自殺者の総数が減少傾向のなかで平成最多の中高生自殺者

去年1年間に自殺した中高生の数が、前年度より38人増の346人にのぼり、平成に入って最多となったことが厚生労働省のまとめでわかりました。自殺者の総数がここ8年間連続して減少していることを考えると注目すべき数字です。

その理由として学校関係の問題が挙げられていますが、確かに現在の学校は勉強だけでなくいじめや不登校の問題などさまざまな問題が山積みです。そのため先生方も校内で色々な研修や対策を講じていますし、厚労省も若者の自殺を防ごうと、「自殺対策強化月間」やSNSを使って悩みの相談に応じる取り組みなど様々な対策をとっていますが、残念ながら結果にはむすびついていません。


「死にたい」で踏みとどまる人と行動に移す人の3つの違い

こういう状況を見ると、組織的な対策だけでなく自殺へと向かう個人の心理への決め細かい対応も必要であると思われます。H28年度の国民意識調査によると国民の実に2割以上が「(真剣に)自殺について考えたことがある」と回答しています。

しかしもちろん回答した2割の人のほとんどの人は実際に自殺していません。では「死にたい」と思いながらも踏みとどまる人と実際に行動に移す人の違いはどこにあるのでしょうか?ある研究報告によると、人が自殺行動を起こすにはいくつかの条件があると言われます。

その条件は
1)自殺に対するハードルの低さ
2)「自分の居場所がない」「誰も分かってくれない」という所属感の減弱
3)「私の存在が周りに迷惑をかけている」「生きていて申し訳ない」という周囲への負担感

の3点だということです。


自殺を考えている中高生に対する私たちの関わり方

それを踏まえた上で自殺を考えている相手に私たちはどう関わればよいでしょうか。

例えば「自殺に対するハードル」は自傷行為の有無や暴力の被害体験、SNSなどで希死念慮の頻繁な書き込みを繰り返すことで低くなりがちです。一見すると冗談に聞こえる「死にたい」という言葉を軽くとらえるのではなく、周囲の人がアンテナを敏感にしておくことが必要でしょう。

また「自分の居場所がない」という孤立感や「だれも分かってくれない」という孤独感は自分の存在価値の喪失感にもつながります。

「人は、人によりて人となる」という言葉がありますが、何気ない言葉かけや個人的な話を傾聴してくれる相手の存在がその人の孤立感を和らげるのです。

さらに「周囲への負担感」についても「あなたと話ができてよかった」「あなたの気持ちを聞くことができてうれしかった」という周囲の感謝と連帯の声かけによって少しずつ和らいでいくのではないでしょうか。


目の前の一人を死なせないことが自殺を防ぐためのカギになる

最後に「死にたい」という言葉は文字通りの意味とは別に「『死にたい』ぐらい、つらい。この気持ちを分かってほしい」という意味があることも忘れてはならないでしょう。

ただ思春期の真っただ中にいる中・高生が「この気持ちを聞いてほしい」と素直に言うことは難しいかもしれません。だとすると周囲の人々が「あなたのことが気になっている。もしよければ話を聞かせてくれればうれしい」と、おずおずと、しかし勇気を出してあきらめずにつながりを求めることが大切になります。

そしてまず「目の前の一人」を救うことが、この346人という数字を下げる一番の近道なのかもしれません。だとするとそのカギは私たち自身にあるのです。


【岸井 謙児:臨床心理士・スクールカウンセラー】


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