欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)が8日未明、参院本会議で自民、公明両党と日本維新の会などの賛成多数で可決、承認された。協定の実質審議は衆参両院合わせても9時間にとどまり、議論が深まらなかった。来年2月1日に発効する見通し。米国を除く11カ国による環太平洋連携協定の新協定(TPP11)も今月30日に発効する。大型の貿易協定が相次いで動きだし、日本農業はかつてない市場開放に直面する。

 農林水産物の82%の関税を撤廃。重要品目でも関税削減・撤廃や輸入枠を受け入れる。EUが強い関心を持つソフトチーズは最大3万1000トンの輸入枠を設け、段階的に枠を拡大しながら枠内関税を削減、撤廃。TPPを上回る譲歩となる。

 豚肉は差額関税制度を維持した上で、低価格帯の従量税、高価格帯の従価税を段階的に下げ、最終的に従量税1キロ当たり50円だけになる。米は除外した。ワインや菓子などは、EU産の高品質な産品との競合が予想される。政府は農林水産物の生産額が最大1100億円減少すると試算する。

 協定審議は衆参4時間半ずつで採決された。野党は協定の内容や農林水産物の影響試算を巡る議論が不十分だとして、審議時間の確保を求めた。会期末の10日までの承認を目指す与党側は、委員長の職権での委員会運営を続け、採決を急いだ。審議時間は関連法を含めても14時間半だった。

 日欧EPAは、双方が議会承認などの国内手続きを終え、互いに通知した日の翌々月の1日に発効する。ともに12月中に完了させる構えで、来年2月1日に発効する見通しだ。輸入農産物の関税率などは発効日に1年目の水準が適用され、2019年4月から2年目の水準になる。その後、毎年4月に切り替わる。

 協定承認案は衆院通過後、参院外交防衛委員会で6日に可決。外国人労働者受け入れ拡大のための出入国管理法改正案を巡る与野党対立が激化し、本会議での採決は8日未明となった。