿泊施設が1009、食品小売店が303。

 認定店舗では仕入れ、調理、販売、消費の場面で、食材の使いきり、食べ残しを出さない、持ち帰りができるなどの工夫、食料品の見切り販売、少量パックやばら売り、フードバンク活動への支援などを行う。

 市は「食べ残しゼロ推進店舗」の拡大で、食品ロス削減を意識したライフスタイルへの転換を進めたいとしている。