いまから10年前の2008年9月、米投資銀行リーマン・ブラザースの破綻「リーマンショック」が起きた。株価は暴落し、世界経済に大きな影響を及ぼした。

NHK 総合の「おはよう日本」は、これを数日間特集。9月14日の放送では、リーマンショックが日本にもたらした爪痕、「不遇の40代」について取り上げた。(文:okei)

「小さくなったマインドはなかなか戻らない」縮み体質に陥る日本


VTRで、ある照明機器の大手メーカーが紹介された。リーマンショック後に給与カットや正社員100人のリストラ、統廃合などでしのぎ、現在なんとか業績を8割まで回復させているという。社長は、給料を上げたくてもなかなか上げられないジレンマがあると話す。

「社員の皆さんにはできるだけ給料を払いたいですよ。ですがやはり一度縮小したマインドは正直言ってまだ完全に戻っていない」

国内市場の縮小に加え、LED照明を安く作る新興国とのメーカーとの激しい競争にさらされ、業績は伸び悩んでいる。リーマンショックの打撃は並々ならぬもので、経営者のトラウマのようにもなっている。

企業が保有する現金や預金は、リーマンショック以降伸び続け、2017年度は過去最高のおよそ260兆円にのぼった(日本銀行発表)。リーマンショックから立ち直り切れない企業は、もしもの備えを手元におきたいというわけだ。取材した記者は、「日本の経営者が"縮み志向"になっていることが大きな問題」と指摘している。

リストラされ、「生まれた時代が悪かった」と嘆く男性

一方、働く側には一層過酷な状況がある。リーマンショックがきっかけで広告代理店をリストラされた40代の男性は、自身のブログに「生まれてきた時代が悪かったと言うしかない」と書いている。

「悔しいといえば悔しいですね。なんとか社会人になって芽が出てきたところで、それなりに頑張っていたけれども……」

と肩を落とす。転職した先の給与は23万円あまりで年収は390万円。結婚して子供が生まれたばかりの頃だった。その後塗料メーカーに転職し給料は5万円ほどアップしたが、"自分達は報われない世代だ"という思いが拭えない。

この10年、男性は度々転職を余儀なくされ、給料も上がらなかったという。思いを、こう語る。

「辛い時ももちろんありますし、もう少し時代が変わっていればと思うこともありますけど、受け入れるか飲み込むかして、何とかしていかないといけない……なんとか生きていくしかない」

これを見ていた視聴者からは共感の声が上がり、ネットでは「大学卒業するときには就職氷河期だったし、社会人として脂が乗ってきた頃にリーマンショックだし、踏んだり蹴ったり」といった嘆きも見られた。

ちなみに、40代前半の大卒男子正規雇用の年代別平均月収(日本総研まとめ)は、15年前が49万円、10年前で50万円、5年前はガクンと下がり46万円で、現在は43万円。10年20年先輩が40代前半のころにもらっていた給料よりも、大幅に落ち込んでいる。

企業は若年層の即戦力を求める…まさに踏んだり蹴ったり

大和総研・経済調査部のエコノミストは、「リーマンショックの傷跡からかなりの程度回復しているのは事実」としつつ、こう指摘する。

「企業の事業戦略として若年層の即戦力を求めるなかで、固定費が高いミドルシニア層に対して必ずしも目線が入っていない」

氷河期でリストラされ、景気回復の兆しにもお呼びでないとすれば、まさに踏んだり蹴ったりだ。「この世代は転職を余儀なくされて給与が上がらなかったり、企業が人材への投資を減らしたことで、専門性の高い経験を積む機会を失った人が多い」と記者は解説する。言うまでもないことだが、自己責任かそうでないかと言ったところで失われた数十年は戻らない。だがやはり「ツイてない」という感覚は、払拭できないものだろう。