今年1月の放送スタート直後から“明るいエヴァ”と評判になり、2019年の放送継続も決定したTVアニメ『新幹線変形ロボ シンカリオン』。「E5系はやぶさ」や「E6系こまち」など実在する新幹線が巨大ロボに変形して戦う、王道ロボットアニメだ。

「大人と子どもがともに未来を守る時代になった」(第2話より)というテーマは、子ども向けアニメの枠を超えて、幅広い世代に響く。

公式にJR各社の許諾を得て新幹線をモチーフにしているアニメは、『シンカリオン』が初めて。「鉄道は街だけでなく、人と人、時代と時代を繋いでいる」という愛のあるセリフをはじめ、丁寧な鉄道のディテール描写にリスペクトが感じられ、鉄道ファンの心も掴んでいる。ライブドアニュースでは、その本質に迫るべく『シンカリオン』特集をお届けする。

第2弾は、シンカリオンというキャラクターを生み出した仕掛人が登場。原案の立ち上げから関わっているジェイアール東日本企画と、小学館集英社プロダクション、タカラトミーのプロデューサー陣がそろい、約5年の道のりを振り返る。

撮影/須田卓馬 取材・文/千葉玲子 制作/アンファン

「シンカリオン」特集一覧

鈴木寿広(すずき・としひろ)
ジェイアール東日本企画、コンテンツビジネス局コンテンツ第二部に所属。部長代理。映画・TVアニメの企画や関連ビジネス展開、新規オリジナルキャラクターの開発等コンテンツビジネス全般に取り組む。TVアニメ・劇場版『ポケットモンスター』やTVアニメ『ゴールデンカムイ』などにも携わった。
根岸智也(ねぎし・ともや)
小学館集英社プロダクション メディア事業局クロスメディア事業部に所属。アニメ制作課チーフプロデューサー。制作に携わったアニメは『メジャー』、『ハヤテのごとく!!』、『バクマン。』、『境界のRINNE』、『斉木楠雄のΨ難』など多数。
長沼 豪(ながぬま・ごう)
タカラトミー ベーシック事業部 プラレール企画部に所属。2016年にタカラトミー入社後、プラレール企画部に配属。同年9月より『新幹線変形ロボ シンカリオン』のマーケティングを担当。

新幹線をキャラクター化することのハードルは高かった

そもそも「新幹線がロボットに変形して戦う」というアイディアはどこから?
鈴木 発端は2013年か2014年頃でしょうか。ジェイアール東日本企画(以下「jeki」)が携わっていた『のりスタ』という朝の子ども向け番組で、新幹線の走行シーンだけを流すコーナーがあったんです。そのコーナーの視聴率が非常に良かったので、新幹線だけにフィーチャーした企画を立ち上げてみては、という声があがりました。

『のりスタ』を制作していた小学館集英社プロダクション(以下「小プロ」)さんから、「新幹線をロボットに変形させる」というアイディアをご提案いただいて。ラフ絵を見たみんなが、「カッコいいじゃん!」となったところから始まったんです。
根岸 この段階ではまだ『シンカリオン』という名称はなく、『Project E5』という名前で一度世に出ているんです。
『シンカリオン』のプロトタイプにあたる『Project E5』。東北新幹線「E5系はやぶさ」をロボットに変形させたイメージ。
鈴木 いったんアイディアが形になったものの、その先が大変でした。JR各社の許諾を得る必要がありますが、ハードルが高く、しばらくプロジェクトに動きがない時期がありました。
JR各社さんのハードルとは?
鈴木 当たり前の話ですが、鉄道会社は、電車や新幹線を迅速・安全に運行することが使命であり、キャラクタービジネスやライセンスビジネスに慎重にならざるを得ないということがひとつ。それに、機能性なども含めた新幹線のデザインに確かなプライドと歴史がありますから、変形する、キャラクター化するという話は簡単ではありません。

『シンカリオン』以前に、JR各社やほかの私鉄が正式に許諾しているキャラクターは、一切ないんです。交渉には時間を要しましたね。
許諾がおりた決め手は?
鈴木 時間をかけて僕らのビジネスを理解してもらったこともあるとは思います……。人口が減少して、将来的には鉄道の集客も減っていくわけで……こうしたキャラクタービジネスが、将来の鉄道ファンを増やすことに繋がると思うんです。

