北海道で真っ赤な野菜、レッドビート(ビーツ)の生産拡大の機運が高まっている。赤い色素に機能性成分を含み、「食べる輸血」といわれるビーツ。愛別町では生産組織が誕生し、ホクレンは道産を使ったレトルトのボルシチを発売した。小規模経営や自家栽培などが中心だったが、本格栽培への兆しが見えてきた。(望月悠希)

愛別町愛山地区に生産組織 活気戻す起爆剤


 廃校となり、現在は交流施設になっている北海道愛別町愛山地区の旧・愛山小学校。施設内に大小さまざまなビーツがごろりと転がる。同校教諭をかつて務めた、堺孝道さん(74)が「健康に良い野菜を作りたい」と着目した作物だ。高齢化が進む同地区で堺さんは「新たな特産品を作り、人を増やして活気を取り戻す起爆剤にしたい」と一念発起。4年ほど前から、ビーツのさまざまな海外品種の栽培を試してきた。現在は1アールを栽培する。

 取り組みは地域に広がりつつある。同町では3月、生産者7戸でつくる「愛別町ビーツ振興会」が発足。堺さんが会長を務める。JA上川中央はオブザーバーとして参加。今年度は10アールで約2トンを目安に生産する予定だという。品種は「シリンドラ」が中心。農薬を使わず、化学肥料を抑える生産にこだわる。

 町は今年度中に、レトルト食品やソース、ジュースなど加工品の商品化を目指す。インターネットや道内のスーパーでの販売を予定しているという。

 同町は「何十年先になるか分からないが、全国に発信できる販売拠点をつくりたい」(産業振興課)とする。

ホクレンがボルシチ商品化 試験栽培5倍へ


 ホクレンも産地化に取り組んでいる。ビーツは、ロシアのスープ料理・ボルシチの材料として有名だ。ホクレンは4月、道内でレストランを経営する五島軒とタッグを組み、レトルト商品「北海道ボルシチ」を発売した。

 ホクレンは北海道大学との連携協定の一環で2018年、江別市の農地所有適格法人「やま道の里」と連携し、20アールで試験栽培をスタート。19年は約5倍に拡大し、10〜15トンの収穫を目指している。品種は「デトロイトダークレッド」。新商品には、これらの道産を使う。

 産地化の動きの背景には、機能性への注目の高さがある。ビーツに豊富に含まれる色素「ベタニン」には抗酸化性がある。既に健康意識の高い消費者を中心に注目が集まっており、今後も需要拡大が見込まれる。食品メーカーなどがビーツを使った商品を販売する動きも盛んだ。

 ビーツを研究する北海道大学の橋床泰之教授は、「疲労回復などに効果があるとされ、天然着色料としての活用も期待できる。新しい機能性も見つかりつつある」と強調する。今後の普及に向けては、「消費拡大が課題。北海道ブランドの定着に向けた取り組みが重要」とする。