SNSにも作法がある。弁えておかないと、「つながって」いても孤立するという悲しい目に……。

■真夜中に書いたラブレターと同様

SNS、中でもFaccebookやInstagramは、いわゆる「ハレ」と「ケ」の「ハレ」がよりきらびやかに可視化されます。ですから、人の投稿を見て嫉妬したり、落ち込んだりというのはよくあること。若い子は複数のアカウントをつくり、本音と建前を別の場所で話すなど、距離の取り方やうまくかわす術を身につけていますが、中高年はSNSの中でも本音が言えず、疎外感や孤独感に苛まれるケースが多々あります。

PIXTA=写真

同じ中高年でも、他人から認められたいという「承認欲求」が強いタイプには、筋トレ後の裸の自撮りや、出張時に空港や新幹線のホームで撮った写真をアップするなど“できる男”を演出する方も。ただ、こうした投稿は若者から「エアポート投稿おじさん」などと揶揄され、嘲笑や困惑の対象になってしまっています。

SNSは便利な半面、世代や個人の性格によって意思疎通の方法が微妙に異なり、思わぬ齟齬をきたすことがあるので、最低限の作法とタブーを心得ておくべきだと思います。

まず、SNSは「公共の場」であり、かつ誤解を生みやすいツールだと意識すべきです。個人情報も、相手が公開している以上の情報は勝手に載せないほうがいいでしょう。議論もしばしば白熱しますが、やはり文章だけのコミュニケーションは難しい。真意が伝わらず、相手の感情を逆なでしたり、傷つけたり怒らせたりしてしまいます。

「メラビアンの法則」(話者の見た目、表情、仕草、声質、口調などが聞き手に与える影響)から考えると、文字だけの「バカだな」と、やさしい表情を直接見せて伝える「バカだな」では明らかに意味が違います。複雑な話や感情が絡む話は、なるべく実際に会い、人間関係をしっかり築いたうえで行うのがおすすめです。

個別に見ると、LINEはプライベート寄り。家族と使っている方が圧倒的多数なので、仕事は持ち込まず、オフであることを考えたうえで、相手の迷惑にならない時間帯、内容、本数を考慮して送るのがマナーです。

Twitterは気軽に呟けますが、即反応する“脊髄反射”は控えるのが鉄則。言葉足らずだったり、怒りにまかせたツイートがキャプチャーに撮られ、拡散されたりすれば、下手をすると現実の自分の立場や会社にも悪影響を与えます。真夜中にテンションを上げっ放しで書いたラブレター同様、投稿も冷静になってから読み直して、それでも投稿すべきだと思ったときだけにすべきでしょう。

■若い子から相談される「上司からの友達申請」

中高年にはFacebookが人気です。「ほら見て、すごいものを手に入れた」「一緒に喜んで」と承認欲求を満たす人も多く、ある程度の見栄や体裁は許容範囲でしょう。

ただ、度が過ぎると鼻持ちならなくなりますから、「子供と久しぶりにサッカーをやった」といったほっこりする話題や、日常の人柄をうかがわせる話もアップすれば、好感度が少々上がるのではないでしょうか。

若い子からよく相談されるのが、上司からの友達申請への対応です。彼らは実名で使っているので探せばすぐ見つかりますが、仕事とプライベートを分けたい人が多数派。「これって○○ちゃんだよね?」などと確認したり、いきなり友達申請を送るのは絶対にNG。知らぬふりをして、SNSをやっているかを対面で聞いてから、「繋がっていただけますか?」という具合に話が進むならOKだし、「あまり使っていなくて」ならば拒絶のサインと取ったほうが賢明でしょう。写真のタグ付けは、相手がその場にいることじたいを知られたくないケースが多いので、撮影したその場で可否を聞くべきです。

SNS上の心得とは、どんな人と繋がりを持ちたいか、自分の発信したいことが何なのかを考え、責任を持って発言することに尽きます。家族や職場以外の人と交流を深めることで孤独をそこそこ解消できますし、自尊心もほどほどに満たせます。

それでも孤独から逃れられないなら、補完のために新たに匿名でSNSに登録するか――否、それならばスマホやPCをオフにして、気の置けない仲間と飲み会で愚痴を言い合ったり、家族と話す時間を大切にするほうが建設的です。SNSとリアルな生活とのバランスを保つことこそ大事じゃないかなと……。

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高橋暁子(たかはし・あきこ)
ITジャーナリスト
情報リテラシーアドバイザー、元小学校教員。書籍、雑誌、webメディアなどの記事の執筆、コンサルタント、講演などを手がける。著書に『ソーシャルメディア中毒』『できるゼロからはじめるLINE超入門』ほか多数。All About ガイドでもある。
 

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(ITジャーナリスト 高橋 暁子 構成=篠原克周 撮影=初沢亜利 写真=PIXTA)