でも一番は、小プロさんのキャラクターデザインがすごくカッコよかったことですね。最終的には、「じゃあカッコいいものを作ってください」と言っていただきました。
根岸 それと、タカラトミーさんがプロジェクトに加わったことは大きかったですよね。
鈴木 『Project E5』をビジネスにするには玩具メーカーさんに入っていただきたいということで、ご提案しまして。プラレールといえば絶大なブランド。それが味方になることで、ぐぐっと物事が進みました。
根岸 ただ、『Project E5』はカッコいいけれど大人向けのデザインで、オモチャには最適ではなかった。それでタカラトミーさんと一緒にデザインを考えましょう、という流れになって。
長沼 全体的に、新幹線らしさがある程度残るフォルムに近づけて、子どもに受け入れられるように改良を加えていったんですよね。
根岸 スゴい数のパターンを出したんですよ。そこから選抜したデザイン案をお子さんに見てもらう機会も設けました。小プロではキッズ教育などの事業も行っているので、授業が終わった教室でお子さんたちに協力してもらい、「1番〜8番で、どれがカッコいいと思う?」って投票してもらって。

ぜんぜん違う場所にいる男の子や女の子が見たときに、どんなロボットが一番好まれるのか。試行錯誤したうえで現在のデザインがあるので、けっこう自信があったんです。
採用されたデザインの一番のポイントは?
長沼 胸に「新幹線の顔」がついていることです。ひと目でどの新幹線かわかります。
タカラトミーより発売中の『DXS01 シンカリオン E5はやぶさ』。

「この路線では、右手側に海は見えない」リアリティの追求

シリーズ第1弾の「E5はやぶさ」が発表されたのは、2015年でした。
鈴木 北陸新幹線が開業したタイミングで、『シンカリオン』もデビューしたんですよ。
就学前のお子さんを中心に、タカラトミーのヒット商品になりましたよね。最初から、ハイクオリティなアニメーション映像が店頭やWEBサイトで見られたことも大きかったかと思います。
根岸 敵が現れて新幹線がロボットに変形するという、1分半ほどのシンプルな映像なんですが、最初はE5系はやぶさで、次がE6系こまちで……と、各機体のデビューに合わせて制作しました。

戦略として大事にしていたのは、キャラクターありき、ということ。まずは新幹線が変形したシンカリオンというキャラクターが存在していて、それがプラレールのオモチャになったり、雑誌『てれびくん』で漫画連載されたり、着ぐるみとして鉄道博物館にやってきたりする。

アニメーション映像はその要でした。あくまでも、「プラレールのためだけに生まれた『シンカリオン』」ではないんです。
後にTVアニメ化を提案したTBSの那須田(淳)プロデューサーも、この映像で興味を持ったんですよね。映像制作にあたり、JR各社の監修などは大変だったのでしょうか……?
鈴木 そこはしっかりと切り分けされていて、「リアルとバーチャルで分けましょう」と。新幹線の姿で走行しているシーンはきちんと監修するけれども、ロボットになったところからはお任せします、というのが基本スタンスなんです。

ただ、最初はなかなか掴めなかったですね。映像を見ていただかないとわからない部分も多くて。
根岸 背景を作っていて、「この新幹線が走っている路線では、右側に海があることはありえないです」と教えてもらったこともありましたよね。
鈴木 ありましたね!
根岸 そういうリアリティは面白いなと思いました。
鈴木 最初は架線がないことも指摘されましたよね。新幹線としてレールを走行しながらロボットに変形し始めるんですが、映像では架線があると変形できないので、描いていなかったんです。それはNGだと。
根岸 だから「超進化速度に突入する」っていう設定になったんですよね。異空間に入る=バーチャルっていう。

