今、サッカー界で物議を醸している話題の一つが、南米王者を決めるリベルタドーレス決勝の行方だ。

 今月11日にボカの本拠地ボンボネーラで行なわれた第1レグは2-2の引き分けに終わっていたものの、舞台をモヌメンタルに代えての雌雄を決する第2レグの直前にリーベルの一部サポーターがボカのチームバスを襲撃。これにより試合の開催は延期となっている。

 27日に南米サッカー連盟、そしてボカとリーベルの各会長らによる協議(実際にどのような話し合いが行なわれたかは不明)の結果、「12月の8日か9日にアルゼンチン国外で再開する」と発表されたものの、“被害者”であるボカが、「リーベルに制裁がないのはおかしい」と異を唱えているため、試合開催に向けた動きが、今後も二転三転する可能性がある。

 そうした混迷を極める“スーペルクラシコ”を見て、往年の名手がコメントを残した。かつてボカとリーベルの両軍に在籍し、アルゼンチン代表にまで上り詰めたGKウーゴ・ガッティだ。

 1960年代後半から80年代にかけて活躍したガッティは、エル・ロコ(クレイジーな奴)という愛称が示す通り、GKでありながら敵陣深くまでドリブルで持ち込んで、アシストやゴールを決める大胆さで人気を博した名守護神だ。とりわけ、通算381試合に出場したボカでの活躍ぶりは、「史上最高」の呼び声もあるほどで、今もシンボルとして崇められることが少なくない。

 そんなレジェンドは、アルゼンチンのサッカー番組『El chiringuito de Jugones』に出演し、今回のスーペルクラシコで起きた暴動が「おそらくはバーラの仕業だろう」と、マフィアとの繋がりもあると言われる暴力的なサポーター集団による犯行だと推測。さらに自身が現役時代に体験した恐怖体験を明かした。

「こないだの騒動の時、バーラは間違いなく待ち伏せしていたね。やったのはバーラだと思う。彼らはアルゼンチンのどんなクラブの監督も操っているからね。私は1962年にプロでプレーを始めたが、すでに凶悪な集団はいたよ。

 彼らは、普段は『食え』や『酒を呑め』って気さくに求めるだけだ。でも、その時にすでに始まっているんだよ。何なら悪かった時には選手たちのもとに直接話をしにくる。そして銃を取り出し、それをテーブルに置くと、『勝て』とだけ要求してくるんだ。私は『もし、勝てなければお前らの子どもを誘拐するぞ!』と脅されたことがあるよ」

 ガッティが活躍した時代と現在では、チームを取り巻くあらゆる警備体制に違いがあるため、一概に比較はできない。だが、そのバーラにまつわる話を聞く限り、今回の騒動は易しいものなのかもしれない……。