1996年の結成以降、20年にわたり日本のロックシーンに独特な存在感を示し続けているロックバンド・くるり。そのフロントマンである岸田 繁の、今度の“コラボ相手”は…リラックマ!

Netflixオリジナルシリーズ『リラックマとカオルさん』は、自分の真面目な性格にコンプレックスを抱くアラサーOLのカオルさん(声/多部未華子)と、呑気なだららん生活を送るリラックマたちが過ごす色とりどりの12ヶ月を描いた物語。

岸田は本作のサウンドトラックを担当し、そんなリラックマの“だららん感”や、“癒し系らしさ”を、「サウンドとして不完全さを残しておくこと」で表現したという。

レアすぎる(!?)リラックマとのツーショットをお届けするとともに、バンドはもちろん、劇伴からオーケストラの大作、そして鉄道の発車メロディーまで、多岐にわたる創作活動を行いながら、芸術系の大学で教鞭もとるなど、幅広い分野でクリエイティブに「一流」を極める、岸田の創作の源を探った。

撮影/大関 敦 取材・文/坂本ゆかり 制作/iD inc.

リラックマの印象は「すごくシンメトリーなヤツ」

『リラックマとカオルさん』のサウンドトラックは、小林雅仁監督から直接オファーがあったそうですが、曲を書くにあたって、監督とはどのようなお話をされたのですか?
僕からは、「(曲の世界観に関して)具体的なリクエストがほしい」とお伝えしました。それで監督から、「ここのテンポはこれくらい」、「ここはオーケストラっぽい感じ」とか、「ハワイアンテイストで」といった提案をいくつかいただいて、それを指針に作っていきました。
リラックマはご存じでしたか? また、どのような印象をお持ちですか?
もちろん知っていました。いろんなところによくいるじゃないですか。すごく「シンメトリーなヤツ」というイメージを持っていました(笑)。
リラックマには「癒やし」や「だららんとした」というイメージがあると思うのですが、そういうキャラクター性が音楽に反映されたことは?
そうですね。クマといっても野生動物のクマとは違いますので(笑)。リラックマはクマのキャラクターだけど、ある種カオルさんの内面でもあり、拠り所でもある。そのイメージだけは、どんなシーンにおいても持たせたいと思いました。

それと、作品がストップモーションアニメなので、あまり“リアルなサウンド”にならないようにというか…。サウンドとして不完全さを残しておくことを考えましたね。そこで選んだのが、低音の木管楽器、ファゴットだったんです。
そこも抜けた感じで(笑)。
そうですね。もうちょっとバシっとキメてもよかったかも…と、今となっては思いますけれど(笑)。ファゴットのほかには、“壊れバンドネオン”というイメージもありました。
今回は、岸田 繁名義のサウンドトラックだけでなく、くるり名義での主題歌『SAMPO』も制作されました。歌詞では「じたばたしたって どうにもならない」というケセラセラ精神のようなものが描かれていますが、制作するうえで気をつけたことは何でしょう?
『SAMPO』は、第1話でカオルさんが桜の中を歩いているシーンで流れます。彼女の気持ちに寄り添えるものを作ることができればと思って、地味だけど気持ちのいい曲を作ってみました。でももうちょっと、テンションが高い曲でもよかったかな。僕自身がテンションが低い人間なので、こうなっちゃいました(笑)。

それと、劇伴ではいつも演者さんの声を邪魔しないように気を配っています。『リラックマとカオルさん』であれば、カオルさんを演じている多部未華子さんの声のキーと被らないように、普段よりもキーを下げてかなり低い声で歌っています。
サウンドトラック制作の作業は、実際の絵を見ながらされたんですか?
はい。「ストップモーションアニメの撮影って大変やろうな〜。ご苦労様です!」と思いながら(笑)。
絵に合わせて音楽を作っていく作業は、大変そうです。
それが僕はすごく得意みたいで。絵があるだけで、曲の80%ができあがってる感じがするんです。あとはそのイメージで音を作っていくだけなので、何もないところから曲を作るのとはぜんぜん違って、そんなに難しいことではなかったです。
では、くるりの曲を作るときも、頭の中に映像を浮かべていく感じなのでしょうか?
そうですね、そういうことも多いです。

日々の癒しは温泉と飲酒。あと人に褒めてもらうこと(笑)

