2017年は、やや大げさに言うと日本のカレーに革命が起こった年だと個人的に思います。外食で挙げられるのは大阪スパイスカレーの重鎮「旧ヤム邸」の東京進出による、都内のスパイスカレーの文明開化。そして内食では、レトルトカレーの購入額が初めてカレールーを上回った(レトルト461億円に対しルーが456億円)ということです。それもあってかわかりませんが、今冬はメーカーの新作が百花繚乱。今回はそのなかから注目の2ブランドを紹介します。

 

 

家カレーの王者がついにレトルトでスパイスカレーを発売!

ひとつめは冒頭で触れたスパイスカレーにまつわる新商品。なんと、カレーメーカーのトップランナーであるハウスが、スパイスカレーのレトルトを2月12日に発売したのです。同社によると、スパイスカレーとは「スパイスの豊かな香り立ち、ホールスパイスによる食感、仕上げに振りかけられるスパイスの彩りを特徴としながら、ブイヨンやだしをベースにした馴染みのある味わいのカレー」とのこと。

↑その名も「スパイスフルカレー」。キーマ(左)とチキン(右)の2タイプが用意されています。参考価格は税別300円

 

大きな特徴は、別添えでスパイスミックスの小パックが付いているところ。また、ソース自体にも風味の異なるスパイスをふんだんに使っていることがパッケージ裏面からわかります。

 

↑食材や調理工程をうたう商品が多いなか、これだけ明確に使用スパイスを表記するのも珍しいといえるでしょう

 

↑別添えのスパイスミックスを皿に取り分けてみました。クミン、パセリ、黒ゴマ、オニオンフレーク、レッドペパーなどがブレンドされています

 

そして実食。盛り付けてみると、明らかにこれまでのレトルトとは違います。まずはテクスチャーがサラっとしていて、インドのカレーでたとえるなら北よりも南系。そして、ホール状のスパイスがソースのなかに残っています。

 

↑ソース内の黒い粒の正体は、マスタードシード。表面に浮いているのは前記のスパイスミックスです

 

あふれ出る香りもふくよかで、欧風タイプのレトルトにはないフレッシュで鮮烈なフレーバーを感じます。そして食べてみると、その特徴はよりはっきりと。辛さのなかに香ばしさや爽やかさの織り交じった、複雑味のあるテイストがフワっと広がる感じです。

 

↑「チキンカレー」。炒め玉ねぎとブイヨンのコクがベースで、クミン、コリアンダー、クローブ、シナモンが香り立ります

 

↑「キーマカレー」。じんわり広がるジンジャー、カルダモンの香りと、挽き肉のうまみが重なり合う味わいです

 

辛さはハウス社基準でキーマが3、チキンが4。刺激は強すぎないので、辛さに敏感な人でなければペロリと食べられるレベルでしょう。なお今回はあえてシンプルな盛り付けにしましたが、サイトのニュースリリースには「彩りの良い野菜を添える」、「あいがけにする」、「ターメリックライスを作る」、「お皿の色を工夫する」といったアレンジ法が載っています。スパイスカレーの魅力はフォトジェニックさでもあるので、ひと手間加えてみるのもいいでしょう。

 

 

JRは東北6県のご当地肉のおいしさをレトルトカレーに凝縮

ふたつめは、JR東日本グループが同社沿線地域の活性化を図ることを目的としている「地域再発見プロジェクト」の一環で生まれたレトルトカレー。素材の背景にあるストーリーまで消費者に発信することで、地域の魅力を感じ、現地に観光に来てほしいという想いから個性的な商品が誕生しました。

 

↑今回試したのは、全6商品があるうちの3つ。東北各6県(青森、秋田、岩手、山形、宮城、福島)の地産肉を使ったカレーのなかから、青森、山形、宮城をチェックしました

 

2月6日から同グループの高級スーパー「紀ノ国屋」全店(べーカリー店舗を除く)で販売されており、価格はどれでもひとつ680円。さすがにプレミアムなプライスですが、青森なら「シャモロック」、宮城なら「仙台黒毛和牛」と、その土地ならではの豪華なブランド食材を使っています。

 

↑裏面には食材のストーリーや生産者のコメント、顔写真などが載っています

 

パッケージが鮮やかかつ、お洒落なデザインになっているのも特徴。でも味の方はどうなっているのでしょうか。ということで、実際に食べてみました。

 

↑「青森のシャモロックカレー」。青森シャモロックは同県産にんにくパウダー配合の飼料で育てられ、弾力のある肉質は歯切れよく、噛むほどにうまみが広がります

 

ムネ肉というのが個人的には惜しいという印象。たとえばこのムネ肉をミンチにして、青森県のりんご果肉を前面に出したキーマカレーという提案も面白いのではないかと思いました。でも全体的には鶏の豊かなうまみを感じられるパワフルな味わいでおいしいです。

 

↑「山形の庄内豚カレー」。米どころとして名高い庄内地方で、米を加えたエサを食べて育ったのが庄内豚。脂身はあっさりかつ上品で、ほのかに甘みを感じられるのが特徴です

 

肉は角煮のようなやわらかさで、ソースともあいまったとろけるテクスチャーが美味。十分においしいですが、これも隠し味に山形のさくらんぼを使っていると、より個性が出るのではと思いました。

 

↑「宮城の仙台黒毛和牛カレー」。大自然のなかでストレスなく約30カ月かけて大切に育てられた仙台牛。そのなかでもきめ細かい霜ふりのバラ肉を使用しています

 

肉の持つ贅沢でジューシーなうまみが、ソースにしっかりと凝縮。そのぶん脂が多めでカロリーもこの3つのなかでは一番高いですが、高級店のカレーにも負けないリッチなおいしさです。

 

この「東北6県レトルトカレー」シリーズはほかに「岩手の短角牛カレー」、「秋田の八幡平ポークカレー」、「福島の会津地鶏カレー」がラインナップされていて、牛、豚、鶏の食べ比べも可能。紀ノ国屋の公式オンラインストアでは6商品のセットが3月30日注文分まで送料無料で購入できるので、気になる人は試してみてはいかがでしょう!