始球式といえばプロ野球の楽しみの一つ。野球少年少女が繰り出すストライクに温かい拍手が注がれ、往年の名選手が投じる1球には目頭を熱くするオールドファンも多いことでしょう。芸能人やスポーツ選手の華やかな投球シーンは、「いいもの見たな」と気持ちが高揚するものです。

 しかし、プロ野球のグラウンドは男と男が生き残りを懸けて真剣勝負を繰り広げる戦場でもあります。芸能人の皆さんが良かれと思ってサービス精神を発揮したとしても、受け取る側がどう感じるかは、また別問題です。

鈴木奈々の始球式で試合開始が4分遅延…


 4月27日、楽天の本拠地・楽天生命パークでの楽天・ロッテ戦の始球式にはタレントの鈴木奈々さんが登場。マウンド上で「いきます!」と何度も叫びながら、焦らしに焦らしてなかなか投げない始球式には客席から「早く投げろ!」とのヤジも飛びました。

 試合開始が4分遅れ、この始球式をスポンサーとしてサポートした太子食品が公式ツイッターで「当日の始球式が遅れ、皆様にご迷惑をお掛けした事、大変申し訳ございませんでした。私達スポンサーの準備・説明不足であったと深く反省しております」と投稿する異例の事態になりました。

 鈴木さんに悪気はなかったのでしょうが、当日、杜の都は冷たい雨が降っており、寒さの中で待たされた選手やファンの心模様は様々だったと推察されます。先発投手は万全の調整を終え、極限の心理状態でプレーボールの瞬間を待ちます。この日の楽天の先発・美馬投手は2回までに5失点の乱調。「魔の4分間」が心身のコンディションに影響を及ぼした可能性も否定できません。

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水着での始球式は?

 4月23日、日本ハムの2軍本拠地、鎌ヶ谷スタジアムで行われたイースタンリーグ公式戦、日本ハム・西武戦の始球式にも賛否両論が渦巻きました。2019年なぎさイメージガールの南衣伶夏さんが登場。水着姿で登場したからです。

 SNS上では17歳の健康的な美を素直に称える意見もある一方、「水着よりユニフォームで登板させるべきでは」「真剣に野球をやる選手にも失礼」との声も散見されました。

 現在、鎌ヶ谷の2軍施設には吉田輝星投手や清宮幸太郎内野手も汗を流しており、ファームとはいえ、スポーツ各紙は記者を常駐させています。かわいいアイドルの始球式はメディアが食いつく話題であり、すぐにネットニュースになるので、発信側の宣伝効果は大きいものがあります。

 エンターテインメントか、スポーツの品格か。バランスが難しいところです。

参考にしたい事例

 参考にしたい事例があります。タレントの柳沢慎吾さんが横浜スタジアムで繰り広げる「日本一長い始球式」です。柳沢さんは高校野球の大ファン。中でも横浜高校フリークとして知られています。

 投手から実況アナウンサー、監督、球審などを一人で演じ、DeNAの選手も巻き込む壮大な始球式は、野球ファンの絶大な支持を得ています。

 なぜか。

 演じる柳沢さんの根底に、野球愛があふれていることが、観客に伝わるからでしょう。

 選手や野球へのリスペクトがあればOKだし、なければNG。始球式を取り巻くファンの思いは、意外とシンプルな判断基準によって決まるものかもしれません。最低限の礼儀を忘れずに、令和時代も華やかでエキサイティングな始球式を楽しみたいものです。

※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]