サッカーファンの気質は一頃に比べ大きく変わった気がする。代表チームを応援するために海外まで駆けつけるファンの数は、それこそかつての10分の1にも満たない状況にある。

 ロシアW杯の期間中にも触れたことだが、ロシアと日本は、W杯開催国としては2002年W杯を共催した韓国に次ぐ近さで、2018年ロシアW杯は、まさに行き時だった。実際にロシアに行ってみて、そう強く実感したわけだが、現地を訪れた日本人サポは出場した32チーム中、お尻から数えたほうが断然早いと思われるほど少なかった。ロシアで4試合戦った日本代表だが、ファンの数で勝っていたのはセネガル戦ぐらいだった。

 その傾向はUAEで開催されたアジアカップでも、さらに顕著な形となって現れた。日本はどの試合もサポの数で劣っていた。圧倒的に少ない試合もいくつかあった。優勝候補らしからぬ、冷めた姿を露呈させた。このアンバランスな関係が、スタジアムで異彩を放っていたという感じだった。

 スタンドを埋めた日本のファンの内訳は、大きく分けてUAE及びその周辺国で暮らす人たちと自国から遠路、駆けつけた人の2種類になる。他の国のファンがどんな構成だったか正確には分からないが、ベトナムのような国は現地で暮らす人が大半を占めているようだった。

 日本も決勝戦(対カタール)だけはそれなりの数が集まったが、その中心は、UAE及び周辺国諸国に暮らす人で、日本から駆けつけたファンはせいぜい100人程度だったと思われる。

 その1ヶ月前、UAEではクラブW杯が開催され、日本から鹿島アントラーズが出場した。緒戦でグアダラハラ、準決勝でレアル・マドリー、3位決定戦でリバープレートと対戦。4位に終わったが、日本から駆けつけたサポーターは日本代表の数に大きく勝っていた。

 アジアカップとクラブW杯の違いは対戦チームにある。アジアカップでは準決勝を戦ったイランが最も強敵であり、魅力的なチームになるが、クラブW杯の場合はこれがレアル・マドリーになる。試合に敗れる可能性は高いが、相手チームはサッカーファンなら1度はナマで見たい豪華メンバーの集団で、観戦のモチベーションは高くなる。

 クラブW杯準決勝、鹿島対レアル・マドリーと、アジアカップ準決勝、日本対イラン戦、現地で生観戦したいのはどっち? と問えば、鹿島対レアル・マドリーと言い出す人の方が圧倒的多数を示すだろう。

 しかし、日本代表戦は相手がいいチームでも、出かけていかなくなっている。ロシアW杯に話は戻るが、その決勝トーナメント1回戦で戦ったベルギーは、クラブレベルではレアル・マドリーやバルセロナには及ばずとも、その下のパリサンジェルマン、リバプール級のチームだった。

 実際、試合内容も抜群によかった。レベルもエンタメ性も上々。ドーハやジョホールバルを超える、日本サッカー史に燦然と輝く大接戦だった。ところが、この一戦が行われたロストフの現場に、日本人サポは何人もいなかった。それらしき人が占める割合は、客席の数パーセントを占めるのみだった。

 1993年のドーハには、もっと多くのサポが駆けつけていた。1997年のジョホールバルは、スタンド丸ごと日本人サポにジャックされた中で行われた試合だった。それから20数年後、代表を応援する熱は大きく低下たように見える。

 ピークはW杯で言えば初出場した98年フランス大会。06年ドイツ大会も多くの日本人ファンが現地を訪れたが、それ以降10年南アW杯、14年ブラジルW杯、18年ロシアW杯を経る中で、その数は右肩下がりの一途を辿った。そして先のアジアカップだ。代表チームを現地まで応援に出かける観戦文化そのものが、失われてしまったように見える。ネットやテレビで視聴できれば、それでオッケーと言うことなのだろうか。