来年1月にも交渉入りする日米物品貿易協定(TAG)で、米国の食肉業界団体が協定発効時に牛肉の関税を、先行して関税引き下げが進んでいる環太平洋連携協定(TPP11)と同率にするよう求めていることが分かった。オーストラリア産との関税格差が生じるため、その格差がないよう求める。豚肉でも関税削減を要望する他、日本の国境措置を改めて問題視した。業界団体の強い要望により、米国政府が日本への市場開放圧力を強める恐れがある。

 日米TAG交渉での重点要求の絞り込みに向け、米通商代表部(USTR)が11月下旬にかけて意見を公募した。

 米国産食肉の輸出団体である米国食肉輸出連合会(USMEF)は「日米貿易協定の発効時に、豚肉や牛肉の関税を競合国と同じにすることが重要だ」と明言。TPP11や、日本とEUとのEPAが近く発効することを警戒する。

 TPP11では、牛肉関税率が初年度に27・5%に下がることで合意。発効2年目となる来年4月1日に26・6%と一段下がることに、USMEFは危機感を強く持つ。仮に2019年度中にTAG交渉がTPPと同じ関税水準で合意し発効した場合、米国は現行38・5%の関税率から初年度は27・5%に引き下がる。ただオーストラリア産は2年度目の26・6%。この1年の差が最終年度まで埋まらず、米国は競合国との格差に焦りを募らせる。

 豚の生産者でつくる全米豚肉生産者協議会(NPPC)は、日本市場でカナダ産やスペイン産の出回りが近年増えていることに触れ、「日本で米国産豚肉のシェアが低下している」と問題視。「TPP11と日欧EPAの関税引き下げペースを合わせるべきだ」と訴えた。

 日本の国内対策や国境措置への言及もあった。NPPCは、生産費割れを補填(ほてん)する豚の経営安定対策事業(豚マルキン)の効果で、「日本国内で豚肉生産が増え、輸入機会が減る」と懸念する。

 食肉加工業者でつくる北米食肉協会(NAMI)は、輸入量が急増した際に関税率を引き上げる緊急輸入制限措置(セーフガード=SG)について「米国産牛肉の日本向け輸出の可能性を大きく制限している」と問題視。牛肉、豚肉ともにSG廃止を求めている。