ロシア・ワールドカップはいよいよ決勝戦と3位決定戦を残すのみとなったけど、ラウンド16で大会を去った日本では、早くも次期代表監督の人選に注目が集まっているね。
 
 何人かの候補者が紙面を賑わしているけど、その前にやるべきことがある。まずは、今回のロシア大会における日本の戦いぶりをどう評価するか。それが済んでいないのに、次の監督を決めるというのは、順番が違うと思うんだ。
 
 世界の舞台で明らかになった日本の強みと弱み。それを踏まえて、今後のビジョンが示されたうえで、さらなる強化に必要な人材は誰なのかという話になるのが普通だよね。
 
 でも、メディアは待ち切れないから、敗退が決まってそれほど時間が経っていないのに、西野の続投はどうなのかとか、クリンスマンにアプローチしているとか、煽るようなニュースを流している。
 
 しかも、取材対象者となったり、コメントが使われたりするのは、たいがいが田嶋会長だ。これにも違和感が拭えないよ。監督人事は、技術委員会の仕事のはず。そこをすっ飛ばして、トップに話を聞きに行くのはどうなのかな。
 
 メディアのこうした姿勢が、逆に技術委員会の価値を低くしてしまったり、協会の独裁的な体制作りを助長させているのではないかと不安になるんだ。そのくせ、何か問題があれば「組織が機能していない」と糾弾する。その機能していない組織を、ちゃんと取材して、正すように導くのも、メディアのひとつの役目だよ。

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 もっとも、関塚技術委員長をつついて、「代表監督は会長が決めること」と応じれば、記事の見出しは決まりだよ。『技術委員会は単なるお飾り』とかね。
 
 ただし、もしそれが現実であれば、組織として危機感を覚えないと。次の監督人事なんかよりも、よっぽど重要な問題だ。
 
 西野ジャパンの快進撃の余韻に浸るのはそろそろ終わりにして、未来に向けて動き出さなくてはいけない。悠長に構えていたら、大きな躓きを招くかもしれないよ。
 
 なによりも、まずは遅れている世代交代をどう進めていくか。そこで必要になってくるのは下からの突き上げだけど、メダル獲得が最重要課題とも言われる2020年の東京五輪に向けた強化策を、いかにA代表とリンクさせることができるか。
 
 これまではワールドカップを基準に考えて、4年のスパンでいろんなことが推し進められてきたと思うけど、今回はひとまず東京五輪までの2年間を重視したスケジュールを組んでもいいかもしれないね。
 
 例えば、その2年間だけはA代表を外国人監督に任せてみるのか、あるいはU-21代表を率いる森保監督に一任するのがベストなのか。いずれにせよ、世代交代には東京五輪世代との連係が不可欠。そこを分断してしまっては、理想的な融合は果たせないだろう。
 
 ただし、世代交代はそう簡単なことではない。長谷部や本田、長友、岡崎、川島らに頼りっぱなしで、リオ五輪世代の大島や遠藤、植田、中村らに貴重な経験を積ませられなかったロシア大会の”ツケ”は、どこかで支払わなければならないはずだよ。
 
 チームを若返らせて、なおかつ結果も出す。そのサイクルが上手く回り出すには、相応の時間がかかると思う。ある意味、4年単位ではなく、”8年単位”で考えたほうがいいかもしれない。それぐらいの覚悟が必要かもね。
 
 ワールドカップで優勝し、五輪で銀メダルを獲得したなでしこジャパンが、偉業達成に貢献したコアメンバーがいなくなった後、チームの再建にかなり苦労していたよね。それと同じことが、日本代表に起こっても不思議ではない。
 
 ワールドカップ関連の番組で、将来が期待されている何人かの若い選手がゲストで出ていたよね。でも、彼らがいるべき場所は、スタジオじゃない。本当ならロシアに行って、ピッチに立っていなければいけなかったんだ。
 
 それだけの”空白”が日本代表にはあることを理解しなければならない。こうした事態も加味して、今の日本代表の現在地を精査し、では、どういった道を進むべきか、その先導者となるべき適材はいるのか。正しい手順を踏み、正しい選択をしてくれることを願うよ。