2週連続の日曜日に、明らかに毒殺された猫の死骸が発見された。場所は神奈川・相模川の河川敷。11月18日に4体、25日に1体、計5匹の猫が何者かに命を奪われた。

【写真】猫の死骸の近くで見つかった、青い粉が混ぜられたエサ

涙ぐむ女の子

 18日午前8時ごろ、同所を散歩していた70代の女性が第一発見時の恐怖を語る。

「死んでいる、とは思いましたが、最初は毒が原因だとは思いませんでした。もう、気が動転してしまって……。

 そこから数十メートル離れた場所でもう1匹猫が死んでいて、すぐ近くに毒の混ざったようなエサが置いてあったので、警察に通報しました」

 付近の飼い主が猫を河川敷に捨てることも多いそうで、

「市では地域の野良猫を地域猫として、自治会で管理する取り組みを行っています。エサをあげる時間、トイレの設置などルールを設けています」

 と相模原市保健所・生活衛生課の笠原正則課長。猫と住民の関係が、前出の70代女性の証言からもわかる。

「4匹目に発見された猫は体が黒くて足元が白かったので“たびちゃん”と呼ばれて可愛がられていました。近所に住む女の子は“たびちゃんがかわいそう”って涙ぐんでいて……。私もショックです」

 と表情を曇らせる。

 3匹目の猫の死骸を最初に発見した50代の女性は、

「青い粉が混入したキャットフードが置いてあったので、これは事件だと思いました。毒を食べたとみられる猫は河川敷の茂みや公衆トイレの裏などで泡を吹いて死んでいました。死骸には嘔吐や脱糞した痕があり、苦しかったんだと思います。安らかに死んだんじゃありません!」

 と憤りを言葉に込めた。

 地域の人が朝のエサをやる前に、猫たちは相次いでやられた。計画性がうかがえる。

 猫の保護活動を行う『たんぽぽ あだぷしょんぱぁく』(相模原市)の獣医師は、

「猫や犬は、食べ物の色ではなく、匂いで判別します。“おいしい匂い”がすれば、反応して食べます」

 と説明。こう付け加える。

「口に入れたとき、刺激的な味がすれば吐き出す場合もあります。しかし犬や猫は、人間のように味わって咀嚼して飲み込まずに、勢いよく食べてしまうので、毒物も一緒に飲み込んでしまいます。食べるのを防ぐのは難しい」

 前出の『たんぽぽ〜』石丸雅代代表は、現場の様子を、

「毒が混入したエサはトレイに入れてあったり、直置きもあった。いつもエサをあげていた場所が、ピンポイントで狙われました」

 と犯人が地域の特性を熟知していることを示唆。

「毒の種類は特定されていませんが、即効性のある可能性は高いです」(石丸代表)

 ネズミやゴキブリなどの駆除を行う『ベイトータルサービスジャパン』の藤邑誠一郎取締役に聞いた。

「青い粉の殺鼠剤はあります。ホームセンターやインターネットで誰でも買える状況には疑問を持っています。動物だけでなく子どもも危険です。触るとかぶれたり、アレルギー反応が出る場合もあります」

 前出・石丸代表は、

「散歩中の犬が食べる危険性もあります。猫から人間へとエスカレートしたり、事件が注目され、犯行をまねる人間が出ないとも限らない」

 と模倣犯の出現を危惧する。

 近隣住民はこれまでにも類似事件があったことを明かす。

「昨年から相模川沿いではエサや飲み水に毒のようなものが混ぜられて猫が殺される事件が相次いでいる。今回の事件と同一犯かはわからないが世間が忘れたころにまた同じことが起きそうで怖い」

 さらに、事件後に現場の対岸にある広場でも青い粉が混ざったエサが発見されている。

 捜査関係者は、「猫の死因は捜査中」という。神奈川県警は、動物愛護法違反などの疑いで被疑者を追っている。

 河川敷には注意喚起の紙が貼られ、パトロールする警察官の姿も多い。平気で猫を殺せる人間がいると思うと、ぞっとしてしまう。