昨夏にガンバ大阪からオランダのフローニンヘンに移籍した堂安律は、海外挑戦1年目からリーグ戦29試合に出場して9得点・4アシスト。異国の地でその存在を知らしめた。そんな次世代の日本代表入りが期待される20歳の若武者が、独自のサッカー観を語ってくれた。(インタビューは6月19日に実施)

――ワールドカップを観て、プレーの参考にしていますか?
 
「いや、サッカーを観る時は単純に楽しむだけで、『僕だったらこうするのに』とかプレーヤー目線で見ないんですよ。ゴールが決まったら『ワー!!』と騒いで、失点したら『ああ……』とガックリする。観客と同じように観ています。そのほうが良いので」
 
――それはなぜ?
 
「おとんやおかんとか素人の意見って、たまにすごく的を射ている時があるんです。僕もそういう視点を忘れないようにしたい。だから代表戦も、応援しながら観戦しています」
 
――ではその目線で、日本サッカーが強くなるためのポイントを教えてください。
 
「個々の成長。チームスポーツと言われるサッカーも、個人によるところが大きいというのが僕の見解です。日本には組織力がすでにあるから、それに個がついてくれば強豪国にも勝てるようになる」
 
――チームワークは日本らしさとも言われています。
 
「それがなかなか勝てない理由かもしれない。組織力にはどうしても限界があるんじゃないかなと。もちろん、まとまりがあることに越したことはないけれど、それだけではやっぱりネイマールとかは止められない。圧倒的な個は組織を簡単に打ち破ってきますからね」
 
――オランダに行って、そう考えるようになったのですか?
 
「いや昔から感じていました。サッカーって結局個の集合で、一人ひとりのスキルアップが不可欠だなと。日本人は元々協調性を持っていると知っているから、僕もそう思うのかもしれないですね」
 
――ワールドカップ前には、堂安選手をメンバーに推す声も挙がっていました。
 
「嬉しかったです。それが選出のきっかけになれば良かったんですが、最終的に外れていますからね。悔しさを押し殺して、今はもう前を向くしかないです」
 
――うまく気持ちを切り替えられていますか?
 
「すでに立ち直れていますよ。完全に切り替えて忘れてしまわないように、自分の中で何か腹立たしさを残しながらね」
 
――オランダでの話を聞いていても、あえて逆境を作るようにしているようですね。
 
「そう。いつも発奮材料を持っておくようにしています」
――今後の具体的なキャリアビジョンは?
 
「ふんわりとイメージを描いています。ただ先の計画を立てるのが苦手で、1年後や2年後よりも1か月後とか近くを見ています。今であれば新シーズン開幕までのプランを立てたり。今までそうやって進んできましたし。ビッグクラブに移籍する目標があっても、そこだけを見ず、着実にやることが重要かなと」
 
――2020年の東京五輪は意識せざるを得ないのでは?
 
「それは間違いないです。世界の選手が集まる大会だし、母国でやれますからね。特別な想いがあります。自分のためだけでなく、家族や親戚とかいつも応援してくれる人のために、そして日本のためにプレーしたいです」
 
――これまでも世代別代表に選ばれています。日の丸を背負う責任感は強くなっていますか?
 
「少しずつ、ですね。すごく強いかと言われれば、まだまだ自分が目立ちたいという気持ちもあるし、分からないです。ただ東京五輪という大会が使命感を植え付けてくれるんだろうな、と見込んでいます」