2018年11月の農林水産物・食品の輸出額は852億円で、前年同月比9%(71億円)増だったことが農水省のまとめで分かった。農産物では年間を通じて需要がある牛肉、出荷シーズンに入った柿などで販売額が前年を超えた。9カ月連続で前年を上回り、年間で9000億円に達する勢い。政府が掲げる19年に輸出額1兆円という目標達成は現実味を帯びつつあるが、輸出額の伸びが農家所得の向上に結び付いているか検証も欠かせない。

 農産物の輸出額は522億円で、前年同月比12%増だった。

 品目別では、牛肉が27億円で39%増。最大の輸出先のカンボジアが8億円に上り、前年の2倍に増えた影響が大きい。昨年9月に輸入を解禁した台湾は3億円で、全体の1割以上を占める主要販売先国になっていることも追い風となった。

 出荷シーズンを迎えた柿は29%増の1億円。年明けにかけて本格的な出荷が始まるイチゴも36%増の1億円だった。

 林産物は34億円で20%増、水産物は295億円で4%増だった。1〜11月の累計は8193億円で前年同期比15%増。国・地域別で見ると、1位は香港で15%増の1916億円。2位は中国で35%増の1204億円、3位は米国で6%増の1070億円と続く。

 政府目標の「19年に農林水産物・食品の輸出額1兆円」の実現には、今後2年で前年比11・3%以上の伸びを連続して確保する必要がある。18年年1月から11月までの累計では、この伸び率を上回っており、12月も前年超えとなれば、年間輸出額9000億円の大台に乗りそうだ。政府内では「1兆円達成は完全に視野に入った」(菅義偉官房長官)との見方が出ているが、輸出額の積み増しによって、農家所得がどこまで伸びたかの説明も求められる。