寄付金の多い私立大学で1位になったのは慶應義塾。写真は三田キャンパス東門(写真:YNS / PIXTA)

私立大学の収入の柱は、学生が支払う入学金や授業料といった学費である。だが少子化が進む中、定員割れの状態になると、財政基盤が一気に揺らぐ。また大規模大学を中心に、入学定員の厳格化が文部科学省の政策として進められており、学生数の減少=減収要因となっている。国や自治体からの補助金なども得ているが、当然、それだけでは賄いきれない。


こうした中、各大学は、外部資金の獲得に注力している。外部資金とは、研究受託などの事業収入や、資産運用による収入などが挙げられるが、大きいのが「寄付金」だ。

質の高い教育を実現するために、卒業生や在学生の保護者、大学関係者、企業などから寄付金を募っている。では各大学の寄付金の額はどの程度になっているのか? それを把握するために作成したのが、「寄付金が多い私立大学ランキング」だ。

寄付金の実績は、大学のホームページなどで開示されていることが多いが、今回は横並びで比較ができる財務諸表から、その金額を調べた。財務諸表の中で、寄付金の金額は、事業活動収支計算書と資金収支計算書に記載されている。事業活動収支計算書の場合、「教育目的」の寄付金と「施設整備」のための寄付金にわかれ、施設整備の寄付金は特別収入の部に入るので、公開データだけでは金額を読み取れない大学も少なくない。

寄付金は大学にとって重要な収益源

そこで今回は資金収支計算書の「寄付金収入」をランキングに使った。

資金収支計算書は文字どおり、資金の収支を把握するもので、基本的にキャッシュの収支と考えてもらえればいい。つまり、主に現金で得られた、寄付金の額ということになる。一方で、書籍の寄贈や施設の提供など、「現物寄付」は算入されていない。事業活動収支計算書には現物寄付が算入されているため、大学によって金額には大きな差があることをあらかじめご承知いただきたい。

データは2016年度決算(2017年3月期)のものだ。参考までに、その前の期(2015年度決算)と、大学の規模を見るために、総資産の額を表示した。経年との比較、学校規模に対する寄付金の額の両面から、数字を見てもらいたい。なお、数字は学校法人単位の数字で、複数の大学や高校を傘下に収めている法人は、その分も含まれている。寄付金収入の金額が1億円以上の学校法人157法人を金額が多い順に並べた。

1位は慶應義塾で、金額は87.39億円だ。ここ数年80億円前後の寄付金が毎年集まっている状況である。すでに2017年度(2018年3月期)の決算も出ているが、63億円という数字となっている。

2位は創価大学で71.43億円。こちらは寄付金の多い学校法人として知られている。通常の年だと30億円前後の寄付金を集めているが、2016年度は創立45周年ということもあり、寄付金収入は70億円を超えた。

大学の場合、「創立○周年」というタイミングで、多額の寄付を集めるケースが多い。多くは「○周年記念事業」など、周年にあわせた施設建設などの事業を行い、大学の教育環境の充実を図っている。周年であれば、卒業者などの関係者からも寄付を集めやすい、というのもある。

周年記念で多額の寄付金を集めやすい

3位は豊田工業大学を運営するトヨタ学園だ。寄付金収入は58.81億円。トヨタ自動車が技術者や研究者の育成を目的に設立した大学で、ここ数年は30億〜50億円を寄付金として投じている。学生からの学費よりもむしろ、この寄付金が大きな収入の柱となっている。

4位は日本大学で41.63億円。ここ数年は40億円前後で推移している。2019年に大学130周年を迎え、記念事業募金も行っているが、アメフト部の”悪質タックル事件”の影響が寄付金の額にも出るかもしれない。

5位は上智大学を運営する上智学院。こちらは前期の10倍近い31.88億円が寄付金収入として計上されている。2016年4月にイエズス会系の4つの学校法人と合併した影響が大きい。現物寄付を計上する事業活動収支計算書では、寄付金の総額は約250億円にも達している。

6位は早稲田大学で30.95億円。ここ数年は30億円程度の寄付金収入を得ている。7位は立命館で26.44億円。通常より倍以上の金額になっているが、この年は平井嘉一郎記念図書館開館に対する寄付金があり、それが大きく寄与している。以下、8位天理大学(寄付金収入26.18億円)、9位国際医療福祉大学(同24億円)、10位東海大学(同21.49億円)と続く。

25位の福岡大学までが、10億円を超えており、規模の大きな大学や医学部を持つ大学が上位にランクインする傾向にある。