総務省ふるさと納税の返礼品を法律で規制する方針を示したことをめぐり、大阪府泉佐野市の八島弘之副市長は9月28日、東京都内で記者会見し、総務省の方針に異論を唱えた。「従わない自治体」として総務省から名指しされたことなどを受け、あえて東京で説明の場を設けた。八島副市長は「なぜ3割なのか明確な根拠がなく、何をもって地場産品とするのか曖昧だ。総務省が一方的な条件を押しつけている」と述べた。

●「総務省の方針が絶対正しいとは限らない」

この日の会見は、午後1時からJR東京駅近くのビル内で実施。接近する台風への対応を優先するとして、当初参加予定だった千代松大耕市長の代理で八島副市長が会見に臨んだ。八島副市長は「総務省に対し、ふるさと納税に関する議論の場を設けてもらうよう要請する。泉佐野市としても、困惑する他自治体と連携して、よりよいふるさと納税制度を模索していきたい」などと語った。

また、何らかの基準を作ることには賛成だが、「総務省が独断で決めるべきではなく、有識者などを交えて議論し、全国的に納得できるものにするべきだ。議論をすること自体はやぶさかではない」(八島副市長)とした。市長公室の阪上博則理事は「総務省の方針が絶対正しいとは限らない」とし、自治体側が自らの頭で考えていかないと自治体は衰退してしまうと指摘した。

●通知に従わない泉佐野市、全国トップ135億円集める

これまで総務省は、一部で過熱する返礼品競争に歯止めをかけようと、「返礼品の調達額を寄付額の3割以下にすること」や「返礼品を地場産品とすること」を全国の自治体に通知し求めていた。ただ、地方自治法に基づく「技術的な助言」で従う義務はなく、従うかどうかは自治体の判断に任されていた。

泉佐野市は、2017年度の寄付額実績で全国トップの135億円を集めた。総務省による通知を受けてもなお、鹿児島産のうなぎや信州の桃、高級ビールなど地場産品以外の返礼品もそろえ、人気を博した。

泉佐野市のような「大胆」な手法をとる自治体を問題視し、総務省は7月に初めて、泉佐野市を含む「通知に従わない12自治体」を名指しで公表。ネット上では「確かに趣旨に反していておかしい」と理解する反応もあったが、「総務省がお得な自治体リストを公表してくれた」「総務省の脅しに負けるな」などと、従わない自治体側を擁護するような声も出た。

●「正直者が馬鹿を見ないようにしてほしい」

野田聖子総務相は9月11日の閣議後会見で、「ふるさと納税というのはショッピングではない、寄付なんだということをもう一度わかっていただいて」と述べ、ふるさと納税制度を見直す方針を表明。通知に従って返礼品の見直しを行った自治体から、「正直者が馬鹿を見ないようにしてほしい」との声が寄せられていることも明かした。

総務省の方針では、過度な返礼品をそろえる自治体に寄付しても、税制上の優遇が受けられないようにするという。具体的には、地方税法改正案を2019年の通常国会に提出し、早ければ2019年4月からの適用を目指す見込みとなっている。

<総務省公表:通知に従わない12自治体、カッコ内は寄付額>茨城県境町(21億円)▽岐阜県関市(14億円)▽静岡県小山町(27億円)▽滋賀県近江八幡市(17億円)▽大阪府泉佐野市(135億円)▽福岡県宗像市(15億円)▽福岡県上毛町(12億円)▽佐賀県唐津市(43億円)▽佐賀県嬉野市(26億円)▽佐賀県基山町(10億円)▽佐賀県みやき町(72億円)▽大分県佐伯市(13億円)

(取材:弁護士ドットコムニュース記者 下山祐治)早稲田大卒。国家公務員1種試験合格(法律職)。2007年、農林水産省入省。2010年に朝日新聞社に移り、記者として経済部や富山総局、高松総局で勤務。2017年12月、弁護士ドットコム株式会社に入社。twitter : @Yuji_Shimoyama

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