環太平洋連携協定(TPP)発効後の1月の牛肉輸入量が前年同月を4割上回る5万574トンとなったことが、27日発表の財務省の貿易統計で分かった。オーストラリアやカナダなどTPP参加国からの輸入量は前年同月より6割近く(約1万トン)増えた。関税削減を受け、冷凍・冷蔵がともに増えた。国内で安価な輸入肉が市場を拡大している。

 1月は全体で前年同月(3万5631トン)を42%上回り、1月単月では過去10年で最も多くなった。東京都内の輸入業者は「1月の不需要期で5万トン台は異例の多さ」と指摘する。

 TPP参加国のうち、オーストラリア、ニュージーランド(NZ)、メキシコ、カナダから輸入された。この4カ国からは56%増の3万2953トン。このうち冷蔵品は18%増の1万279トン、冷凍品は82%増の2万2674トンとなった。

 カナダとNZは冷凍、冷蔵ともに、関税が38・5%から27・5%に下がったことが影響。それぞれカナダが5倍の2715トン、NZが3倍の2319トンと急増した。輸入業者は「これまで出回りが少なかった新しい産地をスーパーなどに提案している」と話す。

 経済連携協定(EPA)を締結しているオーストラリア産の関税は、冷蔵品で小幅に下がった。同国産全体は40%増の2万6737トン。同様に、EPA締結国のメキシコ産は44%増の1182トンだった。

 「12月の通関を抑え、関税が下がった1月にまとめて通関した」(輸入商社)との動きもあるが、4カ国からの12月の輸入量は2万8106トンで、前年同月比1%減にとどまる。12月の減り幅に対し、1月の増え幅の大きさが際立った。

 米国産も増え、21%増の1万7547トン。日本国内の在庫が多かった冷蔵品が5%減の9395トン。一方、冷凍品は76%増の8152トンだった。

2月依然多く


 TPP参加国からの牛肉輸入は2月も引き続き増えている。同省は同日、TPP参加国からの2月中旬の牛肉輸入量を発表。2月1〜20日で1万6439トンと、前年同月1カ月分の74%を占めた。1月に比べ増え幅は縮小しているが、都内の輸入業者は「カナダ産などは前年を超える水準で輸入される」とみる。EPAを発効したEUからの輸入量は94トン。前年2月は7トンだった。

 現状、国産牛枝肉価格への影響は出ていない。だが、輸入増加で、国内自給率の低下が懸念される。2018年度(18年4月〜19年1月)の牛肉輸入量は前年度同期より10%多い。17年度の国内の牛肉自給率(重量ベース)は36%だが、18年度は輸入増でさらに低下する見込みだ。

ブドウ 2・5倍に急増


 生鮮果実で増加が顕著だったのはブドウだ。TPP参加国で主要な輸入先のチリなどで商社の手当てが強まり、前年比2・5倍の1636トンとなった。国別では輸入量の8割を占めるチリ産が2・7倍の1369トンと急増した。

 輸入業者は「TPP発効で、より値頃感を打ち出せると踏んで仕入れが活発化した」と明かす。近年、食べやすさから定番化する小売店が増えており、輸入攻勢はしばらく続きそうだ。

 メキシコが主要輸入先のアボカドは12%増の5656トン。TPP発効以前に、メキシコとの経済連携協定の締結で関税は撤廃されている。メキシコによる販促プロモーションが積極的で、輸入量が前年を上回った。

 全体の7割を占めるバナナは7%増の7万5842トン。特売需要などで安定した輸入量を維持した。グレープフルーツは25%増の6669トン。「主力の米国産が減るとの予測からイスラエルなど他国からの手当てが増えた」(同)という。

 2月以降の輸入について、輸入商社は「TPPの影響は限定的だが、ブドウは前年を上回る輸入が続く」と見通す。