日本最大のアメリカ軍基地である嘉手納飛行場にも実は投資している人がいます(写真:ZUMA Press/アフロ)

日本でアメリカ軍基地として使用されている土地を「軍用地」といいます。1972年5月に沖縄は日本に返還されましたが、その後もアメリカ軍が使用している基地、および国土交通省が管理している那覇空港用地、加えて自衛隊基地も「軍用地」と呼ばれています。

この軍用地にオフィスやマンションの賃貸物件などと同じく不動産投資ができる、と聞けば意外に思うかもしれません。『専門家が優しく教える! 〔軍用地投資〕の教科書』の著者、仲里桂一氏が、その知られざる世界を解説します。

投資は、リスクとリターンが表裏一体の関係にあります。リスクが高い商品は、リターンも高くなっています。各投資を比較すると、資産価格や配当(あるいは賃料収入や利子)の変動が大きいものは、リスクの高い投資となっています。

例えば、株式投資はリターンが望めて収益性が高い半面、元本割れのリスクも高いものです。一方、預貯金は安全性が高く元本割れのリスクは低いですが、大きなリターンは望めません。

不動産投資のリスクとリターンは?

不動産投資の場合はどうでしょうか。最近あまり聞かれなくなった原野、山林への投資は、「あの山の近くに将来空港ができるかもしれない。とても安い金額で購入できる山が、将来何十倍の価格で売れるかもしれない」といった投資です。

事の真偽が定かではない噂のうちは土地の価格も安いので、大きなリターンが期待できます。しかし、実際に空港ができるかどうかは不確実性が高く、リスクが高い投資といえます。

例えば、これが空港の建設計画が進み、「どうやら本当に空港ができそうだ」という頃(不確実性が低くなる)には、土地の価格が上がってしまっているので、最初の頃ほど大きなリターンは望めない投資となります。

銀座の1等地のビルなどは、空室リスクなどがほとんどない投資ですが、人口の少ない地方都市での不動産投資のように利回りはよくありません。都心のワンルームマンション投資の利回りはその間くらいで、新築で3〜4%程度です。

軍用地投資の利回りは現状2%弱と、不動産投資のなかでは比較的低めです。利回りこそパッとしませんが、軍用地投資にはほかにはない魅力がたくさんあります。

不動産投資と金融商品のいいとこ取り

不動産投資の特徴は、安定性と収益性だといわれています。リスク面から見るとミドルリスク・ミドルリターンにあたり、ほかの投資と比較しても手堅い投資といえます。

不動産投資の運営上のリスクの1つは、空室です。このリスクを回避するために、空室になりにくい優良物件を選ぶことが大切だということは、不動産投資をしたことがある人なら誰もが知っていることでしょう。

銀座の1等地のビルには、老舗百貨店や有名ブランドショップなどの優良テナントがこぞって入居しているので空室はほぼありませんが、その分景気に左右されやすいので必ずしも安定はしません。軍用地以外の不動産投資は建物を「人」に貸して賃料を得るビジネスモデルです。建物の維持管理を怠ると老朽化につながり空室リスクが発生します。

その点、軍用地は空室になりにくい優良物件です。「日本の平和と独立を守る」という理念の下、日本政府はアメリカ軍に継続的かつ安定的に施設を提供しなければなりません。つまり、急に「来月で賃貸借契約は終了、土地を返還します」といった事態は考えにくいのです。万が一、土地が返還されるにしてもその数年前に国からの説明やマスコミ報道があるので、返還後の土地の利用について計画を立てる時間もあります。

さらに、一般的な不動産投資では、何もせずに購入時よりも利回りが上がるといったことはまれですが、軍用地投資では家賃=軍用地料が年々上昇するので、利回りが年々上がります。

不動産投資のなかでも空室などのリスクがなく、黙っていても利回りが上がるのが軍用地投資。長期で安定的に利益が得られる“究極のほったらかし投資”なのです。また、一般的な不動産は売却する際に時間がかかるもの。ほかの投資と比べて「流動性が低い」といわれます。

ところが、手堅い投資として近年注目を浴びている軍用地は、「嘉手納飛行場」のような人気物件が売りに出されると数分で買い手が見つかるほどです。流動性が高く、金融商品と同様に換金性に優れているといえるでしょう。

このように、軍用地投資最大のメリットは、不動産投資と金融商品のいいとこ取りができることです。

通常、不動産投資を行ううえでの大きなリスクの1つは空室ですが、無事に借り手が決まったとしても安心してはいけません。なぜならその借り手がしっかりと家賃を払ってくれるとは限らないからです。

