オリーブの生産が全国で活発になってきた。香川県の小豆島での栽培を発祥に、現在、耕作放棄地や景観対策として東北から九州にまで栽培が広がる。今年に入り初の全国サミットやオイル品評会が相次ぎ開かれ、国産振興の機運が高まる。オリーブオイルの品質は世界でも認められ始め、6次産業化で雇用創出なども期待できる。国内外を視野に各地で高品質オリーブオイル産地としての発展を目指している。(丸草慶人、柳沼志帆)

カキに並ぶ特産へ 広島県江田島市


 「県特産のカキに匹敵する産業にし、地域を元気にしたい」。瀬戸内海に浮かぶ江田島、能美島などで構成する広島県江田島市でオリーブの生産・加工・販売を手掛ける、江田島オリーブ(株)の沼田英士代表は、特産化に向けて意気込む。

 先進地の小豆島に職員を派遣して技術を学び、耕作放棄地の解消にオリーブの可能性を探った同社。搾油機を導入し、自社栽培の他、地元の農家から果実を買い取り、加工する。

 市も2010年度からオリーブの苗木購入費を助成し、産地化を後押しする。同市はかんきつ栽培が盛んだが、傾斜地が多く、高齢化で耕作放棄地が拡大してきた。かんきつに比べて手間が少なく、6次産業化が期待できると着目したのがオリーブだ。

 苗木代の8割を助成する他、荒廃した園地にオリーブを植栽すれば、抜根、整地など再生に必要な機器のリース料や人件費を補助。市主体で山を切り開き、6・6ヘクタールの園地も造成した。栽培面積は27ヘクタールに広がり、そのうち約15ヘクタールが耕作放棄地の再生園だ。18年産は5・2トンを収穫。成木化する19年産は10トンを目標にする。

 同市産オリーブは品種別に選別し、1キロ850円で同社が買い取る。15年にオイルを100ミリリットル5400円で商品化した。また、同市と同県呉市の自社農園で無農薬栽培したオリーブオイルは、100ミリリットル1万800円で売り出している。搾油を見学したり、オリーブオイルを使った料理を楽しんだりできる「江田島オリーブファクトリー」も開店し、オリーブで地元に50人の雇用を生んだ。

 同市オリーブ振興室の小澤辰雄室長は「量がなければ市場では相手にされない。生産量を増やすため、地道に指導を続けていきたい」と強調。将来的には約200トンの収穫を目指す考えだ。

オイルの品質に磨き 品評会、組織続々と設立


 日本産オリーブオイルの品質向上へ向けた動きも活発だ。香川県が主催し、3月16日に表彰式が行われた日本初の「日本オリーブオイル品評会」。香川県の他、神奈川、静岡、岡山、広島、福岡、長崎、熊本の計8県の44社から81製品の出品があり、産地の多さを裏付けた。

 開催の背景にあるのは、国産オリーブオイルの評価が国際的に高まっていることだ。昨年イタリアで開かれた品評会で、初めて日本産の特別枠が設置された。香川県は品質を底上げするため、小型採油機の導入にかかる経費を3分の1補助する事業を5年前に始め、同品評会で賞を独占した。

 また、同県は昨年12月、県農業試験場小豆オリーブ研究所で取り組む「オリーブオイル評価パネル」が、国際的な評価機関として認定を受けた。パネルとは、食味などを官能評価する評価員のチームのこと。国際的に有効な証明書が発行できる、国内唯一の評価機関となった。今後、海外市場と遜色ない高品質なオイル製品としての信頼が高まる他、生産者の技術向上が期待されている。

 2月23日には小豆島で「全国オリーブサミット」が開かれた。共同宣言に「日本オリーブ自治体協会」(仮)の設立を目指すことや、海外からの信頼性をより高めるため、国に対する国際オリーブ協議会(IOC)加入の要請、IOC基準と整合性の取れたJAS規格制定の活動支援などを盛り込んだ。

 小豆オリーブ研究所の窪田健康所長は「他と違う味の訴え方が評価につながってきた。採油技術の向上と最初から国際基準を目指せる環境が強みだ」と指摘する。全国各地での産地化については「地質条件や気象条件に応じた技術開発が必要となる」と強調する。