映画館でのネタバレ行為について先日、SNS上で話題になりました。近年、リピーターの支持を集める何度見ても楽しめる作品が増えていますが、上映中にネタバレになりうるリアクションをしたり、作品の展開について大声で話したりするなど、初見の人の楽しみを奪うような行動をする人も少なくないようです。

 これについて「本当に迷惑」「上映前に『犯人は○○だよ』って大声で話している人がいて最悪だった」「台無しだし許せない」「犯罪行為に匹敵する」など、さまざまな声が上がっています。

 ネタバレをめぐる法的問題について、芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

著作権法はアイデアを保護しない

Q.ネット上でもネタバレ記事などを多く見かけますが、そもそもネタバレ行為そのものが違法になるケースはありますか。

牧野さん「ネタバレの『ネタ』は、ストーリーの展開と結末であり、映画などの著作物のいわば『エッセンス』『要約版』と言えます。しかし、著作権法は、思想・感情の創作的な表現は保護しますが、ストーリーなどの『アイデア』は保護しません。よほどユニークなストーリーの展開と結末で、創作性が認められれば別ですが、通常はストーリーの展開と結末はアイデアと解されます。つまり、著作権侵害に当たる可能性は低いでしょう」

Q.映画館における、上映前もしくは上映中のネタバレ行為に法的問題はありますか。

牧野さん「前述の通り、上映前・上映中を問わず、映画のネタバレ行為は、著作権侵害にあたる可能性が一般に低いと思われますが、上映前の映画のネタバレ行為は『公表前の営業秘密を開示する』と解される可能性があります。例えば『ネタバレで観客動員数が減少した』など具体的な損害を証明することができれば、ネタバレ行為者は(不正競争防止法違反による)損害賠償責任を負う可能性があります」

Q.映画館で不可抗力のネタバレをされた場合、相手を何らかの罪に問うことはできますか。

牧野さん「ネタバレ行為によって『映画を始めから鑑賞して心を動かされ、結末で感動する』という、『時間をかけて映画を楽しむ機会』を失わせたのですから、理論的には不法行為に基づく精神的損害の賠償請求が可能です。しかし、おそらく損害額の上限額がせいぜい映画館の入場料にとどまるため、法的措置を取ることは費用倒れになり、現実的には難しいでしょう」

Q.ネタバレに関するトラブルについて、過去の事例・判例はありますか。

牧野さん「前述の通り、違法とされるケースはかなり限定されているため、裁判例はありませんが、違法にならないからといってネタバレ行為をやってよいものではありません。やはり映画や小説を後に楽しむ人のことを考え、節度を持って行動すべきと思います」