SMAP、のん(能年玲奈)、ローラなど、ここ数年、芸能プロダクションとタレントとの間で移籍や独立をめぐる問題が頻発していたが、そんななか、「週刊文春」(文藝春秋)2018年6月28日号に「奴隷契約書を入手」との記事が掲載され、また新たな契約問題が明らかになった。

 その「奴隷契約書」が結ばれていたのはNMB48のメンバー。「週刊文春」は、NMB48メンバーの所属事務所であったKYORAKU吉本.ホールディングス(当時。現在は吉本興業の子会社であるShowtitleに所属)との間で2010年に交わされたという契約書を掲載。記事では、その契約書の画像まで載っているのだが、そこにはこのように書かれていた。

 その「奴隷契約書」が結ばれていたのはNMB48のメンバー。「週刊文春」は、NMB48メンバーの所属事務所であったKYORAKU吉本.ホールディングス(当時。現在は吉本興業の子会社であるShowtitleに所属)との間で2010年に交わされたという契約書を掲載。記事では、その契約書の画像まで載っているのだが、そこにはこのように書かれていた。

〈本契約の終了した場合、その契約終了の原因の如何を問わず、乙は本契約終了日から起算して2年間は対外的な芸能活動を行ってはならず、また、芸能マネジメント会社その他の第三者との間で、乙の芸能活動のマネジメントまたは著作権・著作隣接権・肖像等利用などを目的とした契約を締結することができない〉

 つまり、事務所を離れてから2年間は、いかなるかたちでも芸能活動を行うことができないと契約書で明文化されていたのである。

 前述「週刊文春」記事でも紹介されていたが、昨年4月には、元NMB48の渡辺美優紀の出演するインターネット生放送番組が直前になって放送中止になる騒動もあった。渡辺は山本彩と人気を二分したNMB48の中心メンバーだったが、16年にNMB48を卒業してから本格的な芸能活動はほとんどできていない。

 NMB48を離れても、そのまま吉本系の事務所に所属し続けている限りそのようなことはなく、昨年の選抜総選挙での「結婚スピーチ」が大騒動となった須藤凜々花や、チームMのキャプテンを務めていた山田菜々などは、何の問題もなく芸能活動を継続できている。

 こういった活動の制限は、ファンの間で「二年縛り」と呼ばれ、公然の秘密となっていたものだが、ついにその存在が白日のもとに晒されたかたちだ。

 この契約書に対して「週刊文春」側からの取材を受けた吉本興業の広報担当者は、「今年三月に入った子たちの契約にはその条項がありませんし、相談があれば、それ以前のメンバーも二年縛りをなくしています」と回答していた。

 記事のなかでも指摘されているが、吉本興業側がこのように答え、「二年縛り」条項を外した背景には、今年2月に公正取引委員会の有識者会議が、タレントの事務所移籍を制限するのは独占禁止法違反にあたる可能性があると指摘した件があるだろう。

 公取委は昨年8月よりこの問題に関する調査を開始。有識者会議を行うなど検討を重ねていたが、公取委がこのような検討に入った背景には、もちろん、本稿冒頭で例示したような、ここ最近頻発している芸能プロとタレントとのトラブルがある。

 公取委は昨夏の調査開始に先立って、委員会内に設置されているCPRC(競争政策研究センター)で、『芸能人はなぜ干されるのか?』(鹿砦社)の著者である星野陽平氏を呼んで勉強会も行っており、そのレポート「独占禁止法をめぐる芸能界の諸問題」には、SMAP、安室奈美恵、江角マキコ、清水富美加をめぐる嫌がらせの事例が並んでいた。

「十年契約」という異例の長期契約に加え「二年縛り」で"奴隷契約"と報じられたローラも、昨年8月から所属事務所との間で独立をめぐってトラブルになっていたが、今年の4月に和解している。3月29日付のニュースサイト「SANSPO.COM」では、現在放送されているCMやファッション誌の仕事など事務所がとってきた案件はこれまで通り事務所を通し、ローラ自身がとってきた海外の仕事や香水のセルフプロデュースなどの仕事は事務所を通さないかたちで合意にいたったと報道されている。これも、公取委の指摘は無縁ではないだろう。

 公取委の動きは、芸能プロダクションと所属タレントとの間にある不均衡なパワーバランスを是正する確かな一助となっていたようだ。

 しかし、その一方で、別の問題も指摘されている。

 たとえ法的に認められなくなったところで、プロダクションやテレビ局などが「忖度」し合って事務所を抜けたタレントの仕事を干し上げるような状況が変わらなければ、結局のところ現状のままなのではないかという心配だ。

 報告書では、業界内においてネガティブな情報が出回り、その後の仕事に支障をきたす可能性について考慮するよう記されていたが、その点は今後も課題となる部分だろう。

 そのような懸念が出るのには理由がある。

 昨年7月に公取委が調査検討に入ったニュースを取り上げたメディアはNHKと朝日新聞だけで、他はほとんど取り上げていないのだ。とくに民放は、このニュースを一秒も報じていない。民放のワイドショースタッフが苦笑しながら語る。

「それはそうでしょう。テレビはこういう芸能プロの圧力、嫌がらせの共犯者のようなものなんですから。報道なんてできるはずがない。うちの番組では、最初から企画にもなっていません」

 こういった事情がある以上、先にあげたような懸念は払拭されているとは言い難い。たとえ、契約書に明記されたかたちで移籍制限のようなものが行われなくても、事務所の言い分に従わずに移籍したら業界から干されると認識させられていれば、事務所に不満があっても行動に出ることは難しい。

 確かな一歩は踏み出せたが、まだまだ課題は多そうだ。
(編集部)