クールビューティな悪女役といえばこの人、と定評のある菜々緒。腹黒い編集者からシリアルキラーまで、幅広い作品で悪女を演じきり、視聴者を震え上がらせてきた。4月14日からスタートした『Missデビル 人事の悪魔・椿眞子』(日本テレビ系)では、ゴールデン枠ドラマの初主演を果たしている。しかし役柄を離れると、過密スケジュールでの取材にも疲れた顔ひとつ見せず、温かい応対をしてくれる。そんな菜々緒に「仕事論」から「美のマイルール」、新社会人へのアドバイスまで聞いた。

撮影/浦田大作 取材・文/江尻亜由子

「悪女を演じているときが、一番イキイキしてますね」

その剛腕から「人事の悪魔」と呼ばれている椿 眞子が、社内恋愛のこじれ、職場の士気を下げる社員にいたるまで、どんな会社にでも起こりうる問題を解決していくというストーリー。眞子のデビルぶりを際立たせるため、工夫していることはありますか?
一目で悪魔っぽい感じを演出したいなと思っていて。悪魔といえば「黒と赤」のイメージがあるので、アイメイクは黒、リップは赤っぽいものを使ってメイクしています。あと、眞子はアメリカ帰りの設定なので、日本にはあまりいなさそうな女性を演出するため、誰よりもメイクは濃く…っていうことを心がけてますね。
そのメイクは、菜々緒さんの意見を伝えて?
そうですね。基本的にはまず自分から提案させていただいて、「もっとこうしてほしい」っていう要望があれば、そこに合わせる感じでやってます。役作りをしていく上で、見た目から入ることって、すごく大事だと思うんです。セリフがないときにも、眞子が出てきて「あ、この人が眞子なんだ」ってわかりやすくするために、キャラクターが強いほうがいいと思っていて。
たしかに、1話の登場シーンからインパクトがありました。
悪女を演じるにあたっては、ディズニーのヴィランズ(悪役)を参考にしています。ディズニーの映画って、やわらかーい、幸せな雰囲気から、悪役が出てくると「あ、コイツ悪役だ」って、すぐにわかるじゃないですか。そういう、わかりやすいダークヒーロー感を出そうと思ったので。
狙いどおりですね。
あとで明らかになってくるんですが、眞子にはある過去があって。もともとは弱い女性であることを隠すため、メイクやファッションは眞子にとって鎧のようなものなんです。威圧するくらい高いヒールをはいて、誰よりも身長が高くなって上から見下すような感じにしてみたりとか。ファッションも、日本にあまりいない、浮いている感じを出したくて、私物を使えるところは使ったりしています。
どんなアイテムが私物なんでしょう?
毎回、「あなたには、会社を辞める権利があります」っていう決めゼリフがあるんですけど、そこは重要なポイントなので、赤いヒールをはいていて。その赤いヒールは、オーダーメイドで作ってみました。
そうなんですか!?
靴職人の方に頼んで、木型から作って。ヒールは何センチにするとか、プラットフォームを作るとか、ポインテッドトゥにするとかを決めて、オーダーしました。
そうやって、菜々緒さん自身が悪女役の作り込みを楽しむ感じなんですね。
みんなと一緒より、逆の方向に向かうほうが、すごく楽しいですね。悪女役をやらせていただいてるときは、自分が一番イキイキしていると思います(笑)。最近、わりと躊躇なく悪女役をやる方が増えてきちゃったので、ちょっとビクビクしてるんですけど(笑)。「この座は渡さないぞ」っていうくらい。
悪女役といえば菜々緒、とご自身でも位置づけて。
はい。あと、この作品は私の代表作になる、と自負しているので。今までの悪女エッセンスを存分に注入したいと思ってます。自分が街中を歩いていて「椿さん?」とか「眞子さん!」って呼ばれるくらい、キャラクターが一般的に浸透していけばいいなと思いますね。

