まさに、現在のチーム状況を象徴するような幕切れだった。

 2点のリードを奪いながらも突如失速し、相手の圧力をモロに受けると、ミスと偶発的な形からゴールを奪われ、同点に追いつかれてしまう。そして、アディショナルタイムにPKを献上して、万事休す。一度失った流れを取り戻すことができなかった。


アディショナルタイムでまさかの逆転負けを喫したサンフレッチェ広島

 11月3日、ジュビロ磐田の本拠地に乗り込んだサンフレッチェ広島は2点のリードを守り切れずに、屈辱的な逆転負けを喫した。

 これで広島は6戦未勝利で4連敗。この日、柏レイソルに快勝を収めた首位の川崎フロンターレとの差は7ポイントに拡大した。数字上では逆転優勝の可能性は残されてはいるものの、残り3試合でその差をひっくり返すのは、ほぼ不可能に近いだろう。事実上の終戦と言えた。

 今季の広島は、開幕から9戦負けなしで首位を独走。ワールドカップ中断前(第15節)までに2位のFC東京に勝ち点7差をつけていた。川崎には最大13ポイント差をつける時期もあった。中断明け後はやや勢いが衰えたものの、鹿島アントラーズに快勝を収めた第25節終了時点では、1試合消化の少ない2位の川崎に対し、まだ9ポイントのアドバンテージがあった。

 ところが突如、失速のときを迎える。第26節のサガン鳥栖戦に敗れると、続くFC東京戦こそ引き分けたものの、ガンバ大阪と柏に敗れ、ついに首位から陥落。清水エスパルスにも苦杯をなめ、3連敗で迎えたこの磐田戦でも勝つことはできなかった。

 完全に泥沼にハマっていた広島だが、磐田戦では好転の兆しは見えていた。まず、今季の広島のストロングポイントとなっていた守備に安定感があった。

 前線で起点となる川又堅碁に自由を与えず、球際の強さも備わっていた。3-4-2-1を敷く磐田のワイドな揺さぶりにややてこずったものの、最後の場面で身体を張り、決定的な場面までは持ち込ませない。前半の被シュートはわずか1本と、危なげない試合運びを見せていた。

 31分にはコーナーキックからティーラシンが先制ゴールをマーク。セットプレーからの得点も、今季の広島の強みであり、直近の5試合でわずか1点しか奪えていなかった攻撃面に、得意の形で勢いをもたらした。

 これで余裕が生まれた広島は、後半に入ると、磐田のサイドの背後を突いてチャンスを量産。右サイドを起点に巧みなパスワークで奪った59分の2点目は、よかったころの広島を想起させるものだった。

 ところが、65分にセットプレーから失点。ミスが絡んで献上したこの1点が、試合のターニングポイントとなった。

「あそこで堅さを見せなければいけなかった。なぜコーナーキックになったのかというところも含めて、隙を見せてはいけなかったし、もっとシンプルなプレーをするべき場面だった」

 城福浩監督が悔やんだように、ここで隙を見せたことで流れを失った。

 そもそも、今季の広島は攻撃だけでなく、セットプレーの守備にも強みがあった。第26節の鳥栖戦まで、PKを除いてセットプレーからの失点はひとつもなかったのだ。しかし、勝てなくなった時期はセットプレーからの失点が増加。この磐田戦でも、同じ過ちを繰り返した。

 それでも、まだリードを奪っていたのだから、落ち着いて試合を運べばよかった。だが、交代策やシステム変更を駆使し、勢いを加速させた磐田の攻勢の前に後手を踏んだ。

 顕著だったのは、運動量の低下だ。前半は局面の争いを鋭い出足で制していたものの、失点直後からは球際で競り負け、相手にボールを握られる時間が増加した。

 勝てなくなり始めた時期に、青山敏弘に話を聞くと、「走れるようになれば、また上がってくる。僕らはうまくないから、走らないとダメ」と話していた。たしかに今季の広島は、激しい守備でボールを回収し、早めに前に入れてパトリックの強さと速さを生かすシンプルな戦いで結果を出してきた。その戦いの軸となったのは、走力を含めたフィジカルの充実にあった。

 ところが、シーズン終盤にきて、そのベースが揺らぎ始めている。

 象徴的なのは、パトリックだろう。強靭なフィジカルを生かして前線で起点となるとともに、爆発的なスプリントでスペースを突く。献身的なプレスで守備のスイッチを入れる役割も担っていた。ところが、攻守両面でカギを握っていたパトリックにキレが失われ、得点源としての役割も果たせなくなっている。

 現状の戦いは個の力に依存する部分が大きいため、その選手が不振に陥るとチーム自体が機能しなくなる。とりわけ、その問題は流れを失ったときに顕著に露呈する。

「攻め込まれたことでラインが下がって、相手の勢いをモロに受けてしまった。取ったボールを運べないという問題もあった。運べる選手がいなかったので、取ったボールがつながらない」

 青山が言うように、つなぐ意識の少ない今のスタイルでは、ボールの落ち着かせどころがなく、跳ね返しても再度相手に奪われて、波状攻撃を浴びる状況に陥りやすい。勝利を収めた開幕のコンサドーレ札幌戦でもその問題は垣間見えていたが、その時はチーム作りの段階であり、今後の改善が見込めるものだった。

 ところが、シーズン終盤になっても、同様の課題を抱えたまま。結果を出すなかで看過されていたテーマが、ここへきて露呈した格好だ。

 この磐田戦では、今季かぎりで引退を表明した森粼和幸が81分からピッチに立った。コンディション不良で離脱していた広島一筋、37歳のベテランは、この試合が今季初出場だった。しかし、押し込まれた展開のなかで流れを変える役割は果たせず、「どこかでこっちのリズムに戻したかったけど、モロに圧力を受けて、自分自身もリズムを変えられなかった。何も力になれなかった」と、肩を落とした。

 しかし、長いボールを蹴ってピンチを回避しようとする他の選手とは異なり、森粼は奪ったボールをすぐさま味方に預けようと、シンプルなパス出しで流れを生み出そうと腐心していた。長く広島のサッカーを支えてきたチームの頭脳は、限られた時間のなかでメッセージを残したように思う。

 森粼の示した姿勢こそが、苦境に陥った今の広島に求められる。