石原夏織が持つ空気感は可憐で華やか。取材中に見せるキュートな笑顔に、心がスーッと軽くなり、こちらも自然と笑顔になってしまう。明るく前向きな印象を受ける石原だが、3月21日に控えるアーティストデビューには、当初不安な気持ちも抱えていたという。しかし、これは彼女にとって成長のための第一歩。相手の気持ちにそっと寄り添って背中を押してくれる石原のデビューシングル『Blooming Flower』はファンだけでなく、彼女自身も勇気づけているのだ。

撮影/川野結李歌 取材・文/渡邉千智 制作/iD inc.

声優業界でも、“ポンコツさ”が知れ渡っている?

デビューシングルの発売おめでとうございます。アーティストデビューのお話を受けたときのお気持ちはいかがでしたか? ブログには、「驚きました」と書かれていましたが…。
ゆいかおりとしてふたりのユニットでやってきて、歌とダンスはもともと好きなので、いずれ何かしらできたらいいなと思っていたんです。そんな中で縁あってデビューさせていただくことになりまして、まさかこんなにも早く形になるなんてびっくりしました。
これまではふたりで分担できたことも多いと思いますが、ひとりでの活動に不安や寂しさを覚えることはありませんでしたか?
心配はありました。私は、自分では完璧だと思っているんですけど(笑)、普段の生活では抜けている部分が多くて…。ツッコんでくれたり、「それは違うよ」って教えてくれたりする人が近くにいないと、ひとりだと収拾がつかなくなっちゃわないかな!?と。
そういう部分の心配なんですね(笑)。
私だけだと、ボケだけでツッコミが不在。…いや、私もボケているつもりはないんですけど!(笑) そういう部分があるので「ひとりで大丈夫かな?」という心配もありました。でも、「そこがいいところなんじゃない?」と周りのみなさんが言ってくれるので、「恥じるところではなく個性なんだ!」と今は前向きに捉えています。
失礼かもしれませんが、石原さんは天然エピソードをたくさんお持ちな印象があります。
天然と言うより「ポンコツ」なんです(笑)。こういった取材でも、聞かれた質問に対して意味のわからない返しをしていることがあるんです。
そうなんですか?(笑)
はい(笑)。最近(※取材が行われたのは1月下旬)のポンコツエピソードは…新しいコートを買って、まだ3回くらいしか着ていないときに、お味噌汁を全身にビシャーっとこぼしちゃったこと。そういう凡ミスみたいなものが多くて。同じ声優業界でも私のポンコツさが知れ渡ってしまっていて、はじめてお会いする方に「はじめまして」と挨拶をすると「あれ? ポンコツの…?」って言われることがあるんです。
声優業界でも知れ渡っているんですね(笑)。
けっこうみんな知っているので驚きます。もう、誰が言いふらしているんでしょうね?(笑)
業界の方だけでなく、ファンの方もご承知のことだとか…。
そうなんです。生放送の番組で資料を読むときに間違えたり…というより、長めのカタカナの言葉だと、頭の認識が追いつかなくて、雰囲気で「こんな感じだろう」と読んじゃうので、よく間違えるんです。コメントとかで「何それ?」、「今日もポンコツだね」ってファンの方に言われることも多いです(笑)。