悪女役への挑戦は「顔と名前を覚えてもらえるいいチャンス」

悪女役を演じた最初の頃は、戸惑いもあったのでは?
まぁ、最初はやっぱり「えー、悪役やったら嫌われちゃうじゃん…」っていうのは、多少はあったんです。でも、自分がやりたいことをやるほうが断然楽しいし。逆に、視聴者としてドラマを見てたりすると、イヤな人って、すごく印象に残るじゃないですか。
たしかにそうですね。
それを逆手に取って、みなさんに顔と名前を覚えてもらえるいいチャンスだ、っていうふうに切り替えました。実際に悪女役をやらせていただいたら、また次の作品でも悪女役を、ってオファーをいただいたので。
好評だったことで、悪女役が続きましたよね。
私としては不思議なところでもあるんですが、悪女役が続いたあとに「別の菜々緒ちゃんも見たい」って言ってくださるテレビ局の方もいて、すっごくうれしかったんですね。だけど、『怪盗 山猫』(日本テレビ系)の出演が決まったときに「お待たせしました、今度はいい人の役です!」って言ったら、ファンのみなさんの中に「えぇー!」みたいな感じで残念がる人がけっこういて(笑)。私の中では「あれ!?」って思ったりもしたんですけど。
(笑)。まさかの反応が。
逆に、いい人の役をやったあとに「悪女をやります」って言うと、ファンの方に「待ってました!」と言っていただけた(笑)。それは不思議な感覚でもあり、うれしいことだなと。今では、どちらの役をやっても受け入れてもらえることが私の強みなのかな、とも思ってます。

思いやりにあふれていた座長・木村拓哉の背中を追いかけて

新入社員の斉藤博史を演じる、佐藤勝利(Sexy Zone)さんをはじめ、若い共演者の方が多いですが、現場はどんな雰囲気でしょう?
なんか、「みなさん若いな」って(笑)。自分自身がお姉さんみたいな立ち位置で接しているのが、とても新鮮というか。今までは、年上の先輩方に「よろしくお願いします!」って言ってる感じだったのが、今回は若い社員役の方と接する機会のほうが多いので。社員役のみなさんがキャッキャッしてると「初々しいなぁ」と思います。
ちょっと引いて見ている感じで(笑)。
そうそう(笑)。なんかこう、温度差みたいなものがありますね。私も年齢を重ねてきたんだなって。
共演者の方との距離を縮めたりなど、座長として何をしようかと考えたりも?
数多く座長さんの背中を見てきましたけど、自分がその立場になって改めて、みなさんスゴいなと実感しますね。それこそ佐藤勝利くんの先輩である亀梨(和也)さんとか、木村(拓哉)さんとか。本当に多才だし、気配りや思いやりが素晴らしいので。
この作品が決まったときは、ちょうど木村さんとドラマ『BG〜身辺警護人〜』(テレビ朝日系)でご一緒させていただいてたんです。こりゃマネできないなと思いつつも、いいところは見習わせていただいて。
見習った点は、たとえばどういうところでしょう?
なるべく控え室に戻らず、現場にいるようにしたりとか。もちろん撮影に追われて、ひとりで台本を読んでることも多かったりするんですけど。みなさんの声が聞こえるくらいのところには、必ずいるようにしたりしてますね。木村さんが、ほとんど控え室に戻ってなかったので、やっぱり現場の雰囲気を把握しておくほうがいいんだなって。
ドラマのように、菜々緒さんがもし一般のお仕事をしていたら、どんな職業についていたと思います?
えー!?(笑) 秘書とか、人に仕えるほうが向いているのかなと自分では思ってて。ひとつ、ふたつ先のことを考えるのが好きで、スケジュール管理だとか、人のフォローをするのが得意なほうだと思うんですよね。だから秘書的な仕事についたら、わりと活躍できるほうかなって思います。
お休みのときも、しっかりスケジュールを組んで動く感じですか?
もう、数分単位で動いたりします。メンテナンスのメニューをばーっと組んで、1日で済むようにしたり。段取りを組んだりするのはすごく好きなんです。
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