仕掛人はエヴァ世代。面白いロボットアニメを作りたかった

みなさんご自身は、もともとロボットアニメへの情熱をお持ちだったのですか?
鈴木 ロボットは好きでしたね。アニメーションの仕事に携わる以上は、いつかロボットアニメに参加したいと思っていました。僕自身、ガンダム世代だし、エヴァンゲリオン世代だし、そういった作品を観て育ってきたので、そこがひとつのベンチマークになっています。
根岸 僕もちょうどエヴァ世代ですね。
鈴木さんと根岸さんは同世代なんですね。長沼さんもアニメなどがお好きだったのですか?
長沼 子どもの頃から、ウルトラマンや特撮ヒーローが好きでした。タカラトミーに入社後、プラレール企画部に配属になったときには、すでに『シンカリオン』は人気商品のひとつになっていました。これだけ売れているシリーズって、なかなかないんですよ。

しかも、プラレールは3〜6歳がメインターゲットですが、『シンカリオン』はもう少し年齢が上のお子さんにも響くコンテンツ。部署としてもターゲット拡大を視野に入れて注力しているので、すごく興味があって。運良く担当できると決まったときはうれしかったですね!
根岸さんはいかがですか?
根岸 僕は今、アニメの仕事を始めて10年くらいなんですが、以前もロボットアニメと言える作品に挑戦したことがあって。2014年放送の『テンカイナイト』というアニメなんですけど。そのときに、良かった部分もたくさんあったけど、「ここはやり切れなかったな」って思いもたくさん残ったんです。

なので、「いつか、この経験を生かして面白いロボットアニメを作りたい」と思っていたんですよ。その思いを、今、シンカリオンに注いでいます。これが終わったら、もう辞めてもいい!
一同 (笑)。
根岸 冗談です!(笑)それくらい『シンカリオン』に思い入れがあります。その『テンカイナイト』でお世話になった盟友のような演出家が、池添(隆博)監督なんですよ。『テンカイナイト』を通して、いい出会いがいっぱいありました。

あとは結局、こだわり切れるかどうか、なんですよね。そのためにどれだけ時間をかけられるか。しっかり企画を立てて、時間をかけて作ることが重要だと思いました。

アニメとドラマ、両方の作り方が一体化している作品

2015年にE5はやぶさがデビューしてから、こまち、かがやき……と各地の機体が順番にお披露目されました。2017年にTVアニメ化が発表されるまでには、どんな仕掛けを?
根岸 僕の中では、毎年ひとつ、やりたいことがありました。まず1年目は、着ぐるみを作ること。最初はみなさんにあまりいい顔をされなかったんですけど(笑)。今はイベントなどで活躍しているので、作って良かったですね。
翌年は?
根岸 2年目は、テーマソングを作ること。『チェンジ!シンカリオン』という曲を山寺宏一さんに歌っていただきました。

そして3年目は、まさにストーリーがあるアニメーションを作りたいなと思っていたら、TBSさんからTVアニメ化のお話をいただいて。
長沼 2016年の『カミワザ・ワンダ』、2017年の『トミカハイパーレスキュー ドライブヘッド 機動救急警察』と、土曜朝の『アニメサタデー630』の枠で、TBSさんとタカラトミーのタッグが続いていました。その流れの中で、那須田プロデューサーから『シンカリオン』をやりたいと言っていただいて。
念願のTVアニメ化が決まったわけですね。
根岸 『シンカリオン』を“嫁に出す”感じですかね(笑)。
一同 (笑)。
鈴木 いつかアニメ化したいね、とみんなで言っていましたが、具体的なタイミングまでは見えていなかったので、急にチャンスが降ってきたような感じでした。
第1話より。主人公の速杉ハヤト。
第2話より。シンカリオン E5はやぶさ。
第2話より。栃木県片岡に出現した巨大怪物体「レイルローダー」。
アニメーション制作については、スタッフの座組も含めて小プロさんが全般を引き受けていらっしゃるんですよね。
根岸 そうですね。アニメ制作スタジオや、監督、脚本をどなたにお願いするかは、僕から提案させていただきました。シリーズ構成の下山(健人)さんも、TVアニメ化が実現する前から参加してもらっていました。

もともと、『シンカリオン』のストーリーアニメを作りたくて脚本家を探していたとき、「鉄道にくわしいライターさんいませんか?」と知り合いに相談したら、下山さんを紹介してくれて。しかも彼は筆力も対応力もあるし、特撮ヒーロー物も書いている。いろいろと僕らにない知恵を授けてくれました。