貸主にとって家賃が支払われないということは死活問題ですので、滞納者を追い出してきちんと支払ってくれる入居者を入れたいと思うのは当然です。しかし、実際に追い出せるかというと、そう簡単にはいきません。滞納者は出ていけと言われてもお金がないので行く場所がなく、催告を無視して居座ってトラブルになるケースも多いものです。

不動産投資には、こういった家賃滞納リスクはつきものです。しかし、軍用地投資には、当たり前ですが、家賃滞納リスクがありません。なぜなら、軍用地の借り手は日本政府だからです。

在日アメリカ軍の基地に使用されている土地軍用地は、日米安全保障条約に基づいて、日本政府が地主と賃貸借契約を結んで借り上げ、地代として軍用地料を支払ってアメリカ軍に提供しています。国(日本)と国(アメリカ)との約束が前提となっているので、その約束を破る=滞納することは、国際問題に発展する重大事項となります。

これほど、信用できる「優良顧客」はほかにいません。借り手=日本政府だから、超安心なのです。

アインシュタインも大絶賛!複利の法則

「人類最大の発明は複利」。天才物理学者アインシュタインが「宇宙で最も偉大な力」と評したのが“複利”という概念です。

金利には単利と複利があります。金利が適用されるのは、単利の場合は「元本」だけ。それに対して複利は「元本+金利」に金利が適用されるという考え方です。

現在は世界的に超低金利の時代。日本の預金金利0.01%程度では複利効果はほとんど期待できません。しかし、軍用地の地料は、沖縄県軍用地等地主会連合会(土地連)と防衛省との地料の交渉によって、その年の地料+αが次年度の地料となることが決まっています。軍用地を持っている限り、半永久的かつ複利的に地料は増え続けていくのです。

私が2011年に購入した25坪の嘉手納飛行場の軍用地料の例を挙げましょう。2011年の軍用地料は、11万2716円でした。軍用地料は年々上昇し続け、2018年には、12万7241円。年平均1.8%アップしたことになります。

アメリカ軍基地周辺では振興開発で地価が著しく高騰しており、基地周辺の土地の実勢賃料は軍用地料の倍近くとなっています。あまりにも軍用地料が低すぎるため、土地連は地料算定の見直しを国へ求めており、その要望に応えて防衛省は毎年、地料を増額しています。これが、地料が複利的に増える理由です。

また、十数年後の2032年には、国と地主との土地の賃貸借契約を更新する時期にあたり、例年の倍以上の大幅な地料の増額が確実視されています。

株式投資の場合、会社がなくなれば株の価値はゼロになります。しかし、軍用地投資で、例えば極東最大の空軍基地である「嘉手納飛行場」を購入した場合、現在のところ、返還されることは考えにくいです。

たとえ、将来的に返還される軍用地を購入したとしても、そもそも土地はなくならないので無価値にはなりません。むしろ場合によっては返還決定後のほうが価格は高騰することもあります。

ローリスク・ミドルリターンの投資

そして、国が遅滞なく支払ってくれる地料によって投下資金を着々と回収できます。これが「軍用地投資はローリスク」といわれる理由です。この地料収入は年々一定の割合で上昇することから、軍用地を購入するとだいたいどのくらいの収益が得られるのかを高い確率で予測することが可能です。

地料10万円、年間の平均上昇率は先ほどの嘉手納飛行場の実例を基に平均1.8%、倍率を58倍と仮定します。倍率とは軍用地の販売価格を決める際の指標です。地料に倍率を掛け合わせた金額が販売価格になります。

計算してみると、購入時に580万円だった販売価格は15年後には744万円になるという結果が出ます。「15年で3割しか上がっていないじゃないか」と感じられるかもしれません。

ですが、私が説明したいのは、そんなことではありません。軍用地は自分でシミュレーションした価格で購入さえできれば、リスクは極小でありながら、一定割合のリターンを得ることが可能だと言いたいのです。


実際に、軍用地は現在までのところ地料が右肩上がりで、ほぼ確実に購入した金額以上で売却できる状況が続いています。

ほかの不動産投資ではそうはいきません。入念なシミュレーションをして希望価格で購入できたとしても、確実にそのシミュレーションどおりに利益が得られるかというと、そう簡単ではないでしょう。一般的な不動産投資では、時間の経過とともに建物が劣化するため、購入時よりも家賃が下落して利回りは悪くなり、物件価格も下落していくものです。ところが、軍用地投資では、軍用地を所有し続ける限り利回りも価格もアップし続けます。

軍用地投資は、決して簡単に儲かる投資ではありませんし、ほかの不動産投資のようにキャッシュフローも多く出ません。とはいえ、本来ありえないはずの「ローリスク・ミドルリターン」の投資ができるのは大きな特徴です。