小売り世界最大手の米ウォルマートが、傘下の国内スーパー大手、西友を売却する方針を固め、複数の企業に打診を始めたと2018年7月、伝えられた。成長が見込めない日本からは手を引き、急伸するインターネット通販への対応や人口増が続くアジア各国の事業展開を強化する狙いとみられている。ただ、売却先探しは予想以上に難航している模様だ。

ウォルマートは2002年に西友と資本・業務提携し、08年に完全子会社にした。ウォルマートは当時、米国内での圧倒的なシェアを背景に低価格での商品提供を実現、積極的なM&A(企業の合併・買収)で各国に進出していた。米国に次ぐ世界第2位の国内総生産(GDP)を誇っていた日本への進出も不可避と判断したとされ、「西友を足掛かりに日本国内でもM&Aを進め、シェアを広げる戦略だった」(流通業界関係者)とみられている。

老朽化している店舗が多い

しかし、西友に続くM&Aの候補だったとされるダイエーはイオンの傘下に入るなど、日本でのシェア拡大は思うように進まなかった。一方、ウォルマートの進出以前から日本では人口の伸びが鈍化し、高度経済成長期には右肩上がりだったスーパーの業績は全般的に低迷。ウォルマートは米国と同様、低価格戦略を押し進めたが、同業他社より絶対的に安いというほどの低価格化はできず、業績は伸び悩んでいたといわれている。

そこで、ついに日本での事業を見直し、ネット通販や新興国に経営資源を集中させようと判断したというわけだ。ただ、流通業界では「西友の売却先探しはかなり難しい」(小売業者)との見方が圧倒的だ。大きな理由の一つは、これまで改装に大きなコストをかけてこなかったこともあり、老朽化している店舗が多いこと。駅前の好立地にある店舗が少なくないのは確かだが、買収後には改装費などの多大な設備投資が避けられないとみられている。

「西友を売却するという決定はありません」と否定するが...

さらに、消費者がネット通販で多くの商品を購入するようになった現代では、リアルな店舗を構えること自体、大きなコストを背負うことになる。「人口が増えていた高度成長期ならいざ知らず、今、たくさんの店を抱えても何のメリットもない」(業界関係者)というのだ。「西友を買うという企業が出てきたら、その企業の株価は下がるだろう」と見るアナリストも少なくない。

結局、「条件のよい店舗を個別に買いたいという企業はあっても、全330店余りを一手に引き受けるような企業は出てこないのでは」と、業界に詳しい関係者は話す。

そうなると、ウォルマートは日本から手を引くに引けない状況になる。西友は今のまま変わらず営業を続けていく可能性も高い。ウォルマートは「西友を売却するという決定はありません。今後もこれまで同様に、日本でのビジネスを継続していきます」とのコメントを発表し、売却方針を否定しているが、「それは売却先探しの難しさの表れだ」と見る関係者もいる。