今となっては、彼がいてくれて本当に良かったです。『シンカリオン』においては、下山さんが“接着剤”になってくれているんです。
“接着剤”とは?
根岸 アニメの作り方とドラマの作り方をつないでくれているんです。これは、『シンカリオン』が面白いと言ってもらえる作品になったキーポイントのひとつだと僕は思っているんですが、“変わった”作り方をしていると思っています。
ほかのアニメとどう違うのでしょうか?
根岸 アニメ制作の基本は、工場生産に似たところがあるというか、それぞれのラインが同時進行で作ったものの集合体です。まずはゴールを設定して、いつまでに何が必要かを分担して作り始めます。

「シリーズ構成」というのは、そのゴールを見出すためにあるんですよ。ゴールから逆算して、区間を決めて、このタイミングでこういうキャラが必要とか、このロボットを2クール目で追加したいとか、組み立てていくんです。

けど、今回のアニメのプロデューサーであるTBSの那須田さんは、主にTVドラマを担当されていた実写の方ですよね(TVドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』や『重版出来!』、映画『ハナミズキ』や『ビリギャル』などを手掛けた)。あまり先々のことをカッチリ決めずに、シナリオの流れや視聴者の反応を受けて作っていく。
そうなんですね。
根岸 面白さを乗積していく、という考え方をなさっているんだと思います。たとえば、「このキャラが面白いからもっと立ててみよう」とか。そういうシナリオの予定じゃなかったけど、「ネットでザワッとしたからこの流れを生かしてみよう」とか。

最初はそこでぶつかり合いがあったんですが、あるタイミングから、『シンカリオン』では、アニメの作り方とドラマの作り方が一体化したんですよ。
その接着剤になったのが下山さん、ということですか……?
根岸 そうです。下山さんは、アニメを書きながら特撮も書いている人。特撮ってドラマじゃないですか。彼は那須田さんが言っていることもわかるし、僕も含めたアニメ制作陣の論法もわかる。

わかるがゆえに、どういう落としどころがいいのか、初期は彼の中にも迷いがあったんじゃないかと思いますけれどね。いろいろと試行錯誤したんですが、那須田さんから発せられるメッセージ性の強さはみんな理解してくれていたから、結局、アニメのスタッフに、いったん脳のスイッチをオフにしてもらったんです。

アニメの論法だけで考えるのはやめよう、って。今までの方法論でやろうとしてもこの作品はできないから、いったん、できるところまで、ドラマの論法に近づけた特殊なアニメとして考えてみよう、って。
スイッチをオフに。
根岸 もちろんこれは、いい意味で、ですよ?

アニメだ、ドラマだってお互い言い続けていたら進まないけど、これは『シンカリオン』だから、ってなったわけです。那須田さんがリーダーで、下山さんが接着剤になってくれて、『シンカリオン』はこれでやろうぜ、って。

だから僕、ホントはものすごくアニメを作るのが好きなので、自分でプロデューサーとして前に出てやりたいんですけど、一歩引いたんですよ。

『シンカリオン』を、那須田さんに嫁に出しましょうって。だからそこからは、那須田さんと池添監督と下山さんの3人がストーリーの軸を作っていきました。
第4話より、速杉ホクト(左)、出水シンペイ(中央)、三原フタバ(右)。
第6話より、男鹿アキタ(左)、ハヤト(中央)、大門山ツラヌキ(右)。
第17話より、シャショット(左)、ハヤト(右)。

起爆剤となった『初音ミク』や『エヴァンゲリオン』とのコラボ

TVアニメがヒットした起爆剤として、『初音ミク』や『エヴァンゲリオン』とのコラボも話題になりました。
根岸 先程スイッチをオフにと言いましたが、もちろんすべてのスイッチをオフにしたわけではなくて。全日帯という重要な枠でのアニメ化が決まって、TBSさんからは、幅広い層に観てもらって世帯視聴率を獲得したいという強いメッセージをいただいていました。『シンカリオン』を広めるために、僕にできることは何があるか、考えた結果ですね。