本作では、リラックマがカオルさんの家にいつのまにか居候として住み着いてしまいましたが、岸田さんがある日、家にリラックマがいたらどうしますか?
片付ける…かな。日々片付けに追われてるので、一緒に片付けちゃうと思いますね。でも、この大きさだったら、いいクッションになりそうではありますね(笑)。
リラックマはのんびりしてあくせくしないイメージですけど、ご自身はリラックマタイプ?
いや〜、そうなれれば楽なんですけれど、焦ったりしますよ。余裕はぜんぜんないですね。
落ち着いて見えますけれど…。心の中は焦っているのにそう見えない?
そうかもしれないですね。わりとせっかちなほうだと思います。
では、癒やし的存在のリラックマですが、岸田さんにとっての癒しは何でしょう?
いろいろありますけれど、温泉とか飲酒とか。あとは人に褒めてもらうとか(笑)。
岸田さんともなれば、毎日褒められてばっかりじゃないんですか?
いや〜、怒られてばっかりですよ。あまり褒められないんです(笑)。
どういうふうに褒められるとうれしいですか?
自分なりに頑張って「よし!」って思ったことを褒めていただけると「やってよかった!」ってなりますよね(笑)。それは仕事だけじゃなく。

「最近はスーパー銭湯に行けば、次の仕事に切り替えられる」

岸田さんといえば、母体となるバンド・くるりでの活動や、3月27日にリリースされたばかりの『交響曲第二番』のようなオーケストラ作品、そして阪急電鉄十三駅の発車メロディーまで、幅広い音楽を作っている印象です。同じ音楽とはいえ、異ジャンルのものを作るのは大変ではないでしょうか?
同時進行で作るのは無理ですね。それぞれを区切りながら、切り替えながらやっています。まぁ、2〜3日あれば切り替えられるので。
切り替えるコツというか、スイッチみたいなものはあるんですか?
コツは、やりきって忘れる…ことでしょうか。曲を作っているときって、作曲の作業を止めても頭の中に音が流れていたりするので、それが鳴りやむのを待つしかないんです。それには多少の時間が必要で。

のんびり温泉にでも行ければいいんですけれど、最近はスーパー銭湯で、次の仕事に切り替えられるようになりました(笑)。
アーティストの中には、お休みを取らないでずっとスタジオに入っている方もいらっしゃいますよね。
僕も昔はそういうタイプでした。最近は学校で教えたりしていて、あまり休みを取れないので、オンとオフを意識しています。

う〜ん、何かこういう生き方ってあまりロックっぽくないなぁ(笑)。
(笑)。鉄道マニア、広島カープマニアなど、“趣味人”としても知られている岸田さんですが、趣味もオンとオフの切り替えの役に立つのでは?
そうですね。趣味に使う時間は、短くても意識的に作るようにしています。

最近は、好きな昆虫のことを調べたりしていますね。あまり人に共感してもらえないんですけれど(笑)。自分が熱中できるものを調べることが気分転換になります。
オンとオフをうまく切り替えることで、たくさんの音楽が作り出されるんですね。そのクリエイティブの源には何があるのでしょうか?
やはり音楽そのもの…音楽を生み出すことですね。

それはひとりで作っているときも、バンドのときも、オーケストラのときも、音楽に関わる何かをしているときでも同じで、僕にとっての主語は常に音楽なんです。だから“音楽さん”が「ブルブル」って動き始めたら、僕はすごくカタルシスを感じるんですよね。
それは10代でバンドを始めたときから変わらないものですか?
変わらないですね。

仕事がルーティンワークになっていると「いかんな」って気持ちになるので、できるだけやりたいことをやって新鮮な気持ちでいられるように、何かに当てはめて考えないようにしています。

そういう意味でも、今回のサウンドトラックのような仕事ってありがたいんですよ。いただく仕事って、いろんな制約があるじゃないですか。制約があるということは、それを守っていればあとは自由にできる。だから楽しいんです。自分で制約を作るのは、すごく難しくて。
「制約の中でどれだけ岸田色に染められるか」ってことですか?
色っていうのは、勝手に出てくるものだと思うんです。

先ほどもお話しましたが、本作であれば、ちょっと間の抜けたリラックマと、カオルさんの人間味を音楽の“作りの粗さ”で出そうと思いました。プリセットに近いデジタルサウンドをあえて剥き出しに使って。あまり高尚にならないように心がけたというか、この世界観はハイパーなサウンドにしないほうがいいな、と。

それが功を奏しているのかはわからないんですけれども、『リラックマとカオルさん』の劇伴でしかできないことを自分なりにやってみたつもりです。

岸田 繁が注目する、次世代を担うアーティスト

2016年から京都精華大学ポピュラーカルチャー学部で教鞭をとられています。くるりがデビューした頃に生まれた学生たちの音楽との接し方は、岸田さんが学生の頃とはだいぶ違うのではないでしょうか?
今の学生は、CDを再生する機械を持っていませんからね(笑)。音楽に対しての距離感も受け取り方も違いますよね。でも「二十歳ぐらいの子ってこうだよね」っていう世の中が持っている根本的なイメージは、僕らの時代から変わってないんじゃないかな?