デビューに際しての不安な気持ちを思い浮かべて歌った

ここからは3月21日に発売されるデビューシングル『Blooming Flower』について詳しくうかがっていきます。イントロから疾走感のあるピアノの音が印象的で、すごくさわやかな楽曲だなと思いました。
ありがとうございます! 3月の春に向けたタイミングでの発売なので、すごく春らしさのある楽曲だなと思いました。「春」と言ったら新生活をはじめる方や、環境が変わって新たな一歩を踏み出す方が多いと思うので、そういう方の背中を押す楽曲になったらいいなと思っていました。
石原さんからスタッフさんへ、何か要望をお伝えになったことはありましたか?
1枚目ということで私からというよりは、スタッフのみなさんが一生懸命考えてくださいました。いろいろと候補の楽曲があるなかで、スタッフのみなさんが思う私のイメージに近い楽曲を選んでいただいて、それが『Blooming Flower』だったんです。
選んでいた際は、まだ歌詞はついていないですよね。『Blooming Flower』のメロディーが石原さんの雰囲気にぴったりだとスタッフの方々は思われた、と。
はい、そういうところを汲んで選んでくださったと思います。自分的には「私ってこんなイメージに見えるんだな」って新鮮でしたね。
新鮮?
自分的には、もっと切ない感じなのかなと思っていたんです(笑)。何で?と言われると、言葉で説明するのが難しいんですけど…私は切なかったり儚いイメージが合うのかなと勝手に思っていたので、さわやかな楽曲をいただけてとてもうれしかったです!
レコーディングではどんな部分を意識されましたか?
「大丈夫、何も怖がらないで。一歩進んだら素敵な未来が見えるよ」という思いが込められた楽曲なので、そういう気持ちを大切にしました。今回デビューする私の気持ちと似ているところがあるなと感じたんです。
デビューシングルという点で、石原さんも不安があったと…。
「期待の中に少しの不安」みたいな気持ちが私のなかにもあったので、その気持ちを乗せて歌いました。自分の経験を思い返して歌ったほうが説得力が出るし、何か悩みを抱えているファンの方がいれば、その方の気持ちにより近づくことができるんじゃないかなと思いました。
ご自分の気持ちを乗せて歌ってみて、いかがでしたか?
思いを出し切れたと思います。何回か歌わせてもらっていくうちに、どんどんクリアになってくるというか、楽曲のイメージが鮮明になっていって。自分のなかでも腑に落ちた感じでした。
レコーディング中に「こう歌って」と指示を受けることはありましたか?
2番のAメロで、少し音が静かになるんです。その部分は、個人的に歌うというより語りかけるようなイメージに近いのかなと考えていて。レコーディングのときも一度語るように歌ってみたのですが、そこは「普通に歌ってください」と言われたので、普通に歌い直しました。ニュアンスが違うときはちゃんと修正してくださる、そういう部分はすごく面白かったです。
歌っていて好きなフレーズや気持ちいいなと思ったところは?
いっぱいあるんですけど…まずはサビ前の「もっと自信が欲しい」というところ。こんなにストレートに言っちゃうんだと印象的だったのですが、逆にこれくらい直接的なほうが伝わるんだなって。あとはサビの「きっと咲き誇るんだって」というフレーズ。花の“咲き誇る”に加えて、新しい一歩を踏み出して上昇していく“咲き誇る”のふたつの意味が込められているなと感じて、とても好きな部分です。

花をモチーフにした、手の振り付けの習得に苦戦

MVのお話も…と思いましたが、撮影日が大雪に見舞われたので、別日に繰り越しになったと聞きました。これから撮影が控えているんですよね。
そうなんですよ! デビューシングルで雪の日って…もう一生忘れられないと思います(笑)。撮影の3日前くらいから大寒波で大雪が降るというのを聞いていて、外の撮影だけど大丈夫かな?と思っていたんです。マネージャーさんにも「MVは本当に撮れるんでしょうか?」としつこいくらい聞いていて。それから前日まで連絡がなくて、前日の夕方になって「別日になりました」と連絡が来たので「やっぱり!」と。
みなさんギリギリまで調整されていたけれど、やっぱり雪のなかでは厳しいという判断になった、と。
そうみたいです。これからMV撮影があるので、その日は雪が降らないことを祈ります!
もし、また雪が降ったら……。
“雨女”ならぬ、“雪女”になっちゃいますね(笑)。
(笑)。MVの仕上がりを楽しみにしています。ちなみにMV内でもダンスを披露されるとか。
はい。今までは歌って踊るダンサブルなイメージが強かったと思いますが、今回は落ち着いた感じの振りになっています。体全体を使うというより、手元だけで表現するような。手でお花のモチーフを作ったり、歌詞に沿った振りで表現したりしていますよ。
手元の振りだとファンの方もマネしやすそうですね。
(手で花を作る振りを見せて)…うん、できると思います! みなさんにも練習してほしいです!
石原さんはダンスの振りを覚えるのはお得意ですか?
普段は得意なほうなんですが、今回の振りは苦戦しました。私は全身の振りのかたちを見て覚えるのが得意で、今回みたいな手元だけというのは逆に難しいなって。速いリズムだと目立つ音に合わせて覚えていくんですけど、今回はリズムもゆっくり取る振りなので、「覚えられないんじゃないか」と心配になりました。
今はもうバッチリですか?
振り入れ以外のときに練習することがあまりなかったのですが、さすがにマズいと思ってダンスの先生にお願いしてレッスンしていただいたので、今は大丈夫です!
カップリング曲の『Untitled Puzzle』についても、どんな曲か教えてください。
メロディーを聴いて、『Blooming Flower』よりもダンスが映えそうな曲だと思いました。リズム的にも踊りやすそうですし、ファンのみなさんとうまくかけ合える楽曲なのかなという印象です。
歌詞をご覧になった印象はいかがですか?
表題曲は、悩みながらも頑張っていこうという感じが強い…少しか弱さもあるような前向きな曲ですけど、こっちは決心して突き進む、違う前向きさを持っている感じがしました。
では、改めてデビューシングルを楽しみにしているファンのみなさんにメッセージをお願いします。
たくさんの方に共感していただける曲になっています。目標に向かうなかで悩んだり不安に思ったりする気持ちに寄り添えたらいいなと思うので、悩んでいるときやちょっと疲れてしまったとき、自分のターニングポイントだと思うときに聴いていただいて、みなさんの力になれたらうれしいです。
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