『初音ミク』や『エヴァンゲリオン』とのコラボは、僕らのほうから提案させていただきました。北海道新幹線の運転士は女の子にしようと決まっていたので、「う〜〜ん(考え込んでから閃く動作で)、初音ミク!」みたいな(笑)。それで「発音ミク」というキャラクターが生まれました。
第15話より。TVアニメ『新幹線変形ロボ シンカリオン』の作中では、「発音ミク」として登場。
©プロジェクト シンカリオン・JR-HECWK/超進化研究所・TBS ©Crypton Future Media, INC.
鈴木 『エヴァンゲリオン』とのコラボについては、もともと、タカラトミーさんがプラレールで実現されていましたからね。エヴァンゲリオンでラッピングされたJR西日本の500系新幹線『500 TYPE EVA』が走行を開始したのは2015年。そのときから、「いつかこれ、『シンカリオン』にならないかな?」と話していたんですよ。
長沼 まず2016年にプラレールで『500 TYPE EVA』を発売させていただいて。続いて2017年の10月に、『シンカリオン』シリーズのほうでも、『シンカリオン 500 TYPE EVA』が実現しました。
根岸 そして、僕からグラウンドワークスさんへコラボ企画を打診したのが、2017年の終わり頃でした。
※編注:グラウンドワークスは『エヴァンゲリオン』のライセンスを管理している会社。企業とのコラボや販促活動などのライセンスの窓口であり、オフィシャルショップ『EVANGELION STORE』の運営にも携わっている。
JR西日本の500系新幹線『500 TYPE EVA』。
©カラー
タカラトミーより発売された『シンカリオン 500 TYPE EVA』。
TVアニメ同士が全面的にコラボすることはなかなかないと思いますが、オファーへの反応はどうだったのでしょうか?
根岸 それがもう、快諾いただいたんですよ。普通ありえないですよね。だから最初はダメもとで行ったら、「お待ちしてましたよ!! やりましょう」という雰囲気で受け入れてくださって。内心驚きました(笑)。
第17話では先行して500系新幹線『500 TYPE EVA』の走行シーンが描かれ、第31話エヴァコラボ回の予告編では、葛城ミサト(声/三石琴乃)の「サービス、サービス」が聞けました。第31話本編では、『残酷な天使のテーゼ』が流れ、洞木ヒカリ、コダマ、ノゾミ(声/岩男潤子)の3姉妹が登場したり、使徒をオマージュした「キングシトエル」という巨大怪物体が現れたり、細かなセリフやテロップに至るまで、非常に手が込んでいました。
第31話より、碇 シンジ。
©プロジェクト シンカリオン・JR-HECWK/超進化研究所・TBS ©カラー
第31話より、シンカリオン E5はやぶさ(左)とシンカリオン 500 TYPE EVA(右)。
©プロジェクト シンカリオン・JR-HECWK/超進化研究所・TBS ©カラー
第31話より、静岡県熱海駅付近に出現した巨大怪物体「キングシトエル」。
©プロジェクト シンカリオン・JR-HECWK/超進化研究所・TBS ©カラー
根岸 こういう企画で大事なことは、やはり原作へのリスペクトですよね。第31話のシナリオを担当した大知慶一郎さんも『エヴァンゲリオン』を通ってきた世代だから、しっかりエッセンスを盛り込んでくださいました。

何より、グラウンドワークスの神村(靖宏)さんが、実制作もプロモーションも含めて一緒になって参加してくださって、本当に感謝しています。洞木3姉妹は名前が新幹線と同じという設定にしても、キングシトエルのアイディアにしても、神村さんとの会話の中で生まれたストーリーの種を、制作スタッフに渡すことができたと思います。
鉄道好きで知られる庵野秀明監督からのコメントもありました。エヴァコラボ回への言及だけでなく、『シンカリオン』本編をご覧になっての、作品そのものへのメッセージだったことが印象的です。
根岸 そうなんです。コラボ企画を実現できることになったので、次のステップとしては大きく話題にしたい。そこで庵野監督へコメントをお願いできないかとご相談したところ、神村さんが素敵なコメントを引き出してくださって。

尊敬する庵野監督が『シンカリオン』を観てくださったということが、すごくうれしかったですね。
−保線から始まる第1話の描写に、心がシビれました。
 男の子の善き夢が詰まった子ども向けアニメとして、素晴らしいと思います。
 最終話まで遅延なく、無事故で走行しきって下さい。楽しみにしています。
 500系エヴァ新幹線の活躍も、是非!

