7月28日、広島市西区の「TSUTAYA 楠木店」の敷地内に「ピザの自動販売機」が登場しました。広島市の物流会社が企画運営しており、同社によるとピザの自販機設置は「日本初」。販売開始から購入希望者が行列をつくり、ピザの補充が追い付かないほどの好評ぶりです。現在は試験販売段階で1台のみですが、3年後の全国展開も視野に入れています。

 どのような経緯で自販機を設置したのか、取材しました。

ピザは本場イタリアで製造

 ピザの自販機を運営しているのは、物流会社のイーライン(広島市中区)です。中小企業を対象にした広島県の助成事業に「ピザの自動販売機」事業を応募し、2017年4月に採択。TSUTAYAを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が採択を知り、イーラインに声をかけて「TSUTAYA 楠木店」の敷地内に設置しました。

 物流会社と「ピザの自動販売機」という関連の薄そうな組み合わせが、なぜ生まれたのでしょうか。

 イーライン代表取締役の谷口佳陽(よしはる)さんは、きっかけについて「物流は『顧客が販売してくれたものを運ぶ』という受け身で利益を出す業種なので、能動的に収益を出す事業を始めたかったのです。何度もイタリアを訪問し、ピザの自動販売機を販売する会社のイタリア人社長と仲良くなり、日本でピザを販売する権利を取得しました」と話します。

 イタリア製の自販機2台を輸入して、対応する電圧を調整し、内蔵するシステムなどを日本仕様に改装。大きさは、街中にある証明写真の自動撮影機とほぼ同じです。冷凍したピザが入っており、電気で最高300度に温めて一気に焼き上げます。

 注文はタッチパネルで行い、約5分で焼き立てピザが完成。でき上がったピザは箱に入った状態(上部は開いた状態)で取り出し口に出てきます。ピザカッターやナプキンも無料で持ち帰れます。

 ピザは「マルゲリータ」と「4種チーズ」の2種類で、価格はそれぞれ980円、1280円(いずれも税込み)です。生地の発酵過程など本場の味にこだわり、ベネチアのピザメーカーに製造を委託。8割程度焼き上がった状態で冷凍したものを輸入し、注文が入ると自販機内で完成させる仕組みです。

 設置後の反響は大きく、ピザを購入したい人の行列ができるほど。自販機には、1回の補充で42枚ずつ計84枚を入れますが、好評で補充が追いつかないほどだそうです。

「TSUTAYA 楠木店」は1号機で、もう1台は広島市内の別の場所に設置予定。その後、ゼロから自販機を製作し、“純日本製ピザ自販機”を全国に広げるのが目標です。

 谷口さんは「3年で全国に100台を設置することが目標」と話しています。