供給確保に危機感 作付け増呼び掛け


 国産小豆が足りない──。国内シェアの9割を占める主産地・北海道が、供給量の確保に危機感を募らせている。JAグループ北海道の呼び掛けもあり2018年産の栽培面積は増えたが、天候不順で生産量は伸び悩む。一方、需要は旺盛で、22年4月からの加工食品に対する「原料原産地表示」の義務化などを背景に国産に転換する動きも想定される。産地に追い風が吹く中、JAグループは道産を生産拡大する「正念場」と位置付け、作付面積2割増を目標に増産を呼び掛ける。(望月悠希)

 道内の18年産小豆の作付面積は、1万9100ヘクタールで前年比7%増えた。しかし、6月〜7月上旬に低温や日照不足、長雨が発生し、ホクレンによると10アール収量は3・6俵(1俵60キロ)と平年の8、9割にとどまった。

 16年にもトップ産地の十勝地方などを襲った台風で川が氾濫し、畑が流されるなど不作となった。栽培面積が減っていたこともあり、在庫が大幅に減少。ここ数年、需給が逼迫(ひっぱく)するようになっている。十勝地方では台風被害後、作付面積を伸ばし、18年は1万3300ヘクタールとなっただけに、ホクレン帯広支所は「作付けがせっかく伸びているところだったので、昨年の天候不順は残念」(米麦農産課)と話す。

 和菓子などを製造する札幌市のメーカー・サザエ食品は、「小豆は台風があった16年から足りない状態が続いている」と強調する。同社は小豆を全て十勝地方で調達する。人気商品のおはぎやお焼き、たい焼きなどに使っており、小豆を使った商品は売り上げの約4割を占める。「十勝産は品質が高く、創業以来使っている。産地を変えることはできない。調達コストが上がると、値上げも検討せざるを得ない」と話す。

 量を確保できないと、需要を逃し、輸入品に奪われる恐れもある。農水省によると、国内の小豆の消費はカナダや中国などの外国産が約3分の1を占める。中国からは安価な加糖調製あんも輸入される。

 一方、22年4月から加工食品の原料原産地表示の義務化が本格的に始まる。それを見据えて、これまで輸入の加糖調製あんを使っていたメーカーが国産を求める可能性もある。ホクレンは「メーカーから道産を使いたいという声は強まっている。量が確保できないとチャンスを逃しかねない」(雑穀課)と危機感を抱く。

 JA北海道中央会・連合会や産地JAなどでつくる北海道農協畑作・青果対策本部は、輸入品に対抗するためにも「生産振興はここ2、3年が大きなヤマ場」とみる。19年の作付指標面積では、現状の2割増を打ち出している。

 十勝地方では5、6年前から安定生産に向けて契約栽培を進めており、現在は3割ほどに高まっている。ホクレン帯広支所は増産を呼び掛けるちらしも作り、配布する。

 畑作が盛んなオホーツク地方でも増産の動きが高まっている。18年の作付面積は1420ヘクタールで前年比18%増えた。大空町では、オホーツク農協連が運営する大型施設「オホーツクビーンズファクトリー」が完成。同地方の豆類の集約や調製、貯蔵を一手に担いコスト削減も狙う。同町で小豆1・9ヘクタールなどを生産する旭利正さん(43)は「ここ3年くらい小豆の栽培をやめる人が多かったが、再び増えてきた。小豆を含め、オホーツクの豆類を十勝に並ぶブランドにしたい」と意気込む。ホクレンは全国和菓子協会と連携したイベントを開くなど、実需と生産者の交流も進める。