ただ、僕が教えている大学は芸術系の大学なので一般的な学生とは少し違うのかもしれませんが、「賢いな」と思いますね。時代のせいだと思うのですが、“次のこと”を考えているんですよ。

常々、僕らが持っているリテラシーや一般的な倫理観の感覚は、更新されていると感じます。僕らの時代はよくも悪くも、立ち居振る舞いや言葉遣いひとつとっても、もっと「やんちゃ」だったというか(笑)。
若いバンドの音楽もたくさん聴いていらっしゃいますが、どういうところで知るのでしょうか?
学生さんに教えてもらうこともありますね。今の二十歳ぐらいの人たちの感覚は面白いなと思います。
具体的には、どういうところが?
音楽をやってる人間って、少なからず自己表現をしたものを認めて欲しいと思っているんです。僕らのときだったらメジャーデビューをするという目標に向かう流れがありました。

でも今は、そういう考えじゃないんですよね。自分のやり方をしっかり持っているし、彼らなりのやり方で、世界を広げることに価値を置いている。そういう生き方は今っぽい気がします。

新しいものを作るための感性の研ぎ澄まし方が、僕らから見るとフレッシュというか、アカが付いていないというか…。接していてもすごく気持ちがいいんですよね。
Twitterでも若いアーティストの曲を聴いて、感想を返していらっしゃいますよね。
はい。「聴いてください!」って来たものは、時間があるときはなるべく聴くようにしています。面白いものが多いですよ。

いちミュージシャンとしての感想はできるだけ正直にお答えするようにしています。あくまでも個人的な感想としてですけど。たまに「スゴい!」と思うものがあるんですよ。
最近、注目している若手アーティストはいますか?
う〜ん、いろいろいるんですけど、最近のアーティスト名は覚えるのが難しいんですよね(笑)。くるりも最初は「何それ」って言われてましたけれど。

(スマホで検索しながら)あ、最近いいと思ったのは、「浦上・ケビン・ファミリー」の『芸術と治療』という曲ですね。これは素晴らしいです。まだ学生さんだと思うんですけど、こういう人が次の時代を担っていくんだろうな、と。
とても真摯に、楽しみながら丁寧に作られてる感じがする一方で、わかりやすい言葉で説明できる文脈の中にいない感じがします。きっといろんな人たちが彼らの音楽を聴いて、ジャンルとかの名前を付けていくんじゃないかな?

とにかく今は放牧状態で、これからどんどん力をつけていくように見えますね。僕もそういう若いアーティストや学生から、日々刺激を受けています。
岸田 繁(きしだ・しげる)
京都府出身。ロックバンドくるりのフロントマン。作詞作曲の多くを手がけ、多彩な音楽性で映画のサントラ制作、CMやアーティストへの楽曲提供も行う。2016年より京都精華大学にて教鞭を執り、2018年には特任准教授に就任。京都市交響楽団の依頼を受け完成させた初の交響曲「交響曲第一番」に続き「交響曲第二番」を発表した。

番組情報

Netflixオリジナルシリーズ『リラックマとカオルさん』
Netflixにて4月19日(金)より全世界独占配信スタート
 
【キャスト】多部未華子ほか
【スタッフ】監督:小林雅仁/脚本:荻上直子/音楽:岸田 繁・主題歌:くるり「SAMPO」/
クリエイティブアドバイザー:コンドウアキ/製作著作:サンエックス株式会社/
監修:サンエックス“リラックマチーム”/アニメーション制作:ドワーフ

【リラックマとカオルさん特設サイト】
http://www.san-x.co.jp/rilakkuma/rilakkuma_and_kaoru/
(C)2019 San-X Co., Ltd. All Rights Reserved.

サイン入りポラプレゼント

今回インタビューをさせていただいた、岸田繁さんのサイン入りポラロイドを1名様にプレゼント。ご希望の方は、下記の項目をご確認いただいたうえ、奮ってご応募ください。

応募方法
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受付期間
2019年4月22日(月)18:00〜4月28日(日)18:00
当選者確定フロー
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  • 当選者発表方法/応募受付終了後、厳正なる抽選を行い、個人情報の安全な受け渡しのため、運営スタッフから個別にご連絡をさせていただく形で発表とさせていただきます。
  • 当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから5月8日(水)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただき2019年5月12日(日)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。
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