二刀流の衝撃を米メディアが改めて振り返る「期待を上回る活躍」

 エンゼルス大谷翔平投手は、今季のア・リーグ新人王の有力候補に名前が挙がっている。右肘靭帯損傷が明らかになってからは打者に専念し、好成績をマークしているが、開幕から約2か月は投打の二刀流でメジャーを席巻。底知れぬポテンシャルで本場のファン、メディア、そして同じメジャーリーガーたちを驚かせた。

 そして、大谷の“成功”はメジャーを変えようとしている。米ヤフースポーツは「ショウヘイ・オオタニは球界の将来、そして将来がどうなるか示すかもしれない」とのタイトルで記事を掲載。今季の活躍を振り返りつつ、“二刀流復活”が予想される2020年からキャリアの最盛期を迎えると予想している。

 特集では、大失速で今季もプレーオフ進出を逃したエンゼルスについて「酷い失敗だと言いたくなるだろう。もちろん、あらゆることを考慮すると、それは正しいだろう」と指摘。その上で「しかし、オオタニは違った。スイング、直球、理解力、修正力、そして損傷した肘でさえ、彼は自分の試みが可能だと証明した。可能なのである。可能となるだろう」と伝えている。

 まずは「彼は世界一厳しいリーグの選手について再考した。徹底的に再考し、怠らなかった」と、メジャーへの適応に力を注いだ大谷の姿勢を評価。靭帯損傷についても「治すことできる」として、マイナス要素にはならないとしている。そして、「オオタニはエンゼルスの4番打者、新人王有力候補、好感の持てる人でありチームメート、20本塁打、防御率3.31の成績で今季を終え、23歳(最近24歳になった)の二刀流のビーストとして、ユニークなミッションの難しさを控えめに見せ、期待を上回る活躍をした」と絶賛している。

 6月に右肘靭帯損傷が明らかになった大谷は、約1か月の離脱後、打者として復帰した。投手としてのリハビリを並行して続け、9月には再びメジャーのマウンドへ。しかし、わずか1回の登板で新たな靭帯損傷が判明。医師からは、投手としての復帰に12〜14か月を要する靭帯再建手術(通称トミー・ジョン手術)を勧められているとエンゼルスが発表した。ただ、DHであれば6か月程度での復帰が可能で、手術を受けても来季は打者としてフル出場が可能と見られている。

 特集でも「右肘に新たな損傷が判明し、オオタニは春にフルタイムの打者、トミー・ジョン手術を受けた選手として戻ってくるだろう」と予想。そして、「通常の術後の経過とタイムテーブルでは、彼は2020年、25歳の時に二刀流として復帰し、最盛期が始まるだろう。その年はトラウトがアナハイムで過ごす最後の年になるかもしれないし、アルバート・プホルスの40歳のシーズンとなるだろう(10年契約の9年目)。そして、エンゼルスが10年にわたるスランプから抜け出そうと努力し続けているかもしれない」と続けている。

敵球団の強化責任者も大谷の“成功”を絶賛「彼はメジャーリーグにおける概念実証」

 大谷の今季の活躍は鮮烈だった。適応段階だったオープン戦では投打ともに苦しみながら、開幕後は投打で圧倒的なパフォーマンスを披露。投手としての能力は以前からメジャー関係者にも高く評価されていたが、打者での躍動は予想を上回るものだったようだ。記事では「彼の4月の打率は.341であった。4月の最初の週で出場した3試合連続で本塁打を放った。8月のクリーブランドでも本塁打を2回放った。肘靭帯の損傷が伝えられた日、数時間後のテキサス・レンジャーズ戦で2本塁打を含む4安打を放った」と今季の活躍を列挙。「投手・大谷」と「打者・大谷」は「全てにおいてとても良い」と結論づけている。

 さらに、「オオタニと彼のキャリアは他の人にも影響を与えた」と指摘。「彼が完全に復帰するまでに、オオタニには仲間ができているかもしれない」と、大谷の後に続く二刀流プレーヤーが誕生する可能性があると予想している。今季の“功績“はそれほど大きかったというのだ。マイナーにブレンダン・マッケイ、タナー・ドッドソンという二刀流プレーヤーを抱えるレイズのカイム・ブルーム強化担当責任者が「二刀流は新しい概念で、彼はメジャーリーグにおける概念実証なんだ。彼はとてもユニークだ」と話していることも紹介している。

 まさにメジャーを変えようとしている大谷。そのプレーに常識は通用しない。限界を設けず、他の誰よりも本人が自分自身を信じて、新たな道を突き進んでいるように見える。特集も「オオタニは最初から違った。彼は違うように見ていた。野球はいつもほぼ決まったようにプレーされる。彼は違う見方、彼のやり方で見ていた」との文章で締めくくられている。

 まだ手術をするかどうかの結論は出していないが、仮に手術することになれば、来季は打者としてどんな成績を残すのか。そして、2020年は二刀流でどんな衝撃を与えてくれるのか。それとも、また違う道を模索するのか。いずれにしても、この先も大谷の1つ1つのプレーに注目が集まることは確かだ。(Full-Count編集部)