 追伸
 車両同士の連結カットは、鉄心としてアップでじっくり、観たかったです。

(「シンカリオン」公式サイトのニュースページより)
第31話より、惣流・アスカ・ラングレー(左)と綾波レイ(右)。
©プロジェクト シンカリオン・JR-HECWK/超進化研究所・TBS ©カラー
第31話より、ATフィールドを展開するキングシトエル(左)とシンカリオン E5はやぶさ(右)。
©プロジェクト シンカリオン・JR-HECWK/超進化研究所・TBS ©カラー

一過性ではない、息の長いキャラクターとして継続したい

SNSで毎週トレンドに上がっていますが、反響はどう受け止めていますか?
鈴木 作品づくりに反映されるかはまた別の話だと思うのですが、トレンドの上がり方は気にしていますね。今週は何時間くらい話題をキープしていたか、どのネタが注目されたか。逆に、トレンドから下がったときは何が足りなかったのかな、と。
根岸 SNSの反応をチェックして意見を取り入れる、ということではなく、「あ、ここでこのキャラクターに注目してもらえている」、「僕らが考えてきたことは間違ってなかったな」って、そういう“確かめ算”みたいなところがあると思います。
鈴木 ただ、間違えちゃいけないのは、SNSを使うのは大人ですよね。『新幹線変形ロボ シンカリオン』は大人だけじゃなく子どもたちに向けて作っています。SNSで発信できる人たちの声ばかり気にしてはいけないな、と。
子どもが観ても大人が観ても面白い、親子で一緒に楽しめる、そういう稀有な作品ですしね。
根岸 アニメーションって、TVアニメになると急に「子ども向けだから大人は観ない」みたいなことになるのが残念だなぁと常々思っていて。たとえばジブリやディズニーは、子どもも大人も楽しんでいますよね。TVアニメでもそういうことができたらいいなと思っていたんです。

そのためには、大人が楽しめる視点も必要です。登場人物の心情にしても、コラボ企画のようなお祭りにしても。でもそのベースには、子どもが熱中できるカッコよさや面白さがちゃんとある。その両方がハイブリッドされた作品を目指そうと、スタッフみんな意識を共有してやってきたと思うんです。

だから、大人も『シンカリオン』が好きとか、親子で楽しんでいると言ってもらえることは、ちゃんと努力が結実しているようでうれしいですね。こうして取材してもらえることも、その“確かめ算”になっているんだと思います。
長沼 オモチャのほうも、「変形ロボット」としても遊んでもらえる『シンカリオン』はハイブリッドな存在。程良い難しさを狙って作っているところもあるんです。3、4歳のお子さんにとっては、最初は自分で変形できないからお父さんお母さんに助けてもらいながら組み立てる。何度も繰り返すうちに、ひとりで変形できるようになる。

そうやって成長を感じながら、親子で一緒に楽しんでいただけたらうれしいです。
鈴木 新幹線は、当然、流行り廃りもなく、誰もが親しんでいるものですよね。その新幹線の力を信じてやってきたからこそ、『シンカリオン』を通じて子どもにも大人にも改めて新幹線の魅力を伝えることができていると思います。

でも、そのアドバンテージというか、新幹線という存在の強さを信じすぎてしまっているところがあって。立ち上げ当初から目指していることなのですが、『シンカリオン』を、一過性ではない、息の長いキャラクターとして根付かせていきたいと、気を引き締めています。

「シンカリオン」特集一覧

アニメ作品

TVアニメ『新幹線変形ロボ シンカリオン』
TBS系全国28局ネットにて、毎週土曜あさ7時より放送中
http://www.shinkalion.com/

©プロジェクト シンカリオン・JR-HECWK/超進化研究所・TBS
©TOMY
©Crypton Future Media, INC.
©カラー

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